第4話
今回短めです
ガコンと心地の良い揺れが止まり閉じていた目を開く。召喚状が届いてから二週間が経ち、私は王都カルディにある王宮に到着した。
「レオリクエス・アリア・ヴァレンタ様でございますね?」
「…あの、失礼ですが貴方は…?」
馬車を降り白く光り輝く王宮の眩しさに目を細めていると初老の男性に声をかけられた。キッチリと整えられた髪と服装、柔らかな物腰は好々爺を思わせるが隙のない立ち振舞いに警戒心を覚えた。
「あぁ…私、この城に務めていまして趣味で歴史学者をしているルドと申します。本日は噂の騎士見たさに案内を承りました。しかし…あの英雄の孫が可愛らしいお嬢様だったとは。」
「失礼致しました。改めてましてレオリクエス・アリア・ヴァレンタです。よろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ失礼しました。職業柄、初めての人から急に話しかけられて警戒しない訳にはいかないでしょう。」
そう言ってホホホと笑う姿に警戒心を解き歩き始めたルドさんの後ろをついて行く。警備に当たっている騎士や通りすがりの使用人たちから挨拶され笑顔で受け答えする姿にそれなりに地位のある人なのだとわかる。
しばらくすると王宮の執務区に入ったらしく文官の証である灰色の制服を纏った人達とすれ違うようになった。黒の軍服を着ている私は多くの視線を集めた。少し気まづい。
「さぁ、着きましたよ。」
そうこうしている間に目的の場所に着いたらしくルドさんから声をかけられた。しかし私の目の前にあるのは重厚感のある扉。謁見の間があるはずの場所と異なるところへ案内され戸惑い気味に彼を見たが何も言わず中へ通されここで待つようにと言って出ていってしまった。
「召喚状で呼ばれたから陛下とは謁見の間で会うことになると思っていたんだけど…」
部屋には誰もおらず呆然と立ち尽くしたまま部屋を見渡す。使い勝手の良さそうなデスクや棚、調度品や応接セットは華美ではないが緻密な装飾がされていて居心地の良い空間だと思った。
…山のように積まれた書類が視界に入らなければ。
高く積み上げられたそれらがどれだけ忙しいのかを物語っている気がする。ここに来るまで見た文官たちも心無しか生気がないように感じていたが気のせいではなかったらしい。
前世の納期明けで死にかけた友人の顔を思い出し心の中で手を合わせた。
その時、慌てた様子で近づいてくる気配を感じ扉の方に目を向けると勢いよく開き…
文官たちよりもさらに酷い顔――最早死相が出ている――男の人が二人入ってきた。