フロンの冒険・その一
自分がこんなことが起きたら良いなぁと思う事をいろいろ表現していけたらと思います。
少しでも面白いなと思ってもらえたら嬉しいです。
「勇者知らない?」
「はぁ?」
街中、人通りも多い道の真ん中で声をかけられたとんでもなく厳つい顔したおっさんが変な顔になる。
「だから勇者、ここら辺にいないの?勇者?勇者」
「いきなりなんだお前」
「俺、この街初めて来たんだけど優しそうなおっさんがいたからつい、話しかけちゃって」
おっさんの目が怪しい人間を見る目に変わる。厳つさは変わらんが、ほんとうに一般人の顔つきではないな。
「自分で言うのも何だが…俺を優しそうって、お前変わってるな」
「色んな人からよく言われるよ。そんな変わってる感覚は無いんだけど…それに、おっさんが優しそうに見えるのは本当だぞ?」
「ふん…面白いな坊主。気に入った。よし、ついてこい良い店紹介してやるよ」
「やっぱりおっさんいい人だな!」
おっさんについて行き、おっさんおすすめの近くの酒場までつれていって貰う。新参者は吹っ掛けられやすいからいかにもな地元人について行くと良い店行けるんだよな。
街中を少し歩き酒のマークの書いてある店に入る。二階建てのそれなりに大きな建物で中に入ると結構賑わっている。
店に入って迷い無く進むおっさんについて行くと店の奥、壁際の近くに有る席に座る。
「おう、まぁ、そこの正面座れ。…ようこそモッキンの街へ。ここは俺のおすすめの店アンの酒場だ。女将に迷惑かけるんじゃあねえぞ?」
「まさか、親切には親切を帰せって言うのが俺の心情なんでね。迷惑はかけないよ」
「何だが変なやつだなお前…それで、お前この街は初めてって言ってたな?恰好から見て旅人みたいだが…どっから来たんだ?」
「前は南のオルゴールって所にいたんだけど人を探しててね。その人探しに来たんどけど、この街は初めてだな。よかったよ最初にあったのがおっさんで」
「うるせぇ」
おっさんが店員さんにエールを二つ頼む。持ってきてくれたエールを自分と俺の前に置いた。
「オルゴールね。ここよりも随分大きな街だろう?大都市じゃないか。そっから人を探しにね…オルゴールほどでかい街じゃないがそれがさっき言っていた勇者って奴か?」
「そうそうおっさんの知り合いに勇者いる?もしくはモッキンの街に勇者を名乗る奴とか、それともおっさんが勇者?」
「確かに俺は夜は勇敢だが…」
「違う違う誰もおっさんの夜の事情聞いてないし聞きたくないし。こう、自分で勇者です!って名乗ってやつ探してるんだけど…知らない?」
「……知らねぇなそんな変な奴。そもそも勇者ってのは名前じゃあ無いだろう。名前は知らないのか?」
「うーん……分かんない、かな。ずっと勇者って言ってたと思うから」
「それは厳しいな。まぁ急いでる訳じゃないならゆっくりと捜すのも悪くないぞ?オルゴールに比べたら小さいがこの街は酒がうまい」
「……そうだな、しばらくこの街で稼ごうと思うんだけどおっさん良い宿知らない?」
「いつまでもおっさん呼び止めろい。ギムロール、ギルで良いぞ。そうだな昔俺の使っていた安くて良い宿、紹介してやるよ」
「ありがとうギルのおっさん、俺のことはリトって呼んでくれ。それと、もしギルの知り合いに勇者いたら教えて欲しい」
「おう、人の縁は大事にしないとな、ここは俺の奢りだ!飲め飲め!」
