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守護異能力者の日常新生活記  作者: ソーマ
第4章

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第4章 第18話

「あー、やっと来たー。遅いよありちゃーん」

「いやアンタが速すぎるのよ! 何で体育の授業の時より速いのよ? 体操服よりも動きにくい制服のハズなのに!」


頬を膨らませてむくれる由衣に対して突っかかる亜理紗。


「だっておにーさんに会えるのが楽しみだったんだもん」

「目の前にニンジンぶら下げられた馬じゃないんだから……」


しれっと言ってのける由衣に対して亜理紗は疲れの溜まった声で返す。


「あっ、おにーさんたち紹介するねー。私の友達のありちゃんだよー!」

「待ちなさい由衣。その紹介じゃ何一つ伝わらないじゃないのよ! せめてあだ名じゃなくて本名で紹介しなさいよ。あ、すみません先輩方。私、長谷川亜理紗と言いますー! 由衣と同じ中3で、由衣とは1年からの付き合いなんですよ。そんなに珍しい苗字でも名前でもないので是非覚えておいてくださいね!」

「へぇー……」


自己紹介を受けて修也は亜理紗に目を向ける。

同じ学校なので当然だが由衣と同じ制服を着ている。

背は由衣よりも頭半分ほど高い。

まぁこれは由衣が小柄というだけで亜理紗の方が平均的なのだろう。

髪は詩歌よりも色の濃い茶色で、華穂程ではないがそれなりの長さに伸ばしている。

由衣とは違うベクトルで快活そうな印象を修也は受けた。


「で、わざわざ高校の方まで来て何か用なのか?」

「私が遊びに行くって言ったら一緒に来たいって言ったから連れてきたんだよー」

「ん? 高校に知り合いとかいるの?」

「いえそういう訳じゃないんですけど私も中3ということで来年度からはここにお世話になるじゃないですか。どんな所なのか知っておくに越したことはないと思った次第でして、かといって特にコネとかがある訳でもないのに単身踏み込むには相応の勇気というか何というかが必要ですよね? なのでどうしたものか悩んでいたところに由衣の知り合いがここに在籍していてしかも遊びに行くと聞いたのでこれ幸いと便乗させていただいたという訳ですよー。ついでに私自身も知り合いというか何というか、そんな人間関係を築けたら良いなーって思いまして」

「お、おぉ……?」


華穂の質問に対して早口でまくし立てる亜理紗。

突如押し寄せた言葉の奔流に戸惑う修也たち。


「えぇと……つまり?」

「ありちゃんは彼氏が欲しいんだってー」

「あ、そうなの……」


亜理紗の目的が見えなかった修也は由衣に目線を送る。

すると実に簡潔な答えが返ってきた。

修也は何だか肩透かしを食らったような気分になる。


「ちょっとおおおおぉぉぉぉ!! 由衣! 人がせっかく当たり障りのない理由でごまかそうとしてたのに容赦も遠慮も無く簡潔に纏めてぶった切るんじゃないわよ!」

「ほえ? 間違ってないよねー?」

「世の中には建前って言葉があるのよ! 何もかも馬鹿正直に話せば良いってものじゃないのよ! 本音ばっかりじゃ人間関係に確執やら衝突やらいざこざやらが発生しまくるでしょうが!!」


無自覚で暴露した由衣に突っかかる亜理紗。


「うん、何と言うか……微笑ましいなぁ」

「ですねぇ」

「は、はい……」

「あははは、可愛いねぇ」


そんな2人に温かい目線を送る修也たちであった。


「でもそういうことだったらちょっと力にはなれなさそうだなぁ。俺転校してきたばかりでそこまで知り合いいないし」


亜理紗の本当の目的を聞いた修也は困って眉根を寄せる。

実際問題修也は転校してきてまだそこまで日が経っていない。

そもそも知り合いと呼べるだけの人がそんなに多くないのだ。


(その多くない知り合いも大多数が女の子だし)


引っ越してきてからの知り合いは大分男女比が偏っていたことに悩んでいたことを思い出す修也。

流石に女の子を紹介するわけにはいかないだろう。


「蒼芽ちゃんたちはどうだ?」


なので修也は蒼芽たちにも話を振って聞いてみることにした。


「私は男の人の連絡先は修也さんしかありません」

「わ、私は……先輩とアキ君とお父さんくらいしか……」

「私も家の人を除いたら土神くんくらいしか無いねぇ」

「私は携帯持ってないよー」


修也の問いかけに全員首を横に振る。


「……という訳だ。残念だが……」

「いやいやいやいやそう簡単に諦めないでくださいよ! 諦めたらそこで試合終了なんですよ!? もう一度しっかりよく思い出してみてくださいよ!! 1人か2人くらいはいるでしょ該当しそうな人が! はいシンキングタイムスタート!!」


