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守護異能力者の日常新生活記  作者: ソーマ
第4章

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第4章 第16話

蒼芽と由衣の2人とプールに行った週末が明けて今日からまた1週間が始まる。


「んーーーーーー……! さ、今週も頑張るか」


6時過ぎになって身体が動くようになってきた修也はベッドから降りて立ち上がり、大きく伸びをする。


「……あ、そう言えば……」


そのまま着替えようといつもの制服を吊るしているハンガーに手を伸ばしかけた時、思い出したことがあり手を止める。


「えーと確か……」


そしてそのままクローゼットを開けて探し物をする修也。

それから数分後……


『おはようございます修也さん。もう起きてますか?』


ドアのノックと共に部屋の外から蒼芽の声が聞こえてきた。


「あぁ、今行く」


蒼芽の呼びかけに修也は応え部屋のドアを開ける。


「おはよう蒼芽ちゃん」

「おはようございます修也さん。夏服似合ってますよ」


ドアを開けた修也の服装を見て蒼芽が微笑む。

そう、今週から修也たちの通う学校は夏服に変わるのだ。

とは言っても今週はいわば準備期間のようなもので、夏服と冬服のどちらを着ても問題ない。

修也的には屋内とはいえプールにも入れるような季節になったので気分はもう夏だ。

なので冬服をしまい夏服に着替えたという訳だ。

そんな修也を出迎えてくれた蒼芽を姿をじっと見つめて修也は考え込む。


「……? 修也さんどうしました? 何か変でしょうか?」


修也の視線を不思議に感じた蒼芽は自分の服装を見回す。


「蒼芽ちゃん……いくら青が好きだからって制服まで青にするのはどうかと」

「いえこれは元々こういうデザインですよ!?」


神妙な顔をして呟く修也に突っ込む蒼芽。

今修也の目の前にいる蒼芽の恰好はいつものベージュのセーラー服ではなく、薄い青のセーラー服だった。

袖も半袖になっており、見た目だけでも十分涼しさが伝わってくる。

胸元のスカーフだけは赤いままだが、それもワンポイントのアクセントとなっている。


「悪い悪い冗談だ。しかし物凄く似合ってるな。まるで蒼芽ちゃん用に誂えたみたいだ」

「私も気に入ってるんですよ。可愛いですから」


そう言って蒼芽はくるりとその場で一回転する。

それにより遠心力でセーラー服の襟とスカーフ、そしてスカートが少しふわりと浮き上がった。


「……やはりと言うか何と言うか……」

「はい、もちろん膝上に裾上げしてますよ。昨日のうちにやっておいたんです」


修也の疑問に当然とばかりに答える蒼芽。


「何がそこまで蒼芽ちゃんをミニスカートに駆り立てるのか……」

「だって可愛いじゃないですか」

「『可愛い』の汎用性高すぎやしないか?」


一切の迷いなくそう主張する蒼芽に修也は呆れながら呟くのであった。



「おにーさーん!!」

「おっと……」


朝の支度を済ませて登校しようとしている修也と蒼芽の前に、ちょうど隣の家から出てきた由衣が現れて修也に飛びついてきた。

今回は珍しく正面からだったので修也も驚かずに受け止めることができた。


「えへへー、見て見ておにーさん。夏服だよー!」


そう言う由衣は蒼芽同様水色で半袖のセーラー服を着ている。

胸元のスカーフがリボンという違いだけなのは冬服と同じらしい。


「どうどうおにーさん、似合ってるー?」

「ああ、似合ってるぞ由衣ちゃん。いやもう色だけで涼しげなのが良いよなぁ」

「実際本当に涼しいですよ? 冬服と比べて生地も薄いですし」

「そういやスラックスも薄いんだよな」


そう言って修也は自分のスラックスを指でつまむ。

冬服の時は大分厚みがあったが、今はかなり薄く手触りもサラサラしている。


「しかし男の夏服ってせいぜいそこが変わるくらいで見た目的に大きな変化はないんだよなぁ」

「まぁパッと見では上着を脱いでるだけのようにしか見えませんからね」

「俺的には楽で良いから特に文句は無いけど」

「ねーねーおにーさん知ってるー? スカートも夏服だと薄いんだよー?」

「え、そうなの?」

「うんっ! ほら見てー」


そう言って由衣は自分のスカートの裾をつまんで少し持ち上げる。

確かによく目を凝らしてみるとスカートの裏側がうっすらと透けて見える。


「あ、ホントだ。え、大丈夫なのかこれ? 透けてスカートの中が見えたりしないの?」

