なんでお前なんだよ。
試験会場に着いた俺たちは結果発表の時を待っていた。
周りには疲れ果てた姿の者もいるし、中には余裕を持て余す人物もいた。
周囲に目をやるとどうやら成績上位者(ランキング入り)が誰かを予想しあっていた。
「どうせ上位入りするのは、アカデミーで最強の実力をもつ、"星銃"あいつらだけはずば抜けて強いからなぁ。」
「でも、その中でも今年は誰がTOPになるんだろうな」
「やっぱりあれじゃないか?"操法の高手"の名をもつ"バイバルス"彼の指揮したチームは完全連携によって素晴らしいチームワークを誇ると言われているからな。」
「おいおい、忘れちゃいけないのが他にもいるだろ?闇魔術師最強と言われる、"ヤカテ"!
ヤカテ様は最高だぞ!」
「おいおい、だったら"ハーフェイ"様の方が最高だろ!なんてったって、あの素晴らしい知恵、魔法に対する理解、全て総合的に見て彼女に勝てるのはいないだろ!」
「まてまて、俺の最推しの───」
みなが、推しなどなんだか語り合い、興奮が収まっていなかった。
なんだなんだ。
彼らの熱量に少し引きつつも、アカデミーにいる星銃という存在に興味を持つ。
「はいは〜い、みんなお疲れ様〜
みんなよく試験を頑張ってくれたわ〜。それじゃー上位入賞者の発表に移るわね〜」
みなが"待っていた"と言わんばかりの顔をして、結果を待ちに待ち望んでる。
「上位入賞者の口頭での発表は、TOP5だけにするわね〜他の入賞者の確認はウィンドウに出るランキングで見てね〜。」
「それじゃー第5位は…
・ルーム・バイバルス
・リエラ・ヘラ
のチームよ〜2人は惑星級までクリアされました〜
続いて4位は、
・イシス・イナ
・アイス・カフカ
2人は準恒星級までクリアしてくれたよ〜
そして同率第三位!
・サイアス・ヤカテ
・シュルーム・フェル
と
・イシス・ハーウェイ
・バルバス・ヴァイト
この4人は恒星クリア!までは行かなかったけど、恒星級の終盤まで行かれました!」
上位者の名前が一通り出されたあと、突然周りがガヤガヤし始めた。
「おい、一体1位はだれなんだ!?」
「ハーウェイ様やヤカテ様が2位だとしたら、一体1位はだれなんだ!?」
みながその"1位"という存在に興奮を隠しきれていなかった。
「それじゃー第1位は──」
みなが息をゴクリと飲む中、俺とルナだけは冷静だった。
「・ミハド・アラクス
・セレスタ・ルナ
なんと!この2人は歴代最高の巨星級まで行ってくれました〜!しかも!ちゃんとクリアしましたよ〜
本当によくやったわね〜」
1位の名が出された瞬間会場が困惑と驚愕によって満たされた。
「おい!まさかあの星銃の中でも実力がまだはっきりされていない、セレスタ・ルナが1位だと!?
そんな実力を隠し持っていたのか!?」
「それにしても、ミハド・アラクスって、いつも成績不振で落ちこぼれと言われてたあいつだろ?
良いなぁー、星銃のおこぼれもらえて」
「俺も星銃の奴とチームだったら絶対おこぼれもらえたのに!なんであいつなんだよ!
チクショウ!」
まぁ、予想してた通りだったな。
ルナが実力がある方だとは思っていたが、まさか星銃とやらに入るまでだったのか。
それにしても、俺への評価はみんな酷いな。
そりゃそうか、傍から見れば俺はただのおこぼれを貰った"運が良かった奴"にしか見えないからな。
「───なんで、なんでこうなるんですか!」
そう大きな声で言ってきたのはルナだった。
「アラクス君はこれでいいんですか!
貴方の功績が私の手柄のようになってしまい、それに加え貴方は実力を評価して貰えないんですよ!」
ルナは納得のいかなさそうな言い方をし、少し怒っているような感じもした。
『まぁ落ち着けよ。別にいいじゃないか、俺だって、最初から認めてもらえると思ってなかったし、
ましてや、人間っては"手柄"や"評価される事"が大切ってわけじゃないだろ?』
「だったら何が大切なのですか!?」
『"選択"だ』
「っ──────」
『人間は、生まれる場所や家系を選ぶことは出来ない。でも、そこからどうやって生きるか、どういう風になるかは自分の選択次第で決まる。
今回のだって、俺が評価されないのは俺が評価されるようなことをしなかった、あるいは評価されていたがその評価が低すぎた、その根本にあるのが自分の言動。自分が選択した意思によるものだ。
つまりだな、今回実力を認められなかったとしても、
評価をされなかったとしても、次はそれらを覆すように自分が数ある選択肢の中から最善の行動を選択するだけだ。まだまだ、変えられる。先にある無数の選択肢からな。』
アラクスは毅然とした態度で言う。
ルナは興奮がおさまったかのように少し深呼吸をして口を開く。
「たしかに、アラクス君の言う通りですね。
私が少々疎かでした。
ですが、だとしても、アラクス君がボスを倒してくれたのにそれが私が倒したのように勘違いされるのは嫌です。なので、そこをなんとか誤解を解くのはダメでしょうか?」
『お前はしっかりとしてるな。
でも、そんな事をする必要はない、そんな事をしなくてもすぐに俺が誤解を解くし、みんなの評価も覆してやるからな。』
「本当に言ってますか?
そんな事を言うのならちゃんと有言実行してくださいね!」
先程少し興奮気味だったルナの顔には笑顔が現れていた。