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絶海学園(改稿版)  作者: 浜 タカシ
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第一話

「皆様、ただいま国立太平洋学園国際空港に着陸しました。飛行機が完全に…」


 また新たな一年がはじまる。この学園に入学してから十二回目の春だ。たくさんの春を過ごしてきた。でもこの春は節目の春になる。俺は今日から高等部一年になる。


 「本日も太平洋航空602便にご搭乗いただきましてありがとうございました。皆様良い一日をお過ごしください」

 過ごしてきた十一回の春と何も変わらない、十二回目の春が、平和な春が始まる。そう思っていた…。


~2100年4月8日9:00 国立太平洋学園国際空港到着ロビー~

 俺、山本貴文の通う国立太平洋学園(National Pacific Ocean Campus) 通称NPOCは日本初の国立教育一貫校として2070年に設立された。今年で創立30周年の節目を迎える。

毎年春に全国各地で幼等部の入学者選抜試験が行われ1万人の新入生が入学してくる。よってNPOCは幼等部2年、小等部6年、中等部3年、高等部3年、大学4年、大学院2年の最長20年在学することになる。

俺たちを教え導く教職員は50万人、各層の商業施設で働く従業員は50万人、多くの人間がこのNPOCで暮らしている。


「おーい、貴くん。待ってー」。


あぁーやっぱりNPOCIAはひろいなぁー。あっ、あんなところにそうじろぼっとがすごいな…


「いっったーーーー。何するんだよ優芽」


ものすごい勢いで背中に突進され俺は思わず鈍い声を出してしまった。


「無視した貴君が悪いんですよ。べぇーっだ!」


悪質タックルをお見舞いしつつ可愛い舌を見せてくれているこいつは西郷優芽、幼等部からの幼馴染だ。

新学期早々俺を蹴ってきたバカであるが、こう見えてここの統括学園長つまりトップの娘である。


【国立太平洋学園統括学園長 西郷俊】

 NPOC第二代統括学園長。優芽の父親である。

 NPOCにおいて統括学園長は絶対的な力を持ち教育、政治、軍事などあらゆる物事においてこれの右に出る者はいない。

 また敵国から軍事的攻撃があった場合などNPOCに危機的状況が迫ったときに日本本島や連合国各国に「非常事態宣言」を出せるのは統括学園長のみである。


優芽や親父さんの実家は鹿児島で俺も何度かお邪魔したことがある。鹿児島にいるお袋さんはとても優しくいい人だ。


「今日から高等部かぁ。この間このNPOCに入学したと思ってたのに…そうだぁ!入学祝に一緒に晩御飯食べに行こうよー」


はぁー…優芽の食いしん坊ぶりにも困ったものだなぁ…幼等部のころから食べることには目がない優芽は何かと理由を付けて俺とご飯を食べに行きたがる。


「何食べるんだよ優芽。和食?洋食?それとも中華か?」

「そうだなぁーふわふわの卵焼きおいしいよねぇー、でもパスタもいいよねぇー、あっ!エビチリも捨て難い…」

「結論は一つ、バイキングに行きたいんだろ?」

「えぇ!なんで私の考えてることわかるの?貴君まさかエスパー?」


いやいや和洋中全部たべたい人が何を仰いますか。ここまで情報が出尽くせばバイキングしかないでしょうが…


「長く一緒にいればそのくらいわかる。てか和洋中いっぺんに食べようと思ったらバイキング行くだろ?」

「むぅー。優芽だって貴君のことわかるもん!なんか全部見破ら手てるみたいで悔しいぃ」

「そこ張り合うところか?」


笑ったり怒ったり悔しがったり忙しい奴だな…。まぁこんな奴だけど俺の一番の理解者は何を隠そう優芽だ。

 

~13:00 高等部大講堂~

「続いて、統括学園長式辞」

入学式が始まって早20分。ふぁあーぁ…眠い…どうして何とか式と名がつくものはここまでつまらないのだろうか…。ついウトウトしてしまう…

 俺が今にも優芽の世界に入ろうとしている最中、優芽の親父さんが壇上に上がった。


「式辞、この春の良き日にNPOC高等部に進学・入学したみなにおめでとうと言いたい。さて今年この国立太平洋学園は創立30年の節目を迎える。どうだろうか、30年というと非常に長い日々に感じるかもしれないな。でも君たちはこの学園で20年という月日を過ごす、これも非常に長い日々だ。皆には日々を大切にしてほしい。皆が当たり前だと思ってることは奇跡だ。誰かとした約束は必ず守ってほしい。それが君たち一人一人の未来を切り開くそう思う。私からは以上だ」


約束は必ず守るっか…俺はいつの日かの約束を思い出していた…


「続いて校 キーン 唱」


うっ…何なんだこの音はさっきから頭に突き刺さるキーンキーンというが何度も大講堂に響き渡っている…機器トラブルか何かか?


「ねぇさっきから何なんだろうねこの音…ちょっと気分悪くなってきたかも」

「大丈夫?確かにさっきからきついよねこの音…」


流石に講堂内がざわざわしてきた。結構きついよなこの音…


「貴君…この音結構嫌だねぇー」

「そうだな…機器トラブルか何かか?」

「どうだろうね?」


元気の代名詞である優芽でも流石に気がめいってしまっているようだ。今日のバイキングをしっかり食べれるといいけどな…


「えぇーここで皆さんにお知らせです。この度政府推薦で一名、転入学してまいりましたので、ここで紹介します」

「政府推薦って確かあれだよね。学力・体力ともに優れた善財が選ばれるってやつ、選ばれた人すごいなぁー」

「でも今どき珍しいな。政府推薦って確か10年前に一回あったくらいだろ」

「そうだっけ?でもあの政府推薦の子とっても可愛いねー」


【政府推薦】

 頭脳明晰で学習面、スポーツ面でも超越した善財に与えられる特別推薦枠。

 通常NPOCでは幼等部から大学院まで一貫して教育を行うため毎年4月に行われる幼等部の入学者選抜を受ける以外に入学することはできない。ただし政府推薦のみ例外で多くの厳しい項目をパスしなければ推薦を受けることができない。

 政府推薦はその難しさから30年の歴史の中で4名しか得られたものはいない。


優芽が壇上に上がった転入学生を見て言った。遠目にしか見えないが確かに可愛い気がする。


「た…確かに可愛いかも…」

「あっれぇー、貴君はあぁ言う子が好みなんだ、ふぅーん…そうなんだ…」


あの…ちょっと…優芽さん?何なんですかその冷ややかな眼差しは…ぼくばかだからわからないよ…


「へぇーふぅーんはぁーそうなんですね…はいはい」

「お願いしますよ優芽さん機嫌直してくださいよ」

「なんで私のご機嫌取りするの?あぁいう子が好みなら私のご機嫌取りするんじゃなくてあぁ言う子の一人でもナンパすればいいでしょ?」

「うっ…」


駄目だこりゃ…優芽を怒らせるとちょっと、いや死ぬほど面倒くさい…


「この度政府推薦て高等部に途中編入してきました一ノ瀬明衣と申します。分からないことだらけなのて皆さんにご迷惑をおかけすることが多々あるかもしれませんが暖かい目で見守っていただけると嬉しいてす。よろしくお願いします」

「あの子可愛いねー。私後で話しかけちゃおっと」

「えぇーずるいなぁ、私も一緒に行く!」

「貴君も行ってもいいんだよ。あの子好みなんでしょ」


とほほ…先が思いやられる…



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