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Project2

 高遠 祐 様



突然手紙ですみません。


お話ししたいことがあります。


昼休みに4階視聴覚教室前で待っています。





                 杉下 夏樹




*********



翌日昼休み。夏樹は4階にある視聴覚教室の前にいた。




昨日由紀と一緒に手紙を書いた後すぐに高遠の下駄箱に手紙を置いた。そして次は本命の由紀の手紙と思っていたら、夏樹が由紀から離れて高遠の下駄箱に行っていたその一瞬に、最悪にも堀田が現れた。


「ゆっきちゃぁん。最近会えないからさぁ。僕さみしくてぇ」


聞こえるのは声だけだが、夏樹が鳥肌になった。


由紀の返事はなかった。由紀が見えるところまで戻ると

「堀田先輩すみません。もう帰るので通して下さい。」堀田を見ないようにうつむいて言った。


せっかく自分の手で投函すると意を決したところだったのに、なんで自分には障害が多いのだという苦悶しているようだった。

由紀が自分の下駄箱へ向かったが分かったので、夏樹も急いで由紀の元へ行った。夏樹と堀田はお互いに相手が見えていない態度だった。


「あっ、ゆっきちゃん。もしよかったらどっか寄ってかない?アイスクリームが美味しいっていうお店教えてもらったんだよ。」


懲りない男だと夏樹は冷たい視線を送った後、「由紀大変。急がないと間に合わないよ。」とわざとハッとしたようなそぶりを見せて、由紀を急かした。夏樹の意図を理解した由紀は「やだぁ。夏樹も早く靴履いて、とにかく先に行くね。」と、いかにも非常時まずい事態が起きているかのように声を出して走り出した。夏樹もその後を追った。堀田がその後どんな表情でどうしたかは二人は知らないし、興味もなかった。



由紀の手紙は今、由紀の手元にある。


ならば夏樹の手紙も回収したいと思い。朝いつも以上に早く登校し、高遠の下駄箱へ行ったが、届く必要ない手紙の方が届いてしまったようで、手紙はそこには残っていなかった。


どんだけ早く登校してるんだ?それとも遅くまで残っているのか?


夕べ冬寧に高遠をのことを問い合わせてみたが


「たかとおゆう???亜紀あき(←冬寧の友人)あたりが誰か知ってるかな?」といった具合で由紀の言ってた「もてる」以外の情報が全く手に入らなかった。


周りにあまり興味を示さない夏樹、小さいころから兄や姉から知恵や知識、情報を授かっているからこそ、自分から探ってみようという気が起きなかったのである。


どんな人物像かもわからない相手を呼び出している自分の状況に、今夏樹は僅かにパニック状態であった。


視聴覚室は廊下の突き当たりにあって教室自体が広めの作りなので階段もすぐそばだった。教室前で待っていると階段を上がってくる気配があった。


来たっ。


夏樹の鼓動がなぜか早まった。


手紙が取り戻せなかった時点で、夏樹は由紀の名前は出さないでも全てを正直に話そうと考えていた。


「もてる」なら女の子への接し方や人当たりはいいのだろう。1回くらい手違いなことがあってもかえって面白がってくれるのではと、自分の都合のいいように考えた。


告白しても夏樹は断られるだろうけど、由紀がそばにいないし、正直な方がいいと自分に言い聞かせていた。


階段を上がってきた人物が夏樹の目の前に立った。やわらかそうな薄茶の髪をしたTVか雑誌、いや雑誌も海外ブランドなんかが載っている方の「モデルやってます。」とでも言ってそうな背の高いそして異性への興味が薄い夏樹でも「超かっこいい!」と思う男の人が現れた。


自分とは住んでる世界が違う。両手でスカート握りしめ夏樹はそう断定した。


「夏樹ちゃん、こんにちは。お昼食べられた?」


魅惑的な微笑みで夏樹に声をかけて来た。

その笑顔にあてられた夏樹の心臓はとびはね顔を真っ赤にして頷いた。


ふっと我に返った夏樹は「君が杉下さん?」といった確認がなかったことに気がついた。冬寧が知らなくても高遠は冬寧を知っていて、手紙をみて「その妹からだ」とか思ったのか?


いやいや、そんなことは今はどうでもいい。


まずは呼び出したことの謝罪と事情の説明と更に改めて謝罪だ。首を軽く振って夏樹は高遠を見た。


「あのっ、下駄箱に入れた手紙・・・」なんですが、と続けようとしたが、手紙をブレザーの内ポケットから取り出した高遠の楽しげな声が重なった。


「この手紙って、ラブレターってことだよね?うん、いいよ。OKだよ。」


「へっ?」



断る高遠。事情を知って怒る高遠。面白がる高遠。・・・・


顔が分からなかったが、様々な反応の高遠を想像していた夏樹。


今目の前にいる高遠はそのどれでもなかった。


言葉を失い目を丸くしている夏樹の唇に一瞬温かくやわらかいものが触れた。


「これからよろしくね♪」


夏樹のファーストキスを奪った高遠は、二人の鼻の頭がつくかつかないかのギリギリの距離で、登場から崩れることのない眩しい笑顔したまま夏樹に囁いた。

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