模擬ダンジョン攻略、そして聖唱。
…ポータルの中に入った俺ちは広々とした草原にでた。
すると目の前にウィンドウから文字が出てきた。
“オークの草原─階級隕石─”そこにはそう書いてあった。
俺が生きてた時にはこのようなものはなかったぞ?
『なぁルナ、このウィンドウのようなものはなんだ?』
分からないことはとりあえずルナに聞いてみよう。
「これは歴盤と呼ばれる機能ですね。
これを使って、ダンジョンネームと、その等級の確認。自分の所得スキルの確認や、星との簡易的な会話、その他色々なことができる便利な機能です。
たしか神と悪魔が共同で少しでも人間界に干渉するために作った機能ときいています。」
ルナは全部喋ってくれた。
((こんな便利な機能を作るなんてアイツらもやるなぁ!))
そう思っていると背後かる気配が近ずいてきた。
『ルナ、なにか来るぞ。』
そうルナに警告する。
すると草原から小さなオークが複数飛び出してきた。
右手には鉄製の斧を持っており、その小さい体で斧を振り回している。
「これはオークですね。アラクスさん、少ししがって下さい。」
ルナはそう言い、俺は素直にルナと距離をとった。
「─聖唱─ガイア・ファング」
彼女がそう唱えると、草原の草達が自我を持ったかのように一斉にオークに襲いかかる。
草なのにも関わらずその威力はオークの身体をも貫通する威力だった。
「これで恐らく隕石級はクリアですね。」
そう彼女がいうと、周りのオーク達は無数の屍となって地面に伏せていた。
この女、相当やるな!
そう興奮していると、新たなウィンドウがでてきた。
──隕石級、オークの草原クリア。このまま次の階級のダンジョンへ行きますか?──
──はい──いいえ──
選択肢は、はいかいいえ、勿論俺は"はい”を押した。
すると身体が粒子のように消え、気がつけば暗い廊下のような所へ来ていた。
──彗星級──墓守の乙──
さっきまでいた草原とは異なり、ここは暗い。
『─エルヒーム─』すると俺の手から光が出る。
「あら、光を出してくれたのですか。ありがとうごさいます。」
ルナは律儀にもお礼をしてくれた。
『そんなこと言うなよ、さっきは俺じゃなくてルナが全部倒したじゃないか。』
自分は何もしていない、そういいたかった。
「ふふ、ありがとうございます。」
なんとお礼かは分からないが、彼女は微笑んで言った
するとウィンドウが現れた。
──ダンジョンボス──墓守の審判───
すると地面が揺れ始め、地割れの中から、天秤を持ったアンデットが現れた。
目を包帯で隠し、ローブを着ている。明らかにさっきとはレベルが違う魔物が現れた。
「アラクス君!下がって!」
彼女はそう言うと姿勢を低くし、戦う体制に入った。
「アンデット系なら私と相性抜群ですね!
─固有聖唱─ハーベスト《浄化する大地》─」
彼女の身体から聖なる光が現れ、アンデットの身体を抱きしめるかのように包み込む。
アンデットは浄化されるように骨が粒子へとなっている消えてゆく。
──彗星級──墓守の乙クリア──
──次の階級へ挑戦しますか?──
──はい──いいえ──
彼女が"はい" を押す前に声をかける。
『ルナが使ってる聖唱と固有聖唱ってなんなんだ?』
「そうですね。“聖唱“とは簡単に言えば魔法のようなもの、練習したりすれば誰でも習得できる物ですね。
“固有聖唱“はその人にしか使えない聖唱、いわばオリジナルの魔法のようなものですね。
代々受け継がれる物もあれば、恵まれし才能で授かる場合もあります。後、契約している星の力も固有聖唱に入ります。
私はたまたま恵まれていたので、得ただけなんですけどね。」
謙虚そうにルナは言う。
『恵まれていただけって、それを使いこなすのにも時間がかかるし、これ程の力を出せるようになったのはルナの努力のおかげだろ?』
「た…確かにそうですけど─」
ルナは恥ずかしそうにモジモジとしていた。
「さ!気を取り直して、次の階級へいきましょう!」
話を切り替えるようにルナは言う。
するとルナは“はい”と押したい。
ルナのおかげで小惑星、惑星級をクリアすることが出来た。だが、惑星級の魔物となると学生の相手だとかなり手強く、ルナ一人で魔物を倒していることもあって、相当疲労しているようだった。
『大丈夫か?この辺でやめておいた方がいいんじゃないか?』
普段はあまり気を使わない性格だが、ルナの頑張りすぎには少し心配があった。
「大丈夫よこれぐらい、次へ行くわよ───」
彼女の口調は敬語からタメ語へと変わっていた。
”はい”を押し次の階級へ行く。
──準恒星級──風走る雷姫──
場所は今までとは違って小さい山のような突起が連なる場所にきた。
『なんか見慣れない場所だな』
「確かに、こういう場所がダンジョンにあるなんてあまり耳にしないで───」
“やばい”ルナと俺は直感でそう思った。
今までの魔物と比べ物にならない気配。
俺は周囲を警戒し、当たりを見渡す。
すると、山のような突起が連なる場所からなにかが出てくるのを感じた。
ゆっくり近ずいて来る。
ようやく姿を現した気配の正体を見ると、
虎のような姿、だが白と黒が混じる毛、金色の瞳、瞳がこちらを見る姿はまるで天地を睥睨する覇王のような威厳さ。
俺は感じた。
──ルナがこいつと戦えば確実にルナは死ぬ──と
そう思っていると虎は目の前から姿を消し、ルナの背後に立った。
虎は手を払い、一瞬にして、ルナは山の突起の方まで飛ばされてしまった。
「うぐっ───」
ルナは胸元に手を苦しそうに当てていた。
虎は瞬時にまたルナの元へ移動し、鋭い爪を振りかざしルナにトドメをさそうとした。
『──讃歌──サンクチュアリ《聖域》──』
ルナの目の前に輝かしいシールドが展開される。
そのシールドは虎の鋭い爪でも傷つくことがない硬さ
((これでルナは大丈夫か))
ルナの安全を確保し、虎と対面することにする。
『お前、準恒星級じゃないよな?』
そう言うと虎は嘲笑うかのようにニヤッと笑った。
するとウィンドウが表情された。
──階級הַכּוֹחַ הַחָרוּג──冥虎───