「大丈夫ですよ。透けると言っても本当にうっすらですし、それに裾の方の部分だけですから」


確かに蒼芽の言う通り透けて見えるのは裾のほんの一部で、それより上は透けていない。


「へぇー、不思議なもんだなぁ」

「ですね。私も詳しい原理までは分かりませんけど」

「まぁ普通に透ける素材だったら大問題だけどな」

「あはは、採用されませんよそんなの」


そんな雑談をしながら今日も修也たちは学校までの道を歩いて行くのであった。



「じゃあここでお別れだな。由衣ちゃん今日も頑張れよ」

「じゃあね由衣ちゃん、また放課後にね」

「うんっ! おにーさんとおねーさんも頑張ってねー!」


中等部と高等部で道が分かれる場所で由衣は修也と蒼芽に手を振り、中等部の校舎がある方へ歩きだした。

その足取りはとても軽やかだ。


「ん-ん-んんーー♪」


笑顔で鼻歌を口ずさんでいる様子から由衣が相当ご機嫌であることが伺える。


「んふふー、一昨日は楽しかったなー。おにーさんとおねーさんと一緒にプールでいっぱい遊んだしー」


由衣は一昨日のプールの事を思い返していた。

アミューズメントパークに行き、ウォータースライダーで滑り、3人でご飯を食べて……

どれも由衣にとってはいつまでも心の中に残しておきたい素晴らしい思い出ばっかりだ。


「んー……あっ!」


そのまま中等部への道を早足で歩いていた由衣だが、視線の先に見知った後ろ姿を見つけたことで一瞬足が止まる。


「おーーーい、ありちゃーーん!!」


そしてその後ろ姿に声をかけ、駆け足で近寄っていく。


「はぁ……由衣、アンタねぇ、こんな天下の往来で人の名前を大声で呼ぶんじゃないわよ。個人情報がどうのこうのと言われるこの時代でナンセンス極まりないわよ」


由衣に『ありちゃん』と呼ばれた女の子は憮然とした表情で振り返る。


「ありちゃんおっはよーー!!」

「聞け人の話を! それにその呼び方も何とかならないかって言ったことあるでしょうに。それだと私が女王の為にせっせせっせと自分より大きな食料を巣穴に運び込むだけで生涯を終える小さな昆虫みたいになるでしょうが」

「ありちゃん、朝は『おはよう』からだよー?」

「あーもう……はいはい分かったわよ……おはよう由衣。ホントアンタはいつも相変わらずよねぇ……」


最初は由衣に突っかかるような口調だったが、由衣のマイペースっぷりに毒気が抜かれたのかテンションを落としてため息を吐く女の子。

由衣が声をかけたこの女の子、名前を長谷川亜理紗はせがわ ありさという。

中等部に進学した時に同じクラスになり、『平下由衣』と『長谷川亜理紗』で出席番号が隣り合わせになったことがきっかけで知り合った。

その後2年生と3年生でも同じクラスになり、さらにそのどちらでも出席番号が隣り合わせになっている。

腐れ縁みたいな付き合い方ではあるが、意外と由衣と亜理紗の仲は良好である。


「で、由衣。話を戻すけどその呼び方はどうにかならないわけ? 1年の頃からずっと言ってるんだけど」

「えー? でもありちゃんはありちゃんだよー?」

「そりゃ『亜理紗』から取ってるってのは分かるわよ。でも他にもっと良い呼び方あるでしょうに。私に似合う可愛くて大人っぽいエレガントな呼び方が!」

「大人っぽいー? 私よりおっぱいちっちゃいのにー?」


由衣が亜理紗の胸元を見ながら言う。

そこはまごう事なき平面であり……絶壁であった。


「それを言うなぁ! というか人の名前以上にそういうことを外で言うんじゃないわよ!! たとえ本当のことでも言って良いことと悪いことってもんがあるのよ!!」


凄い形相で再び由衣に突っかかる亜理紗。

こんな言い合いをしているが、本当に仲は良いのである。


「大体由衣! アンタだってロクにデートとかしたことも無いお子様じゃないのよ。大事なのは外見じゃなくて経験よ! まだ同じスタートラインに立ってるんだから……」

「あ、私デートしたよー?」

「は、はいいいぃぃぃ!!?」


由衣の衝撃発言にひっくり返りそうになる亜理紗。


「あ、それと合コンもやったよー」

「な、な、な、なんですってぇぇぇ!!?」


更に追加された情報に亜理紗は今度は由衣に詰め寄る。


「ほえ? どーしたのありちゃん、凄い顔になってるよー?」

「アンタが信じられないような情報を山ほど持ってくるからでしょうがっ! いつよ!? いつ合コンなんて行ったの? デートなんてしたのよ? 何よりもどうして私にも一声かけてくれなかったのよおおおぉぉぉ!!!」