早々に話を打ち切ろうとした修也に亜理紗が食い下がる。


「そうは言ってもなぁ……」


修也は改めて知り合いを頭の中でピックアップしていく。


(仁敷と霧生は彼女持ちだし……)


真っ先に浮かんだのはクラスメイトかつそこそこ仲の良い彰彦と戒だが、2人とも既に彼女がいる。

そんな人物を紹介するわけにはいかない。


(陣野君も彼女いるなぁ)


連絡先こそ知らないが何度か顔を会わせる機会があった陣野君も彼女持ちだ。


「………………」

「ん? 土神くんどうしたの?」


考えていくうちに段々変な顔になってきた修也が気になって華穂が尋ねてくる。


「……改めて考えると俺の周りってリア充多すぎだろ」

「え? どうしたんですか急に」


唐突におかしなことを言い出した修也に首を傾げる蒼芽。


「だってさぁ、俺の男の知り合いって大体彼女持ちなんだもん。仁敷とか霧生とか陣野君とか」

「あ、あぁー……」

「え、えっと……」


修也の呟きにどこか納得したような、でも何か物言いたげな表情で相槌を打つ蒼芽と詩歌。


「土神くんだって大概リア充だと思うけど。今や学校中の人気者じゃない」


華穂が2人の言いたいことを代弁する。


「あれをリア充と言って良いのか……? 何かちょっと違う気がするんだけど」


華穂の物言いに待ったをかける修也。


「あっ! あそこにいるのってもしかして土神さんじゃない?」

「ホントだ! こんな所でお姿を見れるなんて超ラッキー!!」

「すみませーん、写メ撮っても良いですかー? 待ち受け画面に設定してお守りにしたいので!」


そこにたまたま通りがかった女子生徒が修也の姿を見て黄色い歓声を上げる。


「あー……えっと、そういうのはできれば控えてくれると助かるかな。というかお守りになんぞならんでしょ俺の待ち受け画像なんて」


スマホを向ける女子生徒たちに修也はやんわりと断りを入れる。


「でも回避率50上がるのは相当……」

「だからそんな効果無いっての!」


ネタを引っ張ってくる華穂に突っ込む修也。


「きゃーっ! 土神さんに話しかけられたー!! 明日クラスで自慢しよーっと!」

「もうこの事実だけでご飯3杯は行ける!! 3か月は戦える!! それじゃあどうもありがとうございましたー!」


断られても気分を害するどころかさらにテンションを上げて、何故かお礼を言って帰っていく女子生徒たち。


「で、何だっけ? あぁそうそう、俺をリア充というのはちょっと違う気が」

「まごう事なきリア充じゃないですかコンチクショーーーー!! 今の一連のやり取りは一体何ですか!? ってか何やったらあんなに持ち上げられるんですか!! アイドルを相手にしてもあそこまでのリアクションはしませんよ!?」


しれっと言ってのける修也に食って掛かる亜理紗。


「何って……特に大したことはしてな」

「モールで起きたひったくりを阻止して、さらに凶器を持ってこの学校に侵入してきた不審者を無傷で制圧しましたよね。素手で」

「スリを未然に防いで……アミューズメントパーク前に、大型トラックで突っ込んできて……そして大きなハンマーを振り回して暴れてた男の人を……倒してくれました……素手で」

「学校中から疎ましく思われてた人を更生させてくれもしたよね。素手で」

「いやだからそれは俺じゃねぇ。ってか素手で更生って何よ」

「いやー、流れ的に付け足しておいた方が良いかなーって」

「土神先輩……アナタ武神か何かの生まれ変わりですか!? そこまでできるってただものじゃありませんよ!?」


修也の今までのエピソードを聞いた亜理紗が驚き目を大きく開いて修也に詰め寄る。


「どっちかって言うと守護神だよね土神くんは」

「そうですね。修也さんは基本的に周りの人を守る為に動いてますから」

「だ、だから先輩は……凄い人、なんです」

「そーだよー、おにーさんは凄いんだよー!」


何故か由衣がドヤ顔で自慢する。


「いや由衣、何でアンタが自慢気なのよ? 今までの話にアンタ1ミリも関わってないじゃない」

「えー、でもおにーさんが凄い人なのは本当だもん!」

「まぁ確かにそうみたいだけど。実際に見てない私でも凄いと思うわこれなら」

「それにねー、おにーさんは癒し系なんだよー」

「それまだ言うのか由衣ちゃん……」

「あー……」

「あぁ……」

「え、華穂先輩も詩歌も納得しちゃうの?」


由衣の癒し系発言に同意を示すようなリアクションをする2人に眉を顰める修也。


「だって……ねぇ? 土神くんが側にいると何があっても大丈夫だって思えるし」

「は、はい……先輩が近くにいてくれると……その……」


詩歌ははっきりとは言わないが華穂と概ね同意見のようだ。


(……男が苦手なはずの詩歌にそこまでの印象を持たれるとは……)