俺の前に置いてあるエールを持つように促す。ここら辺の歓迎はどの街でも変わらない。来る者拒まず去る者追わず。
遠慮せずに貰おう。
「ありがとなギルのおっさん」
「遠慮すんなよ?新参者の世話は年長者の役目だ。今日この街に新しい仲間が出来たことを祝おう!」
「「乾杯!」」
そのままエールを10杯以上飲んだところでもう勘弁してくれと泣きが入ったのでやめておいた。
っけ、根性なしめ。
「じゃあ待たな!ギルのおっさん」
「おう!もう奢らねぇからな!あと宿間違えんなよ!」
「ありがとう!間違えねぇよ!」
酒場でギルのおっさんと別れ、外に出るともう日が沈みかけ暗くなってきた。そんなに長い間飲んでたわけではないが飲み始めたのが遅かったからな。
酒場の外…道のど真ん中で男の子がたっている。
ずっと待ってたみたいだ。
「兄ちゃん、随分楽しんでたみたいだね………ぼ、く、を置いてって」
「ア、アルト。待ってたのか」
「僕を放っておいてお酒ですか?随分と良いご身分だね。楽しかったんですね~よかったですね~」
「いやいやいや違う違う!ホントに違うんだって!」
酒場の外には弟のアルトが立っていた。かなりご立腹の様子でこちらを見つめる目線も冷たい。いや、放って置いた俺が悪いんだけど…。
「へぇ、何が違うの?酒飲みリトさん」
「敬語やめろよ…。えーほら!お前が探してる勇者!勇者の情報収集をだな!」
「勇者?あぁ…」
「そうだよ!この街に勇者がいるかも知れないだろう?だから勇者の知り合いとかいないかな~って」
「お酒をたくさん飲む必要あるんだ?」
「そりゃ奢ってもらえたし……」
俺の発言にどんどんと険悪な雰囲気を出すアルト。周りの人たちも俺を見てなんだこいつ、と言った顔をする。
完全に悪目立ちしてるし…。
「ギルさんは知らなかったでしょ?あそこまで飲む必要あったのかしら?」
「うぐ」
「あーあ、こんな暗い中ずっと待ってたんだけどなぁ~」
「うぅ」
「………っふ、あははははは!」
下を向いてぐぅの根も出ない俺を見て大笑いするアルト。
「すいませんでした」
「あははははは!ひぃーっ!くふふふふ!」
「反省しております」
「けほっ、ごほっ、うぇっ!ひっひっひっひ!」
「笑いすぎだろ」
腹を抱えて笑ってるアルト。その姿を見てるとだんだんいつもみたいにこっちまで幸せな気持ちになる。はー、好き。
「いやー、ごめんごめん。兄ちゃんが沈んでる姿って何でこんなに面白いんだろうね」
「…俺は面白くないっての」
「そもそもそんなに怒ってないから、ほら、元気出して」
「そもそも落ち込んでないし」
「くふふふふ!意地っ張りめ」
「お互い様だろ」
お互い顔を合わせてにやりと笑う。いつもそうだった。アルトとはどんな喧嘩したって最後には二人で笑ってたんだった。
「ほらほら、ギルさんから紹介して貰った宿に行こうか」
「しばらくはこの街で稼ぐか。勇者も探したいし」
「そーだね、……勇者、別に良いんじゃない?」
「そういうわけにも如何だろ?それに勇者探しはアルトから言い出したんだぞ?今度一緒に酒場にいくか?」
「お酒飲まないからやーだ、ほら、手」
「ん、ほい」
手をつないで宿を目指す。故郷を出て勇者を探してはや三年。手がかりはまだない。
モッキンの街に滞在し始めて一ヶ月後、生活基盤も安定してきたけど勇者に関する情報はあんまり集まっていない。
何時ものようにアンの酒場で酒を飲んでいると酒場の中を小さな体が飛ぶ。
パシッ!
ヒュンッ…ガシャン!