由衣に詰め寄る亜理紗の口調は割とガチトーンである。

最後の部分にやたら力が入っていたのでそこが亜理紗的には一番重要らしい。


「ありちゃんそんなにデートしたかったのー?」

「そりゃそうよ! 中学生になったんだし彼氏の1人や2人くらい作って週末はデートとかやってみたかったわよ! なのに彼氏どころか男友達もできやしない。結局独り身のまま中学最後の学年まで来ちゃったのよ!? このままじゃ私の中学生活が彩りの欠片も無いまま終わってしまうわ!!」

「私はありちゃんと友達になれたから良かったと思ってるよー?」

「あー……うん、それは私もそう思うわ」


やたらとテンション高く早口でまくし立てていた亜理紗だが、由衣の一言でピタリと動きが止まった。

どちらかというとせっかちな性格でマシンガントークでまくし立てる亜理紗に対し、マイペースでのほほんとしている由衣。

一見するとペースが合わなさそうではあるのだが不思議と波長が合うらしい。


「私の話すペースが早めなのは自覚してるけど、それでも由衣はちゃんとついて来てくれるからねぇ」

「ありちゃんのお話聞いてて面白いから私は好きだよー?」

「うん、それは素直にありがたいと思うわ。まぁそれは置いといて今は由衣がしたっていうデートの話よ。いつの間に彼氏なんてできたのよ!? やっぱり合コン? 合コンで彼氏ができたの!? 私にも声かけてよおおおぉぉぉ!!」


再び話が戻ってしまった。

亜理紗が由衣の肩を掴んで叫ぶ。


「ほえ? 彼氏なんていないよー?」


そんな亜理紗に対し、由衣は不思議そうに首を傾げて言う。


「は? だってアンタさっきデートしたって……」

「うんっ! おにーさんとおねーさんのデートに一緒に行ってきたんだよー!」

「はぁ? どういうこと? ちょっとちゃんと1から順番に丁寧に分かりやすく説明しなさい」


次々出てくる情報に頭が混乱してきた亜理紗は由衣に最初から説明することを求めるのであった。



「……なるほど、由衣の家の隣に住んでいる人たちのデートについていったってわけね。合コンもその2人と一緒にお菓子を食べただけ……と」


由衣の言うことを要約した亜理紗が納得がいったかのように頷く。


「ほらね、デートと合コンでしょー? もう私の事を子供っぽいとは言わせないよー、ありちゃん!」

「そうだったわ……由衣がそういう思考回路してるのすっかり忘れてたわ。確かに由衣的には男女で遊びに行けばデートでご飯を食べれば合コンとなっても何ら不思議は無かったわ……」


ドヤ顔で自慢する由衣に対して額に手を当て疲れの溜まった声でブツブツと呟く亜理紗。


「あ、でも待って? 由衣にそう言う繋がりがあるのは事実なわけよね? だったら由衣を介して知り合いを増やすことはできるかも? あわよくば年上の彼氏ゲットも夢じゃないかも……? そしたらワンチャン逆転大勝利もあり得る……?」


と思ったら何か希望を見つけ出したようで声に力が戻ってくる。


「? ありちゃん、誰かと勝負してたのー?」


『逆転大勝利』という言葉を聞いて由衣が首を傾げ尋ねる。


「由衣! アンタその人たちに直近で会いに行く予定とかあったりしない!?」

「ほえ? 今日も学校が終わったら遊びに行くつもりだよー?」

「それ私も一緒に行っていい? 由衣の言う『おにーさん』がどんな人なのか気になるし新しい出会いがあるかもしれないし! そうよ何も同じ学校だけに目を向ける必要なんて無いじゃない。どうして今まで気づかなかったのかしら!」

「えー? 良いけどダメだよー?」


亜理紗の頼みに対し、由衣は不思議な返答をする。


「はい? 良いけどダメって何よ? 一緒に行って良いの? ダメなの? どっちなのよ」

「一緒に遊びに行くのは良いけどー、おにーさんを取ったらダメだよー? おにーさんはおねーさんと仲良しなんだからー」

「いや流石に人の彼氏盗ったりはしないわよ!? アンタは私を何だと思ってるのよ。いくら何でもそこまで飢えてはいないし落ちぶれてもいないわ!」


真顔でそう言う由衣に対して突っ込む亜理紗。


「だったら大丈夫だねー。じゃあ今日の学校が終わったら一緒に遊びに行こー!」

「アンタホントに私のことなんだと思ってたのよ……」


笑顔全開で学校に向かって歩き出す由衣をジト目で睨む亜理紗。

重ね重ねになるが本当にこの2人、仲は良いのである。

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