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ダリアに悲劇は似合わない  作者: 伊月十和
第三章 王宮の幽霊
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1-41


「セシル王妃のいとことは、恐らくあの女のことではないでしょうか?」


 王宮からバロウ家に戻り、久しぶりに自室で靴を脱いで足を伸ばしていた。

 幽霊の件は解決したものの、レイチェルが心に負った傷はしばらく癒えそうにない。セシル王妃が今回のことを仕掛けたのもショックだったようだ。仲良くしてくれている、と思っていたらしい。ならばもしかしたらこの件は隠しておいた方がよかったかもしれないが、もう後の祭りである。


 そんなことで、ダリアはすっかり疲れ果てていた。今日は湯にゆっくりと浸かりたい気分だ。


「あの女?」

「おお、口にするのも汚らわしい。ソレーヌのことです」

「……ああ」


 ダリアはうんざりとため息を吐き出した。ソレーヌとは、ダリアの婚約者のルネを寝取った女性である。


「ならば、酷いこと、というのもだいたい想像がついたわ。ソレーヌ自身の恥にもなることだから、人には話さないと思っていたけれど、きっと話したのね」


 ソレーヌとは友人同士で、ルネに会うより前からの付き合いだった。ソレーヌをルネに引き合わせたばかりに浮気をして……と考えると今でも堪らない気持ちになる。結果、友人と婚約者を同時に失ってしまうことになった。


「なんて憎らしい女でしょうか? どこまでダリア様を苦しめたら……」

「あの女のことならいいのよ。私の忠告に従わなかったんだから、そのうち酷いしっぺ返しを食らうことになるから。……私の想像が正しければ、だけど」


 たぶんその想像は当たるだろう。だが、ダリアにはそれを確かめる手立てはない。だから、もうあんなことは忘れてしまおうと頭を振った。


「王宮にはあの女の兄もおりますからね」

「……そうだったわね。国王の側近で、国王の妹の婿だったわよね」


 フェルマン・アルノーはソレーヌの兄で、将来のソレーヌ侯爵である。 デューク国王のお気に入りで、次期宰相だとも目されている。


「実は先日、国王がコリンヌ王妃の部屋に乗り込んできたときに側におりました。憤る国王を止めることもせず、ニヤニヤと黙って見ていました。側近として陛下を止めるべきなのに!」


 リタは声を震わせている。あの場に居た十人ほどの側近は、リュシアンも含めて、凄まじい剣幕の国王になすすべなし、といった雰囲気で、止めても無駄だと諦めているようだった。なにもフェルマンだけが特別というわけではないが、リタは彼だけが目についたようだ。


「デューク国王には、みんな手を焼いているようね。ええ、そうね、彼を止めてくれる側近が居てくれればいいのに」

「気に入らない側近がいると、すぐに自分の近くから追い払ってしまうようですよ。それで長く仕えてきた、年嵩の者は排除されただとか」


「そんな人を夫に持って、コリンヌ王妃も大変ね。彼女のストレスの多くは、夫に与えられているような気がするわ。それから、第一王妃やら第二王妃からの攻撃もあるようだし。なんとか王宮から離れて、しばらく静養できればいいのに」

「陛下が唯一、言うことを聞く人がいるそうです」


「それは誰?」

「宰相です、第一王妃の父親です。幼いデューク国王の教育係だったそうですよ」


「それは……取り入るのは難しそうね」


 例の幽霊事件があってから、ダリアは王宮の人間関係の複雑さにうんざりしていた。コリンヌを取り巻く状況は、かなり複雑だ。


「誰か、コリンヌ王妃の話し相手になってくれそうな、王宮内での権力者がいればいいのに」

「うぅーん、そうですね。そんな都合のいい人、いるでしょうか? レイチェルさんに相談するのがいいかもしれませんね」


「そうね、コリンヌ王妃の回復を手伝うためには、王宮のあれこれにも詳しくなっておいたほうがいいみたいだから、それも聞いてみましょう」


 そうして早速その翌日、王宮に赴いたダリアは王宮の事情についてレイチェルに尋ねた。

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