「……っうぅ、何しやがる!」
そのまま小さな体は酒場の隅に積んである箱に突っ込み箱を崩した。
飛ばされた本人は飛ばされた痛みより飛ばされたこと自体に腹を立てているようだった。
騒ぎを察して周りで飲んでいた連中も盛り上がる。ケンカは珍しいことじゃない二日に三回はケンカを見る。
「なんど?ケンカかぁ?」レグルスぅ!ガキ相手にマジになるんじゃねえぞ?」よし、レグルスにエールをかけるぜ!」なら俺はガキだ!吹っ飛ばされてあの担架は根性あるぜ!」
「…頑丈だね、あの子供」
「そうだな」
「ねぇねぇ、もっと近づいて見ようよ!」
「断る。俺にはこの最後の一口を大事に味わう仕事が残ってる。アンおばさんの手間と愛がこもってるだよ」
「僕は食べてないから分からないし」
アルトが隣に座ってブツブツ文句を言ってくるせいで食事に集中できん。最後の一口こそが至高です。
「うるさいからお前も静かにしてろよ」
「つまんなーいの、お、立ち上がったよ!ほらほら!」
「うるさいなぁ、今考え事中なんだよ」
「いいぞ!そこだ!噛み付け!……ホントに噛み付いたよ…」
テーブルでエールをすすりながら明日の予定を考える。
この街に滞在して約一ヶ月、知り合いはたくさん出来たけど勇者に繋がる情報は無し。
結局ここにも何にも手がかりがなかったし、そろそろこの街から出て行こうか。
「こんのっ噛み付くな!」
「ぐぅ!」
ヒュンっ!ガッシャーン!
「あ」
「……あーあ」
エールのつまみに頼んだちょっと高めのつまみ、その最後の一口が……。
さっきまでつまみの乗っていたテーブルには代わりに飛ばされてきた子供が乗ってる。
……俺のつまみが。
「いい加減にしろ!何度も言わせるな!お前は、もうこのパーティーには必要ない」
「だから何でだよ!俺が何をしたんだよ!」
「何もしてないからだ。……お前がいても居なくても俺たちパーティーの稼ぎも、安全性も、安定感も変わらない。むしろ…あぁ、だから俺から言いたくなかったんだよ」
「これは俺だけじゃない。パーティー全体の総意だ」
「………ジルバも?」
「……そうだ」
「…………」
「……宿はまだしばらく取ってある。荷物をまとめておけ。お前は家族がいるんだろう?そもそもお前のような子供をパーティーに入れること自体反対だったんだよ」
「…くぅ」
ガシャン
俯く子供の足下におそらく金の入った袋が置かれる。ここ俺のテーブル何だけど、あの袋結構重そうだな…。
「兄ちゃん、悪い顔してるよ」
「してねぇよ」
「お前は今までよく頑張った。けど、お前は………向いていない」
「あ…………」
「じゃあな、なるべく危ないことはすんじゃねぇぞ」
「………」
袋を置いた男はそのまま酒場から出て行く。騒ぎを見ていた周りの連中も飲みに戻る。エールをかけていた連中はエールを奢り合ってる。
いや、ちょっとまて。
「ちょっと待てよ」
「あぁ?」
出て行こうとした男を呼び止める。
「お前、俺の…俺の……つまみを良くも!」
「……!あー、その」
俺の言葉にばつの悪そうな顔をする男。
つまり、自分が悪いことをしたという自覚があるわけだな?
