政略結婚だけど、愛はありました
侯爵令嬢であるアンナ・エルトレスト・シルヴィアには幼い頃から互いの親同士によって決められていた婚約相手がいる。そんな私の婚約者の名前はアルフレド・リオン・アレスキー。このリオン王国の第一王子である。
政略結婚なのでしょうがないかもしれないがリオン王子は私に冷たい。学園でも自分の側近と話している時などは笑顔で雑談などをしているのだが、私が話しかけると反応が薄くなる。食事や演劇などに誘っても断られることがほとんど。
私との誘いは断るのに、小柄で愛嬌のある可愛らしい男爵令嬢とは劇を見に行ったらしい。こうなると最近小説市場で流行りの婚約破棄なるものをされるのではないかとひそかに思っている。
しかし、それは勘違いだったようだ。
私は卒業式で婚約破棄なるものをされることはなく、何の事件も起きないまま学園の卒業と同時に私とリオン王子は結婚した。
ただ、リオン王子とは愛のない冷めた関係になると思っていたが……現実はむしろ真逆だった。
私は朝食を普通に取ることが出来ない。それというのも、リオン王子が……
「アンナ、あ~ん!」
「……あーん……」
などと私の朝食をすべてリオン王子が餌付けでもするかのごとく与えてくれるからだ。正直恥ずかしくてしょうがないのだが、彼は朝から私に「あ~ん」をしないとやる気が出ず執務に集中できないとか、わけのわからないこと言ってくるため…………仕方なく、私は朝食を彼に食べさせられている。
私は朝食をしっかり味わって食べたいのだが……リオン王子の整った顔立ちが至近距離に来るだけで顔がリンゴのように真っ赤になってしまい、朝食どころではない。そんな恥ずかしがっている私に追い打ちをかけるように「今日もアンナは可愛いね」などと囁くため、さらに私の顔は赤くなり食事に集中できなくなる。しかも、私が恥ずかしがっているのを分かっていてやるのだから質が悪い。
「リオン王……」
いい加減抗議しようと口を開いたところで、彼の人差し指で口を塞がれてしまった。
「ねぇ、アンナ……僕のことは普通にリオンと名前で呼んでって言ったよね」
「り、リオン……」
「うん、良くできました」
「な、なっ……」
と凄く良い笑顔で私に言ったリオンは、その勢いのまま朝食の野菜を私の唇に口移しで渡してきた。朝からこんなに心臓をバクバクさせられたら、そのままの勢いで死んでしまいそうだ。
私の受難は朝の時間だけではない。リオンが仕事の合間に休憩を取る時は必ず私が執務室に呼ばれる。その時間は彼にずっとギュッと抱きしめられるのが私の仕事だ。彼の肌から伝わるぬくもりにいつもドキドキしてしまう。
「アンナはそこにいるだけで可愛いね~」
「……」
リオンは毎日私のことを褒めちぎる。恥ずかしくて素直に言えないけど、本当はリオンに褒められるのは凄く嬉しい。
「あー、アンナ成分を充電できたわ」
「そ、そんな成分ないし……」
だいたい私はいつも15分くらい抱きしめられている。そうして彼の休憩時間が終わるのと同時に私は解放される。
夜になると彼の執務が終わり二人きりの時間になる。夜ご飯を食べた私は王都で流行りの学園を舞台にした恋愛小説を読んでいたのだが……
「そんな物よりも、俺は可愛いアンナに触れたいな」
なんて言ってリオンは私をベッドに押し倒し、頬や首筋、唇にキスをする。そのままの流れでリオンの手が私の服の中に入ってくる。少しひんやりとした手が肌に触れるたびにドキドキする気持ちと安心感の両方が与えられる。
「愛してるよ……アンナ」
と彼はそんなことを囁きながら、私を抱きしめてくれる。しばらく私に抱きついていたリオン起き上がると、そのままの流れで私が身に着けていた黒色のネグリジェをあっという間に取ってしまう。私は甘い空気に流されて、気付いた時には朝を迎えていることが多い。
だいたい私の一日はこんな感じになっていて、毎日リオンに甘やかされている。
最初は愛のない政略結婚かと思っていたし、私も別にリオンのことが特別好きなわけでは無かった。でも……こうやって毎日のように愛を囁かれながら暮らしているうちに、単純かもしれないけど――私もリオンのことが好きになっていた。
なのでお母さま……私は今とても愛に満ちあふれた幸せな生活を送っています。確かに王宮で過ごすことに疲れることはあるけど、リオンと二人ならどんな困難にも立ち向かえそうです。




