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14話 私はこんな楽天的な

「それが魔力。もっと感じて」


更に密着。コレ以上は唇が触れちゃいそうな距離になっちゃう。


「ハイ・パワード」


リリファさんの吐息が私の口内に、見えない甘い色が喉を伝わり、身体中に不思議な液体が満ちていった。

あれ、身体が軽い。まるで液体が筋肉の手伝いをしてくれてるよう。


「それが力を上昇させる魔法。本来は唇から魔力を注ぐものなのだけど、初めてのキスは御主人様に残したいものね」


……えっちな魔法って説明されたほうがしっくりくるんだけど。


「そうね。じゃあ次は性的な能力について学ぶ奴隷の基礎知識を」


それはまた後日に回して頂けるとありがたいんだけど……。

それよりさ、リリファさんは強いと聞いたんだけど。一体どれくらい強いの?


「非常に強いわよ」


全く否定しないのがリリファさんらしいというか。

とにかく私はお兄様に役立ちたい。奴隷としてじゃなく、戦い方のコツとかテクニックを教えて欲しい。


「私には出来ないわ。私の戦闘スタイルは特殊だから参考にしない方がいいわ」


ハッキリ言われるとショック以外の何物でもないな。そんなぁ私には才能ないのかな。

そういえば耐性スキルとかは手に入れてたけど、魔法とかは一切取得していない。

異世界転生なのに俺TUEEE出来ないなんて残念、バトル系好きなのに。


「何を考えてるの」


変な事考えてるのバレたかな。1人で妄想空間に突っ走っちゃう癖が治らないみたい。

リリファさん溜息してる、美少女はどんな動作も様になるなあ。


「貴女の思考は重大な間違いを犯してる。世の中ギフトに恵まれた人ばかりじゃないわ」


そっと髪をかき上げリリファさんはよく解からないコトを言った。

ギフトって何、才能のコト? そりゃあ才能ある人なんて一握りだろうけど。


「自覚がないのね、まあいいわ……。世界中の何処を見渡しても目に映るのは凡人ばかり。コツ、テクニックは凡人が習熟する為にある。貴女が学ぶべき内容はそれじゃない」


意外と沢山喋ってくれた。

うーんでもイマイチよく解からない。結局私はどうやったらお兄様みたいに強くなれるのかな。


「獣人の戦い方は知らない。でもそれは貴女の御主人様が調べてくれるわ。それより貴女が学ぶべきは自身のスペック。それから乱戦や1VS多数、格上狩りについて学びなさい」


それって不利な状況でどう勝つかってコトなの?


「そうね。まあ世の中には、千の兵士にだって勝つ人もいるけど」


 文字通り一騎当千なの。そんな化物がいるんだ、さすがファンタジー世界。

 

「貴女の御主人様のことよ」


 お兄様がモンスター相手に無双。

 ……ちょっと想像つかない。記憶のお兄様はとても優しくて喧嘩とか知らない人だから。

 

「まあ奴隷としての手ほどきなら幾らでも教えてあげるわ。まず貴女、御主人様の性癖は知ってるかしら」


 そっちは遠慮させてもらってもいいかな。


「貴女の御主人様も言ってたけど、この街の治安は決してよくないわ」


 やっぱりミステクタとの戦争でそうなったのか。

 リリファさんは教え方がとっても上手。もしかしたら離れた弟や妹がいたのかもしれない。

 

 木陰のベンチで休憩しながら、リリファさんに色々と教えてもらってる。

 私はこの世界のことをちっとも知らない、慣れるのとかに必死だったから。

 やっぱり現代人たるもの情報をしっかり仕入れるのは非常に大事だろう。


「2国の衝突は人々に疲労をもたらした。……まあ直接の原因は他にあるけれど」


 他の原因って一体?

 

「それは私達。私達のチームランキスがもたらした」


 お兄様達がもたらした?

 それってお兄様やランキスさん、リリファさんが悪いコトしちゃったの?

 

「貴族は色々と文句を言ってたわね。高すぎとか、相場はこうだとか。依頼を完遂してから彼らは言い出すの」


 悪徳業者か、日本にもいたな。テレビの特集とかで見たことある。

 権力に物を言わせ下請に負担を強いる大企業みたいな構図。治安悪いらしいし、日本より泣き寝入りする人多そう。

 

「御主人様達は契約を履行しただけ。受けとったのも事前に取り決めた金額のみ。イヤなら依頼しなければいい」


 ちょっとリリファさんは怒り気味だ。そういえばお兄様も傭兵してると言ってた。てことはお兄様も戦ってたんだ。

 軽い口調で傭兵だなんて言ってたけど、まさか戦争に参加してただなんて。

 

 けどもう大丈夫だよね。だって戦争はもう終わったらしいし脅かすものは何もない。

 絶対に大丈夫?

 私はこんな楽天的な考え方をしてたっけ。

 

 日本にいた頃、家という自分だけの空間に引き篭っていた頃の私ってなんだったっけ。

 あの頃の私と今は隔絶してる。転生する前と後では姿形がまるで別々になってしまって。

 

 毛むくじゃらに変貌してしまった身体に触れてみる。すると本当の私は今も自宅のリビングでゲームに勤しんでるんじゃないか、そんな妄想が浮かんできてしまう。

 考えるのは止めにしよう。たとえそうだとしても今の私にはどうすることも出来ないし。

 

【感覚スキルがLVUPしました!】


 え? なんで突然スキルがLVUPしたの? 慌てる私をリリファさんは背後に庇ってくれる。

 

「アリス。鬱陶しいのに囲まれてる」


 辺りを見回す。建物の向こうからボロ切れを纏った、不健康で不潔そうな3人の男が現れた。

 

「へっへっへっ」

「金持ってんだろ。よこせよ」


 鞘から抜いたナイフは結構錆びてるけど、斬られたら大怪我じゃ済まないだろう。

 

「失せろゴミ。私達は奴隷。身体の全てはご主人様のものだから」


 リリファさんは今まで聞いたことのない、怒気をにじませた声で3人の男を威圧した。

 向こうは少し驚いている様子だ。外見だけなら私達は年端もいかない少女2人組。ここまで脅されたら大人しくなるのが普通。

 だけど逆に、売られたケンカは全力で買ってやると言わんばかりにリリファさんは男達を睨みつけた。

 

「逆らっていいのか?」

「誰のお陰で安全に暮らせてると思ってんだ!」


 傭兵? どう見ても人拐いとか強盗の類いっぽいけど。

 3人ともどちらかといえば取り締まわれる側っぽい。少年漫画とかでヒャッハーと叫びながら粛清されてくザコキャラみたいな。鑑定してみよっと。

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