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おクスリ手帳  作者: 猫田芳仁
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こぼれ話 香辛料の夢

 せっかくなので自分のドラッグというにはいささか地味だが、体験談を1つ。

 ハンバーグなど肉料理に入れる香辛料、ナツメグで幻覚が見えると聞いたことはないだろうか。多分ふつうはない。

 最初に知ったのはいったいどこか、あまり覚えていない。ドラッグ関係の書籍か、インターネットか、あるいはアート関係のアヤシイ先輩たちから「お酒に目薬入れて……」的な流れで聞きかじったのか。

 7年ばかり前になるだろうか。その時自分は無職で、ナツメグでうっかり死んでもいいかなと思っていた。


 スーパーでナツメグを買う。わたしは粉薬が苦手だし、事前にネットの記事で「ナツメグのにおいがきつすぎてそのまま飲むと地獄を見る」と読んでいたのでオブラートも買っておく。家に帰り、オブラートに適量のナツメグを包み、飲んだ。この作業が全然終わらない。瓶に半分ほどのナツメグを飲んだところで面倒くさくなり、しばらくぼうっとしたが別にピンクの象やおもちゃの兵隊は見えてこない。「なぁんだ」と思って、酒を呑んで寝た。


 書くのが遅くなったが読者諸君は絶対にまねをしないでほしい。

 理由は以下に記載する。


 夜中に目が覚めた。この時点で身体に異常があった。

 天井が回転している。激しい頭痛もあった。

 しかしトイレに行きたかったし、本能的なものなのか水を飲みたくて仕方がなかった。天井だけではなく壁も回れば床も回る。ベッドからトイレへの短い距離が大冒険だ。帰りにキッチンに寄ってコップに水道水を注いでがぶがぶ飲み、またベッドへよろよろ戻ってぶっ倒れる。ナツメグのせいなのか、アルコールとの相乗効果なのはわからない。

 病院に行く選択肢はなかった。

 まず深夜である。病院が開いていない。

 夜間救急センターなどに頼るとしても、わたしの部屋は2階だ。階段も回るだろうから、外出しようとすれば踏み外して転がり落ちる可能性が非常に高い。

 なにより自業自得、アホの所業を病院で怒られたくない。

 そういうわけでわたしは1晩中ぐるぐる回る部屋の中で、ベッド、トイレ、キッチンを往復し続けた。

 決して楽しい経験ではなかったので、読者諸君は重ね重ね絶対にまねをしないでほしい。


 なおこんな経験をしたがナツメグの香りは大好きである。ハンバーグに絶対入れる。

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