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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第六章 桜国編
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98 竜と桜茶



スーっと襖を閉める音、畳を踏みしめる音。そんな音が部屋に小さく響く

マルラは部屋の中央、五十鈴の前に座った


「先に言っとくね。私は竜国に行ったこともないし、竜人(りゅうびと)にも会ったことはないんだ。」


「竜人?」


「竜国にいるものを私が勝手に竜人って呼んでる。竜の姿だけなのかなって思ってたけど、青天君の話を聞いて人の姿にもなれるみたいだから」


「でも、どうしてマゼンダ色の瞳が竜国だって知ってるんですか?」


「私の国、魔国(まこく)にある壁画に竜が(えが)かれてるんだ。

瞳にだけ色がつけられてて、その竜の瞳がマゼンダ色。

でも、描かれてるものは竜の姿だけ


そして、魔国の印章がコレ」


マルラが指をヒョイッと振ると、どこからか小さい象徴板が表れた。

すっと差し出された象徴板を受け取り見てみる


「黒い…竜?」


彫られていたのは黒く塗装された竜


「竜国も竜人にも会ったことがないんですよね? なのに、なんで国の象徴が竜?」


「私にはなにもわからないの…でも、兄さんなら知ってると思う。

壁画についても。私も、二番目の兄のラルト兄さんもわからない」


「魔国と竜国の関連性もわからないんですけど、なんで竜人が森に?」


というか、竜人と魔神は知り合い?魔法国の人はなにも知らないようだし…それに


「この森は昔、国だったって言ってませんでしたっけ?」


この森に来たばかりの時に、そんなことを言ってた事を思い出した。


「曾祖父の時代には居たと父に聞いております」


「祖父も父も、曾祖父に主については聞けなかったようで、当時の主や国についてはなにもわからないのです」


「国どうしも関わりがないから、当時の国についてもわからないか…」


過去に魔神と竜人と関わりがあったのか。それとも、別の理由なのかはわからないけど


「竜国については調べないとですね」


「でも五十鈴はん、竜国も竜人も聞いたことないんやで、どうやって調べるんや?

