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守護異能力者の日常新生活記  作者: ソーマ
第3章

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第3章 第14話

「……さて、これどうしよう?」


修也は辺りを見回す。

そこには先程修也が倒した男たちが転がっている。

このまま放っておくのは流石に近隣住民に迷惑だろう。

とは言え、蒼芽に危害を加えようとした連中だ。手厚く保護してやる義理も無い。


「……警察に通報ですかね? 一応集団暴行を受けそうになったわけですし」

「まぁそれが妥当かな? でもこれ、逆に俺が怒られないか? 全員返り討ちにしちゃったし」

「え……えーっと……」


修也の問いに言葉を詰まらせる蒼芽。

死屍累々の光景の中1人だけ無傷の修也。

何も知らない人が見たら『修也が無抵抗の男たちに対して暴行を働いた』と見られてもおかしくない。


「私が証言しましょうか? 私が襲われそうになったから修也さんが助けてくれたって」

「でも説得力無いよなぁ、この状況は」

「まぁ普通に考えたら無理がありますよね……」


何か良い手は無いかと腕を組んで考え込む蒼芽。


「あっ!」


十数秒ほどして何か閃いたらしい蒼芽が修也の方を向く。


「だったら修也さんのことを知っている不破さんや七瀬さんに連絡したらどうですか?」

「おおなるほど、その手があったか!」


多少なりとも修也のことを知っている不破警部や優実なら事情の説明がしやすい。

拳銃や理性のタガが外れた狂気に晒されても物怖じしない胆力と、処理できる体術を持ち合わせていることも知っているので説得力もそれなりに出てくるだろう。

さらに幸いなことに直接連絡できる手段を修也は持っている。

修也は以前不破警部に貰った名刺を取り出し、そこに書かれている番号に電話をかける。


『……もしもし、誰だね?』


数コールした後電話の向こうから年配の男性の声が聞こえてきた。


「もしもし、こちら不破さんの携帯で間違いないですか?」


名刺の電話番号を見ながらかけたので間違いは無いとは思うが、万が一の可能性を考えて修也は相手を確認する。


『そうだが……』

「突然の連絡すみません、土神です」

『おぉっ、何だ土神君だったのか! 酷いじゃないか連絡先渡したのに全然連絡くれないなんて。寂しくて夜な夜な枕を涙で濡らしてたんだよ?』


電話の相手が修也だと分かり、不破警部の口調が明るくなる。

そして一気に口調その他諸々が砕けだした。


「いやそんなプライベートで連絡を取り合う間柄じゃないでしょうに」

『はっはっは、何を言う! 同じ卓を囲み同じ釜の飯を食った君と私の仲じゃないか!』

「ただのファミレスのドリンクバーですけどね」


選択肢を間違えただろうか……と、修也は不破警部に連絡したことを後悔し始める。

こういう場合立場が上の人間に話を通した方がスムーズだろうと思ったのだが、必ずしもそうとは限らないようだ。


(今度同じようなことがあったら七瀬さんに連絡しよう。そんな機会が来ないことを願いたいけど)


