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2話 奴隷

 目が醒めた。いやずっと起きていたのだっけ。

 この檻に閉じ込められてから、どれだけの時間が経ったのかな。24時間、それともまだ数分?

 

 今のエサはいつ出されたのだっけ、それすら記憶から抜け落ちてる。時計も太陽も認識できない、ずっと暗い空間。もうここ以外の景色を思い出せない。

 向かいの檻で、ずっと叫んでいたドラゴンらしき生き物も、気付いたら丸まって黙りこくってる。

 

 疲れたし、諦めたんだろう。ドラゴンにとってそれは正しい判断だと思う。

 いつの間にか唾液も出なくなった。食欲ないお陰で汚いエサ皿の中身は食べずに済んでる。

 

 なんだか意識が遠くなってきたような。眠くなるっていうより、命がヤスリで削られて消えちゃうような感じ。こんなの味わったことない。

 餓死するのかな。うすぼんやりと、そんなフレーズが頭に浮かぶ。

 

 別にいいや。不思議と生きることに執着は無かった。

 普通なら逃げる算段とか必死に考えるものなんだろうけど。

 

 逃げ出したって、そこからどうする。ここはきっと見知らぬ土地。右も左もわからず野垂れ死にするだけに決まってる。

 だったら最初から諦めてる方が利口だと思う。

 

 不意にガチャガチャって物音がした。

 エサの時間かな、あれ?

 

 様子が違うっぽい。どうしてか外に出るよう促されてる。

 解放、じゃないだろうな。きっと出荷するんだろう。私やドラゴンを含めた全員を。

 

 

 

 あの鞭男が何を言ってるのかは解からない。

 多分早く歩けとか急かしているのだろう。鞭で打たれてヒリヒリと痛む背中を我慢しながら、言う通りにする。

 

 今から行われるのは奴隷オークション。

 前を歩いてる、同じ猫型獣人のナルシュ君に教えてもらった。

 

 

 

 ナルシュ 猫型獣人

 14歳  ♂

 HP  60

 MP   5

 力   73

 体力  68

 器用  90

 敏捷  78

 魔力  16

 魔防  14

 

 スキル

【格闘LV6】【集中LV3】【冷水耐性LV7】【毒耐性LV2】【狩猟LV1】【感覚LV7】


 ユニークスキル

【猫の本能】


 魔法関連のパラメータは低い一方で、HPや力は私より上。ナルシュ君の方がより獣人っぽいステータスしてるかな。

 一方でスキルはそこそこ充実してる。冷水耐性のスキルがかなり伸びているのはきっと、私よりもずっと前から閉じ込められていたからだろうか。

 

 彼の話す言葉は日本語じゃなかったけど、不思議と言ってることはわかった。

 アスタルト帝国とミステクタ共和国。かつて2国は同盟を結んでいた。

 

 それがどういう訳か、いつの間にか戦争を始めていたそう。詳しい経緯はナルシュ君も知らないよう。

 数十年続いた戦争は両国にとても深い傷跡を残した。

 

 とうぜん戦勝国であるアスタルト帝国にも甚大な被害があって。

 多くの兵士が死んで、沢山の農地が焼け野原になってしまった。そのせいで戦争には勝ったけど、治安はとても悪くなってしまった。

 

 失われた兵士の替わりに、他国から傭兵とかを招き入れたけれど。傭兵だってタダでは働いてくれない。

 だから賃金のために税金を上げなければならなかった。

 

 負けたミステクタ共和国は痩せた土地であり、また長年にわたる戦争のせいで財宝などは残っていなかったそう。

 傭兵にばかりお金を払う訳にもいかない。復興などやらなければいけないことは沢山ある。

 

 食糧は足りないし住む場所にも困ってるし、平民の多くは仕事を失ってしまった。国民の不満は溜まっていく一方。いつ反乱が起こってもおかしくない状況だ。

 で、状況を危惧したアスタルト帝国の貴族達はとんでもない政策を始めた。

 

 敗戦国の民を奴隷にしてしまおう。いや国民だけではなく、ミステクタ領域に生息する動物や鳥や魚や植物、あらゆるものを乱獲し絶滅させて構わない。

 ミステクタは全て我らのものだ。アスタルトの民よ、報酬が欲しければ早い者勝ちだ、ミステクタから勝手に奪ってこい。

 

 そういう政策を始めたのだそう。

 狂ってる! ナルシュ君はそう吐き捨ててた。怒りと涙を滲ませながら。

 

 ミステクタの辺境でひっそり住んでいた獣人も例外ではなく。

 帝国の兵士達に捕まり、ここへ連れてこられたそう。

 

 男奴隷は鉱山や戦場で働かされ、女奴隷は性のはけ口として処理される。

 そうして私達はこれから、死ぬまで酷使され、死んだら生ごみと一緒に捨てられるのだそう。

 

 そうやってアスタルト国民の不満を逸らすのが目的らしい。

 周囲には、私と同じように鎖で繋がれてる人がいっぱいいる。人間だけでなく私のような獣人も。

 

 他にも爬虫類みたいに全身がウロコで覆われている人。鳥のように羽の生えた人。あるいは純粋な動物が檻で暴れていて。

 そんな有象無象の群れの中に、ちっぽけな私はいた。全てを他人事みたいに考えながら。

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