そこまで信頼してくれているのかと嬉しくなる反面、もう少し方向性は何とかならなかったのかと思わなくもない修也。


「ほらやっぱり修也さんは癒し系という認識で良いんですよ」

「えぇー……」


今までの話を纏める蒼芽の言葉に納得が行かず修也は不服そうな声をあげる。


「……ってか疑わないの? 自分で言うのもなんだけど嘘くさすぎないか?」


それはそれとして、驚きはしたものの疑う様子を見せない亜理紗を見て修也は疑問に思って尋ねてみる。


「あー、ここまでくると一周回って逆に真実味が増したと言いますか……それに由衣がそんな嘘を言うとはとても思えないですし、先輩方にしたってそんな嘘を吐く理由が無いじゃないですか」

「華穂先輩のは間違ってるけどな」

「それじゃあホントのエピソードを話せば良いんだよね? 確か土神くん、蒼芽ちゃんたちのクラスにいる一組のカップル成立に一役買ったんだよね」

「あ、いやそれは」

「それに私のクラスでも土神くん繋がりでカップルが一組成立したんだよ」

「え、何それ。それは本気で知らない」


華穂からもたらされた新情報に修也は耳を疑う。


「ほら、猪瀬さんの土下座騒動があったでしょ? その時の土神くんたちがいなくなった後話の流れで何か良い感じになって付き合うことになったらしいんだよ」

「……それ、陣野君と佐々木さんの時以上に俺関係無くないか?」


修也がその場からいなくなった後の話なら陣野君たちの時以上に関係性が無いのではないかと修也は思ったのだが……


「猪瀬さんの土下座が事の発端だから関係無くはないよ」

「えぇ……そうなるの……? そもそもその土下座だって俺がやらせたわけじゃないのに……」


自分の知らない所でどんどん話が凄いことになっていっていることに呆れる修也。


「そーゆー話を待ってたんですよおおおおおぉぉぉぉ!!」

「うわぁっ!? 何事?」


今の華穂の話を聞いた途端、今度は目を輝かせる亜理紗。

修也は驚いて一歩下がる。


「そうですよ私が求めてるのはそっち系の話なんですよ! なんだそういう実績があるのなら先に言ってくださいよ! それなら私に出会いの機会を与えることくらい朝飯前でしょ! この際彼氏候補なんて贅沢は言いません! とにかく先輩の知り合いに私の存在を知らしめてくれるだけでも十分ですから!」


亜理紗は凄い勢いで修也に詰め寄ってくる。


「いや、そう言われても……」


亜理紗の勢いに少々引きながら修也は言葉に詰まる。

この手の話は修也は完全に専門外だ。

頼られてもどうにもできない。

陣野君と佐々木さんの件に関しては修也は特に意図して何かしたという訳ではない。

ただ何となくその日は唐揚げ定食を食べたい気分だったので学食で食べたら巡り巡ってそのような結果になったというだけなのである。

今聞いた華穂のクラスでの話も修也は一切関与していない。

それなのに華穂の口振りだとどうやらこれも修也の功績になっているっぽい。

以前蒼芽が言っていた、少しでも修也が関わっていると修也の功績になってしまうという効果がここでも出てきたらしい。

しかし修也としては自分の知らない所で勝手に功績が積まれて評価が上がっていっても戸惑うだけだ。


(それに知り合いと言っても……まさか不破さんを紹介するわけにもいかないし)


中年のおっさんと女子中学生の組み合わせなど字面がヤバすぎる。

そんなことをすれば下手すると不破警部が捕まりかねない。

しかしそうなるともう修也には知り合いが……


「どうした土神。今日はいつにも増して賑やかだな」


そんな修也に背後から声がかけられた。


「……あー、そういやこいつがいたっけか。何で忘れてたんだろ」


その声を聞いて修也は心当たりがまだあったことを思い出す。

そう……塔次の存在を。

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