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Project3

予鈴が鳴った後、高遠は夏樹の手を取り、夏樹を教室へ送り届けてから「じゃ、放課後ね」と声をかけた後、自分の教室へ戻って行った。


高遠と夏樹のいわゆるツーショットに夏樹のクラスは騒然としたが、すぐに本鈴が鳴った。


昨日同様席に着いていた由紀が驚いた顔で夏樹を見つめた。夏樹は自分がどんな顔を由紀にしたか分からなかった。


5時限目が始まった。まるで昨日の由紀のように授業が全く夏樹の耳に入ってこない。


今日は6時限目まである。5時限目終了後の10分休みにはクラスの女子から質問攻めに合いそうだ。どうしよう。由紀とは話がしたいが、10分では足りない気もする。


由紀には後でメールを送ることにして、次の休み時間はトイレへ行くふりをしながらどこか安全な場所へ逃げた方が無難かもしれないと考えた。

ふと、兄・春翔はるとが休み時間に一人になりたいときに行ったという場所を思い出した。


よし、あそこへ行こう。たとえ行って戻るだけになっても質問攻めにあうよりはマシだと思った。



普段はバス通学だが、今日は帰りに予備校に行くので、放課後は駅に出ると、教室戻るときに高遠は話してきた。一方の夏樹の自宅は高校から徒歩圏内で、自転車を使う日もあるが今日は歩いてきている。それを知った高遠が「駅まで一緒に帰ろう」誘ってきた。


なんとかして正直に事情を説明したいと思った夏樹はその誘いを受けていた。


高遠ときちんと話しをする前にクラスメートの質問に答えてしまうのはまずいと夏樹は考えているのだ。


このクラスには熱烈な高遠のファンもいる。高遠を追いかけて予備校に入ったと話していたのを急に今思い出し背中からへんな汗が出てきた。



キーン、コーン、カーン、コーン


5時限目が終了した。夏樹は慌てて席を立った。


「夏樹。」と由紀が声をかけて来たが、両手を合わせるようにして「あとで」と声をかけ、夏樹は教室を走って出た。


夏樹の教室のある校舎裏の隅に大きな樫の木があって、その後ろ側のフェンスは少し低くなっている。そのフェンスを越え、生い茂った草の坂を少し下がったところで一息ついた。


樫の木と草影と坂でフェンス越しに姿を確認することが難しいのである。



夏樹の頭からは由紀の消えた手紙のことも、手元にある手紙のことも消えていた。


ただ高遠に事実を話した後、高遠の顔からあの眩しい笑みが消えるのではないかと思うと、真実を告げることにむしょうに抵抗を感じていた。

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