「うわ、また兄ちゃん悪い顔してる」
「せっかくのつまみをダメにされたんだ。しかもこの酒場の一番高いつまみをな、これは償って貰うしかねぇよ」
「すまないな。こちらのもめ事に巻き込んでしまった。エールでいいか?」
俺の言葉に申し訳なさそうな顔をして謝る男。よく見ると滅茶苦茶イケメンだしここで素直に謝るのも非常任好印象だ。
もし俺が女の子だったら惚れていたかもな…だが残念だったな、気の立っている俺に目をつけられたのが運の尽きだ。
「謝罪は良いんだよ。それよりもつまみとエールを奢れ」
「エールは良いけど、さすがにそのつまみは良いだろう?見たところほとんど残ってないし」
男が店員を呼び止めエールを頼む。
「はっあーん?こちとらこのつまみに命かけてるんだぞ?お前、それを滅茶苦茶にしてエールだけで済まそうって考えかぁあ?」
「いや、だからなぁ」
ヒソヒソ
「かわいそうにレグルスのやつ『ピエロ』に絡まれてるぞ」「俺はこの前朝までエールを奢らされたぞ」「俺なんかその日の稼ぎをまとめて持ってかれた」「この前道で肩がぶつかった奴に絡んでいたのを見たぞ」「俺なんか」ギルのおっさんは破産しかけたとか……」
周囲でヒソヒソと、騒ぎ出す。それに聞き耳立てながらだんだんと目の前の男の顔色が悪くなる。
「き、君があの『ピエロ』か」
「あ?ピエロだが何だが知らないけどさっさとエールを出せ、つまみをだせこのやろう」
「…想像以上だな」
「ほらほらほらほらほらほら」
「………最悪だ」
「ほらほらほらほらほらほらほらほらぁ」
「おかえりー兄ちゃん……うわ」
「何だよ」
「その両手に下がった肉は?」
「戦利品」
俺はレグルスからせしめた戦利品を手に戻る。予期せぬつまみの追加にほくほくだ。
「はぁ、僕、ホントに兄ちゃんの育て方間違えたと思うよう」
「それよりもこいつ、いつまで俺達のテーブルの上にいるんだ?」
「……さぁ」
残されたままテーブルの上に胡座をかいて下を向く子供、俺がテーブルを変えれば良いんだけど、このままにしとくのも悪い気がするし。
「肉貰ったしなぁ」
「貰ったんじゃなくて奪ったんだろ」
「うるさい」
「ほらほら、声かけたら?このままにしとくわけにもいかないでしょ?」
「……」
「変わりに声かけようか?」
「……大丈夫、おい、ガキ」
とりあえずエールをガキの足下に置いて声をかける。
「あー、なぁ、おい。聞いてたけど、パーティークビになったって事か?」
「……うるさい」
「気持ちは分かるけど落ち着け、な?」
「お前に何が分かるんだよ」
「いや分からんけどな、終わったことを悩んでも仕方ないだろう?落ち着いて考えてみような」
「お前に……」
「お?」
「お前に関係ないだろ!!」
顔を上げて怒鳴る。まだまだ子供の顔つきだな。年の頃は二桁届くか届かないくらいか、体つきも肉のついていない華奢で手足も細く筋肉もついていない。少し汚れてるけど磨けば光りそうだ。
「僕と身長はあんまり変わらないね。でも僕の方が足は速そうだね兄ちゃん」
「お前いい加減人を見てまず足の早さを考える癖を止めろ」
「それよりどうする?逆ギレされてるよ?」
「わかってるよ」
アルトと話してる間もこちらをにらみつけてくる子供。あんまり子供から睨まれる事は好きじゃない。
「お前に僕の何が分かるんだよ……」
「泣くな泣くな。まずは俺のテーブルから降りてくれ。せっかくのつまみがもったいない」
「あ…ご、ごめんなさい」
…ちゃんと謝れるじゃないか。
「ごめんなさい。落ち着きました」
「そうか、よかったよ。」
「あの、変わりにここは支払います!」
「いいよ、子供に払わせるほど貧乏じゃない」
テーブルから降りて貰い隣に座って貰う。少し落ち着いたようで改めてまずは自己紹介から。
「俺のことはリトと呼んでくれ」
「僕はリトの弟でアルト、アルって呼んでちょうだい。兄ちゃん性格クソだから気を付けてね?」
「僕は…僕はのことはフロイト・マロン、フロンって呼んでくれ。よろしくリト」
「さっきまで俺だっのに俺じゃないのか?」
「それは!……なめられないようにと思って」
俺の言葉にとっさに大声をあげる。つまみを持ってきた店員にフロンもエールを頼むが、さっき騒いだせいか店員からの目線が少し冷たい。