ドライアドはんも知らんってなると、調べるにも調べられへんよ」


「それなら一度魔国に来てみたら? 兄さん喜ぶと思うし、五十鈴ちゃんに魔国を案内したい!」


前のめりにキラキラした瞳で言うマルラ


「行ってもいいなら行きたいですけど、そんなに簡単に魔国に人を招き入れていいんですか?」


「五十鈴ちゃんなら大丈夫。というか、桜国の皆なら多分大丈夫」


「桜国の皆なら?」


「うん、魔国の大地からは魔気(まき)が出てるみたいで。

私とか、国の悪魔族なら大丈夫だけど。普通の人にはあんまりよくないと思う」


「魔気?」


「負の感情が具現化したものだよ。

普通なら出ないものなんだけど、魔国には昔から漂ってるんだ。

魔国の歴史書に昔は魔国の者達が魔気を出してるって言われてたみたい」


「でも、何で私達は大丈夫なんですか?」


「魔の気を避けてる。皆の周りに弾力がある膜がはってるかんじ。

なんか、バインバイン?してる」


弾力? 魔を避ける弾力…あれ、それって



「「「…ゴムパン」」」



「ゴムパン?」


マルラが何かわからず不思議そうにしているが、その場に居る皆はゴムの感触、鼻を抜けるあの香りを思い出して遠い目をしてしまう


あのゴムパン、食べても魔物避けにはならなかったけど、“魔気"には効くんだね…


「年々強くなってるから、誰も寄せ付けないし誰もでないようにしてるんだ。

だから、入っても大丈夫だよ。五十鈴ちゃんの気に入る食べ物もあると思うな、マートラとかココンとか」


マートラって、トマトのあれですよね?ココンも気になるけど、それよりも



「…うさぎさんの出身国を見つけた」



即、行くとお返事しました。




**********




「これが魔神のつけてた仮面です。そして、仮面の内側の絵柄がこれ」


畳の上には割れた仮面が二つと印刷紙が二枚


「解っていることは、この仮面がユグドラシルの木で出来ていること。

そして、今は消えてるけど裏に印章らしきものが描かれていたこと」


「…印章? ということは、魔神にも国があるってことでしょうか?」


黒桜がそう五十鈴に聞くと、周りも険しそうな表情で仮面を見つめる


「私もそうかなって思ったんですけど、全部色が違う。

仮面の絵柄と魔神の瞳の色が同じなのも気になるんですよね」


じぃっと絵柄を見つめる皆。そんな中、ロロだけがなにか気になることがあるのか熱心に見詰めている


「これ…五十鈴」


「どうしました?ロロ」


五十鈴の腕をぐいぐい引っ張りながら、仮面のかすれた絵柄と魔国の象徴板を指差す。


「ん?…これ」


ロロがなにを伝えたかったのか解って、魔神の絵柄と魔国の象徴板を並べる


「似てる…かすれてて解りにくいけど。青い絵柄の端の曲線、魔国の象徴板に描かれてる竜の翼部分の曲線と一致。

緑の絵柄は竜の尻尾の棘とほぼ同じ」


「ほんとや…」


「魔神と竜国とのつながり、ありましたね」


「魔神は竜人ではないから、魔神の国ってことではなさそうだな」


コン、青天、黒桜が間違い探しの正解を見つけた人のような反応で喋り


「ロロ、お手柄だ」


「偉いです、ロロ」


銀月と五十鈴はロロを撫でまくる


「でもさ、魔国と魔神にも関係があるってことかな?」


スノウの言葉に皆がマルラを見つめる。その視線にマルラがビクリと体を震わせた


「な、なにも知らないよ! 私…」


皆に見つめられ怯えたように体を小さくするマルラに、その場に居た皆がわたわたする


「マルラ、私達はマルラを信じてるし友達だって思ってるから、そんな不安そうな顔しなくても魔神の手先だとか誰も思ってませんよ

今もマルラが怯えたからって飴玉出しまくるし、氷の造形始めてるし。とりあえず皆落ち着け」


そう言いながら、ポケットから出した飴玉の袋をペリペリと開けてマルラの口に放り込む


「ただ心配になっただけですよ、マルラの国が魔神に何かされてるんじゃないかって」


「しん、ぱい?」


きょとんとした顔をするマルラ


「マルラさんのお陰で主様を助けられたんですよ」


「感謝してもしたりないんだ、そんな君の国や家族が魔神に何かされてないかと心配するさ」


「俺なんて、魔神に取り込まれてたからな…」


「魔神に何かされたもんばっかやから、わいらみたいなおもいする人は居ない方がええ」


「マルラは、友達」


「ごめんな、俺の一言で不安にさせたみたいでさ。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。

何かあるなら力になれるかもしれないって思ってさ。友達のマルラが悲しんだり泣いたりするのは嫌だから」


一人の女の子を不安がらせないように喋りかける皆を見て五十鈴は囁いた


(うち)の男性人、素敵すぎやしません? 可愛さと優しさの天元突破」


「その中に五十鈴様も入っていますからね。むしろ、五十鈴様が影響しているような…」


「ドライアドさん、お世辞が上手」


お世辞じゃないとドライアドが言う前に、真っ赤になったマルラが五十鈴に突進してくる


「紳士、紳士しか居ない。桜国は紳士の国だった?」


「よーしよしよし、マルラ落ち着け。目の中ぐるぐるしてますよ。

そして男性陣、飴玉やらお菓子をもって近付かない」


桜国の女性は凛々しいからね。

怯えた女の子見たら優しくしちゃうよね…お陰で不安も怯えも吹き飛んだらしいからいいけどさ


「とりあえず、魔国に行けばなにか解るかもしれませんね」


行ったら行ったで問題に巻き込まれそうな気がするんですよね、経験上


そんなことを考えてると、襖の向こうに気配をかんじてススッと少しだけ開く


「五十鈴様、夕飯の準備が整いました。お話し中だったので声をかけるか迷ったのですが…」


「それで襖の前に居たんですね、教えてくれてありがとうございますアリス

話は一段落したので大丈夫ですよ。夕飯にしましょう」




********




ガヤガヤと楽しげな声が響く食卓。五十鈴はそっと席をはずし縁側に出る


「一人月見酒ならぬ月見桜茶です」


用意しといた桜の花を梅酢と塩で漬けたものとお湯。

さっそくお湯を注ごうとすると、お湯の入った急須をとられる


「わいに淹れさせて」


「コン、夕飯はいいんですか。まだ楽しそうなことになってますけど食べ物争奪戦で」


「五十鈴はんと一緒に食べるご飯が一番好きやからね、お稲荷とチモ茶持ってきたから、五十鈴はんとお月見や

それにしても、このお茶初めて見た。これってお茶なん?」


「お茶の成分はないですよ。

桜の香りと梅の酸味、そしてほんのりと塩味が効いてるお茶です。桜茶でしか味わえない味ですね。

見た目もきれいで好きなんです。コン、お湯を注いでみてください」


そう言われたコンがゆっくりと湯呑みにお湯を注ぐと、ゆっくりと桜の花びらがひらいていく


「綺麗や…」


「桜茶は、お祝い事の時とかに出される、おめでたい象徴のような飲み物なんですよ。

お湯の中で花びらがひらくことは“未来が花ひらく”ととらえられ、縁起をかつぐという願いが込められてるんです。

今日はドライアドさんが桜国に初めて来た日。お祝いですから、ちょうどいいかなと思いまして」


「このお茶、五十鈴はんみたいやね」


「私みたい?」


「五十鈴はんは皆にとって、わいにとって大切でおめでたい象徴や。

“未来が花ひらく”は、五十鈴はんが居てこそやし。

五十鈴はんは桜みたいに綺麗やろ?」


「さらっと恥ずかしい事を言いますよね…いや、皆もけっこう言うわ…」


湯呑みの中の桜とお湯に写る月が揺れる


「それじゃ、私にとっての桜茶は皆ですね。皆が私にとっての大切でおめでたい象徴で“未来が花ひらく”のは皆が居てこそ。

皆が皆、素敵な個性を持ってて綺麗で素敵です」


「それやと、皆が桜茶やね」


「そうですね。この国は“桜”国ですから」


くすくす二人で笑っていると、庭先にふわりと風が流れ込む

コンは一度目を細めたが、五十鈴がなにもしないので気にせずお稲荷さんを食べ始め

五十鈴は庭先を見て笑みを浮かべてからコンが座ってるのとは逆の右側をポンポンと叩いた


「一緒にお月見どうですか?」


「僕も飲んでみたいな、桜茶」



「いいですよ、桜茶でお月見しながらお話ししましょう。

ユグドラシルさん」



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