1話
『砂嵐』
巻き上がる砂塵は触れるもの全てを傷つける。
主以外は。
巻き起こる砂塵はどんどん勢力を強め、範囲を広げていく。
「奪ったぁ!」
後ろから聞こえる声。全身から飛び散る血液。
『砂壁』
強襲者との間に隔たりが生まれる。
「くそッ!何でだっ!」
『砂摺』
「いてぇ!何しやがる!やめ!やめてくれぇ!」
砂の色がだんだん赤く染まっていく。
悲鳴がどんどん小さくなっていく。
『砂沈』
隔たった壁は無くなり、崩れ落ちる。
赤い砂を小瓶に入れ、懐へしまう。
地面にある赤く染まった砂は色が抜けていく。
いたはずの強襲者の姿は消えていた。
『散』
その一言で砂塵は消え、青空が見える。
踵を返し、帰路へつく。
―
『お疲れ様でしたぁ!』
「うっせぇ」
「すみません!サンダーさん!」
小瓶を置き、立ち去る。
『お疲れ様でしたぁ!』
「うっせぇ」
―
「ねぇねぇトリルさんは、何でサンダーさんの時だけ声大きいの?」
トリル「そうですね、助けていただいた時に声が小さいと言われたのでできるだけ大きな声でするようにして
います」赤い砂の小瓶を開け、成分分析をする。
「クエスト達成率100%の何でも屋、砂城の主サンダー…砂の能力ってそんなに強いイメージは無いんだけどな
ぁ」
トリル「少なくともあの人が負けるところは想像ができません」
「そりゃ…トリルさんのヒーローみたいな感じだしね…」