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おクスリ手帳  作者: 猫田芳仁
4/5

4 就眠

 母のところに居候させてもらって、それはもういろいろなところに電話をかけて、3日くらいで住む家が決まって生活保護の申請もした。この流れがあまりにも鮮やかだったようで公務員時代に介護してくれた友人からは「万一何かあったら頼む」と言われている。何を?


 ここで困ることになったのはもちろんこの話の一応主題、クスリだ。精神科の薬は全部持ち出してきたが、急だったのであまり量がなかった。このままでは早晩眠れなくなる。過去に通院していたクリニックに電話してみたが1か月以上受診できないそう。クスリが全然足りない。これを役所の方に相談してみたところ「大きな病院のほうが早く受診できるかもしれない」とのことで、いけそうな範囲の大きい精神科を紹介してもらった。確かに個人病院より早く予約が通ったが、それでもクスリは足りない。酒を呑んでも寝付けなかった。うとうとする程度だ。回らない頭で外が明るくなるのを眺める日が何日か続いた。よれよれの状態で病院に行くと幸いなことにいい感じの先生で、ここでもマイスリーとワイパックス(のジェネリック)をもらうことになる。久々の安眠だ。その後いろいろあって頓服が増えたり減ったりまた増えたりしたが、主軸は相変わらずこの2種類である。


 何日か前、帰ってきてから1年が経った。立ち直ったとは言えない。酒もやめられない(少しずつ減ってはきた)。フラッシュバックもあるし、過食あるし、めちゃくちゃなのは相変わらずだが、少なくとも1年前よりは人間らしく生活できている気がする。

 その証拠に、去年は完全に忘れていたせんべろ忌を思い出すことができた。

 せんべろ忌とは、敬愛する中島らも先生の命日である。これでやっと最初に戻ることができた。明日、7月26日だ。

 以前は毎年、26日か、仕事の都合があるときはなるたけ近い休前日、吐くほど呑んで先生を悼んでいた。去年はできなかったが、今年は今日やることにした。というわけで、わたしはこれからちょっといいつまみで安ワインとトリスのウイスキーを吐くほど呑んで寝る。あとは頼んだ。

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