第一話◆:青白くて半透明、ついでに宙に浮いてます。
第一話
目が覚めたら真っ暗な場所で、フラフラ歩いていると窓から落ちた。どうやら、夜のようで大きな満月が暗闇に浮かんでいる。そして、次の瞬間にはまっさかさま……
あ、あぶないっ!!きっと、誰かが見ていたらそう思っていただろう……そして、その本人である俺も迫る地面に対して目を瞑っていた……
「あれ?」
一向に来るべき衝撃が来なくて……目を開けてみると確かに、目の前まで地面が迫っていたが、一向にそれ以上地面に俺の顔面が迫ることはなかった。
「あれ?」
不思議に思って身体を起こしてみると……俺の足が地面から二十センチほど浮かんでいる状態であった……あれ?俺ってマジシャンだったかな?
「………」
一向に思い出せないのでどうしたものだろうか?そんなに物忘れが激しいほうだったか?
どんなにうなっても、考えてもまったく持って俺の求めている答えが出てこない……というより、俺って誰だっけ?
「……何とか……零時だったな、うん」
苗字は思い出せないがとりあえず、零時だ。日にちが変わった瞬間に産声を上げたから零時だって誰かが言っていた。
しかし、何故、俺の身体は青白く、半透明なのだろうか?人間というものはそんなものじゃないだろう?確かに、太陽に手をかざして見ればちょっとは透けるかもしれない……スケルトンカラーって子どもにはやりそうだよなぁ……
どうでもいいことを考えていてもしょうがないのでそこらをフラフラ歩くことにする。ここが何処だったのかようやく気がついた。
ここはあれだね、そう、学生さんたちが朝起きたら向かわなきゃいけない場所だ。
うん、学校。
何故、ここに俺が居るのかさっぱりわからないが、とりあえず誰かにあって反応してくれれば俺が誰だかわかってくれるだろう。堕ちてしまった窓からもう一度入り込む。どうやら二階から落ちてしまったようだ。
「だ、誰か居るのか?」
「ん?ちょうどよかった……すいませ~ん」
曲がり角から懐中電灯の光が漏れてきており、その先に誰かがいるのは確定だろう。相手も声が聞こえたようで徐々に身体が見えてきて警備員の方だということがわかった。
しかし……相手は俺を見て、懐中電灯を落とし、その顔は震えていた。
「で、でた~………」
「……」
回れ右して一目散に走り去ってしまった。
「?」
これってあれですか?俺の後ろに何かが居てそれを見て相手が逃げちゃった……って話?つまり、俺も危険ってことか?
油のちゃんと差されていないロボットよろしく、徐々に後ろに視線を向ける……その先に居たものは……夜の闇だけだった。
「……ほっ、驚かせやがってあの警備員め~……」
てっきり幽霊でも出たのかと思ったじゃねぇか。
――――――――
「知ってる?この学校に死んじゃった十時零時のお化けが出るんだって!」
「え?一年前学校で死んでいたって人の?」
「うん!昨日の夜に警備員さんが目撃して大騒ぎだったんだって!ほら、八咲さんのおじいさんが今日の夜にじきじきここに出向くって言ってたよ!」
「じゃ、やっぱり八咲さんも手伝うんでしょ?」
「そりゃ、そうでしょうよ!」
―――――――――
何だかよくわからんが……そんな話を聞いた……というより、何処もかしこも学校中そんな話でいっぱいだった。何々?八咲って誰?十時零時って名前が俺?
変な話だが、警備員は俺を見て驚いたが誰も俺を見て驚いてはくれなかった……というより、俺を完全無視。目の前で手を振ってみてもスルーされたし、女子トイレ前で待っていても誰も叫び声を上げてはくれなかった。すいませ~んといってこれで何人目になるだろうか……
これで最後にしようと図書館のプレートがかけられている場所へと足を伸ばす。司書の姿は見当たらず、数多くある机の一つだけが埋まっている。机の上には本が山のように積まれていた。相手の姿は確認できない。
「すいませ~ん」
そういうと、なんだか空気が固まったような気がした。これまでとまったく違った反応だったためにもう一度訊ねてみる。
「すいませ~ん!!俺の声聞こえていますかね?」
ガタン!ガタガタン!!そんな音がして、本が崩れ落ちた。その先に一人の女子生徒が居て、俺を見ていた……驚愕……蒼と赤色のパンダを目撃しました……そんな表情をしている。
「あ、よかった……俺の姿が見えるんですか?いやぁ、誰も見えていないんじゃないかと思ってびびって……」
「れ、零時くんっ!!」
「っと?」
気がついてみれば、眼鏡をかけているその女子生徒は俺を抱きしめていた。
え?何これ?俺はこの人のなんだったんだ?
この小説は満月の騎士 ~満月の岸にて~の続編に当たるような、当たらないような作品です。主人公である十時零時は死んでいるような、死んでいないようなそんな曖昧な存在です。そんな彼は戦います。説明へたくそなので今回はこの辺で勘弁してやってください。