修也はそう心に決めておくことにする。


「すみません、本題に入らせてもらっても良いですか?」

『ああそうだね、今日はどうしたんだい?』

「実は……」


修也は今起きた事態を不破警部にかいつまんで説明し始めた。



「……ふむ、なるほどそれでこの状況か……」


十数分後。

修也から事情を聞いた不破警部は、優実を含めた応援を何人か連れてやってきた。

その中にはアミューズメントパークでの事件の時に来ていた警官の姿もある。


「確かに何も知らない人がこの状況を見たら土神君が傷害事件を起こしたと勘違いしても仕方ないね」

「すみません……俺としても穏便に済ませたかったんですが、蒼芽ちゃんに危害を加えられそうだったのでつい……」

「それは仕方ないわよ。彼女が襲われそうになって怒らない彼氏なんていないでしょうし」

「いやあの、彼女ではないんですが……」


優実が修也の事情を察して擁護してくれるが、根本がずれているので的外れなものになってしまっている。


「でも目の前で大事な人が危険に晒されそうになっているのを見過ごせなかったというのは間違いないでしょ?」

「え……えぇ、それは、まぁ……」

「だったら合ってるじゃない」

「いや話が飛躍しすぎでしょ」

「良かったわね舞原さん。土神君はあなたを大事に思ってるみたいよ?」

「えっ……そ、そうですか? ……えへへ……」


優実にそう言われ照れ笑いを浮かべる蒼芽。


「それにしても凄いな。これだけの男たちを相手にして無傷で全員無力化できるなんて」


現場の検証をしていたアミューズメントパークの時の警官が呟く。


「そうだろう? だから私自らが熱心にスカウトしているんだがねぇ」

「だから警察はスカウト制じゃないでしょって。それよりも不破さん」

「ああ気にしなくても良いよ。君たちの話を聞く限り十分土神君に正当性はある。君を罪に問う気はこれっぽっちも無い」

「そうですか……」

「ただまぁ……一応念のためにこちらにも事情を聞かなければならないがね」


そう言って倒れている男たちに視線を送る不破警部。


「まぁ……そうですよね」

「すまないね、確定的な証拠が無い限りはそうせざるを得ないんだ。片方だけに肩入れするわけにはいかないのが面倒なところだよ」


不破警部はそうため息を吐きながら愚痴をこぼす。


「いえ、それは当然のことだと思います」

「しかし警部、土神君を加害者だとした場合、彼にこのような事件を起こす動機がありません。彼らの証言通り襲われたから返り討ちにした、と言うのが一番自然かと思われますが」

「だから一応念のためと言っているだろう七瀬君。それに肩入れしたい気持ちは分からなくもないが、私情を挟みすぎるのは感心しないぞ」


修也たちをかばおうとする優実を窘める不破警部。


「警部! 倒れていた男たちの内の1人が目を覚ましました!」


その時、警官の1人が報告してきた。


「お、ちょうどいい。少し話を聞いてみようか」


報告を受けた不破警部が目を覚ましたという男の所へ向かう。

修也もそれについていった。

目を覚ましたのは、最後に修也に詰め寄られて気を失った男だった。


「う……あれ……俺は……」

「気が付いたかな? 私は警察官の不破と言う者だ。少し話を……」


そう言って警察手帳を男に見せる不破警部。

その手帳をぼんやりと見ていた男だが、段々と目の焦点が合ってきた。

そして見る見るうちに表情が青ざめ恐怖に染まっていく。


「け、刑事さん! 俺を逮捕してくれ! 俺は……その人を集団暴行しようとしたんだ!!」


そう必死に不破警部に訴えかけて両腕を前に突き出す男。


「……んん? それは……自白と捉えて良いのかね?」

「そうだ! 暴行は犯罪だろ!? 犯罪を犯したら刑務所にぶち込まれるんだろ!?」

「いや……今回は暴行未遂だからそこまで重い罪にはならないだろう。精々厳重注意くらいになると思うが……」

「それに如何なる場合でもいきなり刑務所には入りません。まずは留置所に収容されます。そして48時間以内に検察に身柄の引渡しを行いますが、不破警部の言うとおり今回はそこまでいかず厳重注意で終わる可能性が高いと思われます」


不破警部と優実の説明に不満があるのか、更に詰め寄る男。


「それじゃあ困るんだ! なぁアンタ、俺たちはアンタたちに酷いことしたよな! そうだよな!?」


そう言って今度は修也に詰め寄る男。

あまりの必死さに先程までの怒りはすっかり鳴りを潜め、むしろ戸惑う修也。


「え? いや……しようとしたのは間違いないけど、結局何もされてないし実質被害ゼロみたいなもんだしなぁ……」

「そんなことないって! 俺たちの暴言で嫌な思いしただろ? な!?」

「いや、でも……俺も殴っちゃったし」

「そんなんじゃチャラにならねぇよ! だから、な!?」

「……君はどうしてそこまで逮捕されたがるのかな?」


男の様子に何かを感じ取った不破警部が尋ねる。


「依頼を達成できなかったとと知られたら……消される……!」

「……何か穏やかじゃない単語が出てきたな」

「消されるって……猪瀬にか? アイツにそんな力があるとは思えんが……」

「マジなんだって! だから頼む、俺を逮捕してくれ! 刑務所の方がまだマシだ!!」

「だからいきなり刑務所ではないと……」

「分かった分かった、とりあえず事情を聞きたいから同行してもらえるかな?」


そう言って男を立たせる不破警部。

そうこうしている内に他の男たちも目を覚ましだした。

そして状況を理解して最初の男と同じようなリアクションを取る。


(……何なんだ、これは……?)