「それでフロン、お前はどうしたいんだ?」
「え?」
「見たところパーティーはクビになった。この街に来てどれくらい経つ?一人で稼ぐ当てはあるのか?」
「それは…」
「リト、いきなり厳しいこと言い過ぎじゃない?」
「いいんだよ」
そもそもこの子供に何の思い入れもない。テーブルに突っ込んできたよしみで話を聞くだけだ。
「家族は?」
「……いるお父さん、お母さんと妹が」
「なら、ここにいるべきじゃないだろ家族もきっと心配してるぞ?さっきの男も言ってたけど、俺も子供が危険な目に遭うのは反対だな。そもそもこんな職業はクズかゴミか帰る家もないアホのする事だぞ?」
「……子供扱いするな」
「まだ子供だろうが」
フロンの両膝の上に置いた手に力が入る。絞り出すよな声で呟く。
「……僕は、力をつけないといけない」
「力?」
「自信が欲しいんだ」
「何でだよ」
「家族のためだよ。詳しい理由は言えないけど、力があれば自信も出てくるはずなんだ。だから誰にでも誇れる力が、いる」
…なんかシリアスな空気になってる。困った。今にも泣き出しそうな雰囲気のフロン。隣で見てるアルトが何とかしろと言った目を向けてくる。
「それで、パーティーに入れて貰って自信はついたのか?」
「……僕に出来るとこがないことが分かった。教えて貰っても全然うまくならない」
「誰でも最初はそんなものだろう。それにフロンにはまだまだ時間がある」
「それでも僕は……誇れるものが欲しい!」
『今日から私たちは勇者だね!』
『リトは目が良いからさんぼうしてよ!』
『僕たちがお父さんとお母さんを守るんだ!』
『兄ちゃん!かっこいい!』
…思い出すのはいつかの会話。誰かの姿とフロンが被る。
「なんだか大変そうだな。兄ちゃん、少し手伝ってあげたら?」
「手伝ってって何を?」
「うーん、自信をつけさせてあげる、とか?」
「どうやってだよ…」
「そこは兄ちゃんが考えるんだよ!」
人任せかよ。…でももう放って置けないな。簡単にどけど身の上話まで聞いてしまった以上このままにしておくのは気分が悪いし。
「ねぇ、何ブツブツ言ってるの?」
「あぁ、いや。少し考え事をな…」
「兄ちゃんがお前に自信つけさせてやるってさ」
「俺とお前、ここで会ったのも何かの縁だ。新参者は世話を焼かれてなんぼだろ?フロン、お前明日暇か?」
「あ、うん」
「自信がつくかどうかは知らないが、ちょっと付き合えよ」
「それって……僕とパーティーを組んでくれるってこと?」
さっきまで俯いていたフロンの顔が上がり心なしか期待するような目を向けられる。
「あー、そうなるかな」
「で、でも、僕に出来ることなんてないよ?」
「このまま辛気くさい顔で帰したら俺がスッキリしないってだけだ。子供が遠慮すんな」
「でたよ、兄ちゃんの照れ隠し」
「うるせぇ。お前がどうにかしろって言ったんだろ?それでどうする、フロン?」
「……よろしく、お願いします」
「おう、それじょあ明日の十時にまたここにな」
「うん!」
さっきよりは随分マシな顔つきになったな。子供はいつだって笑ってる姿が一番なんだから。
酒場で支払いを済ませフロンのパーティーの泊まっていた宿まで送る。
パーティーのメンバーはすでに出払っているが七日分は払ってあるそうでしばらく心配はいらないだろう。さすがにあんな大金持ったまま一人で帰らせるわけにも行かなかったしな。
「なぉ兄ちゃん、前のパーティーも手切れ金にしては袋の中多かったな」
アルトもフロンの貰った袋に入っていた手切れ金にしては中身が多い額が気になったようだけど。
「多分、フロンが家族の所に帰る事を望んで多く入れたんじゃないか?後は危ないことをしなくてもしばらくは生活できるようにとか」
「へー、めちゃくちゃいい奴らじゃん」
「そうだな、けど俺たちには関係ないよ」
「…それもそうかフロンが望んでないもんな!」
「そうそう、何事も結局自分が何したいかなんだよ」
「それっぽいこと言ってるし…それで、明日はどうするんだ?」
明日の事、フロンに自信をつけさせる。いや、つけさせなくてもフロン自身がどんな形でも納得出来れば良いんだ。
「明日の俺にまかせるよ」
「うわ、むのう」
「うるせぇ」
その後宿に帰るまでアルトとの言い争いは止まなかった。