男たちの怯えようを訝しむ修也。

最初は修也の『力』に対する反応かと思ったのだがどうも違うようだ。

修也にではなく猪瀬に対して怯えているように思える。


「じゃあ私たちは彼らを連行するからこれで失礼するよ」

「はぁ……」


色々と疑問は残るがここであれこれ悩んでも事態は進まない。

修也と蒼芽はイマイチ釈然としない心持ちで男たちを連行していく不破警部たちを見送るのであった。



「……お疲れ様でした」


男たちを留置所に収容し終えた後、優実は不破警部に声をかける。


「ああ、七瀬君もお疲れ」

「……警部、今回の事件、どう思いますか?」

「どう……とは?」


優実からの質問に不破警部は目を細める。


「突然土神君が襲われかけたのも謎ですし、返り討ちにあった後の彼らの態度も謎です」

「うむ……また改めて土神君に話を聞きたい所だが、こう何度も頼るのは警察官としての面子がだな……」

「……今更何言ってるんですか?」

「え? ちょっと酷くない?」


さらっと吐いた優実の毒にちょっと涙目になる不破警部。


「……まぁ、土神君に話を聞きたいのは私もです。彼は少し事情を知ってそうでしたからね」

「そうだな……気になることを言ってたしな」

「『猪瀬』……ですね?」


優実の言葉に不破警部は黙って頷く。


「猪瀬と言うとこの町周辺の施設を建設した資産家の1つだ。それが今回の事件に絡んでいるのか……?」

「でもそのような家が一個人を狙うというのはあり得るのでしょうか? そのようなことをしでかす家ではなかったと思いますが」

「普通に考えたらあり得ない……だろうが、実際にこうして事件は起きている。何か事情があると見て良いだろう」

「どのような事情ですか?」

「うーむ……」


優実の質問に対し不破警部は唸るだけで何も答えない。

不破警部自身でも答えは見つかっていないのだろう。


「……今は情報が少なすぎて全て推測の域を出ない。また日を改めて土神君に話を聞こう」

「それが良さそうですね」

「私はこれから今日の事件の調書を纏める。七瀬君はもう上がって良いよ」

「はい、それではお先に失礼します」


そう言って優実は軽く頭を下げ、その場を後にした。



「…………?」


更衣室で制服を脱いで私服に着替えている最中に優実のスマホが震えた。

画面は着信を知らせている。


「これは……瀬里?」


瀬里からの着信であることを確認した優実は電話に出る。


「……もしもし?」

『もしもし優実ー? 今暇?』

「暇ではないわ。今日の仕事が終わって着替えてる最中よ」

『だったらちょっと聞きたいことがあるんだけどさぁ』


暇ではないと言ったのにお構いなしに用件を伝えてくる瀬里。

もういつものことなので優実もいちいち気にする気もない。


「と言うかまずは服を着たいんだけど」

『あーじゃあ服着ながらで良いから聞いてよ』

「何かしら?」

『優実は今日どんなパンツ履いてんの?』

「……警官に堂々とセクハラするとか良い度胸してるわね」


半眼になりながら瀬里に苦言を呈する優実。

電話なので表情は伝わらないが。


『あははは! そうそう、優実はやっぱりそうでなくっちゃ!』

「……?」

『何か優実の声が疲れてるっぽいからちょっと活を入れさせてもらったよ』

「……そんなに疲れてる声だしてるかしら?」

『出まくってるよー。長い付き合いのある私の目はごまかせんぞー』

「この場合耳じゃないかしら」


そう言いながら口元が少し緩む優実。

色々と考えすぎて頭の中にもやがかかったような状態になっていたのだが、瀬里との会話でそれが晴れていくのを優実は感じた。


「それで何の用? まさか本当にどんな下着か聞きたかった訳じゃないでしょ?」

『まーね。ちょっと知ってたら教えて欲しいんだけどさぁ』

「前にも言ったと思うけど、まだ公表していない事件の話とかは守秘義務があるんだから話せないわよ」


瀬里が話し出す前に釘を刺す優実。


『そんなの聞いてみないと分かんないっしょ』

「……それもそうだけど」

『『猪瀬』の家ってあるでしょ?』

「っ!」


瀬里からその名前が出た時、優実の心臓が高鳴った。

先程まで不破警部との話題になっていたからだ。

そんな優実の心境には気づかず瀬里が続けて話し出す。


『いやーちょっと不穏な噂をキャッチしてねぇ。警察の方に何かタレコミが無いかなー? あったら教えて欲しいなー? ……ってね』

「……そんなスキャンダラスなことを部外者にホイホイ話せる訳が無いでしょう?」

『えー、ちょっとくらい良いじゃん』

「何度も言うようだけど守秘義務という物があるのよ」

『ちぇーっ……! ……まぁ良いや、また今度陽菜も誘って飲み会やろうよ!』


優実にバッサリと断られた瀬里だが、大して気にした様子も見せず話題を変える。


「飲み会って言ってもファミレスにあるノンアルコールのドリンクバーだけどね」

『あー、まぁ流石にアルコール入れるとなると宅飲みじゃないと……ねぇ?』

「そうね……私とあなたはともかく、陽菜がね……」


以前アルコールありの飲み会をした時のことを思い出し、揃ってため息を吐く優実と瀬里。


『そんじゃま、日程が決まったらまた連絡するよ。じゃあねーっ!』


そこで通話は切れた。

通話終了と表示されたスマホの画面をしばらくじっと見つめる優実。


「…………察しの良い瀬里のことだから気づいたでしょうね。何か分かると良いんだけど」


そう優実は一人呟く。

そしてスマホを鞄に仕舞い、途中だった着替えを済ませ、更衣室を出て家路に就くのであった。

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