97 髪様
ドライアドは腕に絡み付く沢山の手に引っ張られるままに桜国に足を踏み入れた
「「「ようこそ、桜国へ!」」」
桜が舞う中、皆で笑顔でドライアドさんを迎え入れる。
桜国に戻ってからの事を簡単に話すと
国に戻ってお弁当を食べてる皆に声をかけたら一緒になって探し始め、桜の木に囲まれた場所にエルフ国の印象を見つけることが出来た。
フィアとリーリエは必死に探してくれたんですが、串刺し肉団子を片手に持ちながら歩いてタレをこぼしていろんな場所にタレが垂れてるので、後々掃除させます。
転送魔法の印象からにょきっと生えてきたドライアドさんの手を私が最初に掴んだら
皆して「柚子の収穫ですね!手伝います」って冗談を言いながら引っ張りあげ。無事にドライアドさんが桜国にはいることができた
「あの、五十鈴様。脳内で説明するのはいいのですが、フィアとリーリエはどうしたのですか、ものすごい顔になっているのですが…」
「ドライアドさんが桜国に来れたことに嬉しさが天元突破したのと、肉団子に付いてたタレが全て無くなってたうえにドライアドさんの腕にベットリとタレを付けた事にショックを受けているのとで、顔がすごい事になってるんだと思います」
しわくちゃの電気鼠みたいな顔をしている、最初の頃よりも表情豊かになったなぁ…
色んな種族と関わるようになったからだろうか?エルフ達と一緒に居るだけだったらこんな風にならなかった気がする
「二人とも、タレを掃除するついでにドライアドさんに桜国を案内してあげてください。
夕飯前に話し合いを始めるので、遅くならないように頼みます。
フィア、リーリエ晩御飯に好きなものを作るから、しわくちゃの顔をいつもみたいな可愛らしい顔にもどしてから行ってくださいね」
その一言で、枯れてた草木に水をあげたかのようにツヤツヤキラキラ顔になるのだから単純である
「五十鈴様は案内をしてくださらないんですか?」
「ちょっと調べたいことがあって…夕飯と温泉は一緒に居れますから」
シュンっと落ち込んでるドライアドをフィアとリーリエがなだめながら連れていく。
護衛としてアイリーンにも行くように頼み、手を振って見送った
「五十鈴はん、話し合いってなんや?」
「ああ、青天達に何があったのが聞こうと思って。魔神についても色々と話をまとめていこうかと」
一人だとこんがらがってきたので
「その話し合い、わいも加わってもええ?」
「元々そのつもりですよ。コンも魔神と色々ありましたからね…。
ロロとスノウも出ていいですから、無言でスカートを引っ張るのを辞めてください。下着が見えそんなんで」
スカートを力一杯引っ張られて、おさえてるところからギチギチと音がなってる。そろそろ破けるから離して
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五十鈴は自分の部屋で魔神の仮面を畳の上に並べて見ていた。
どんなに見ても、ただの仮面。ひっくり返しても、つついても変化無し
「直ぐ消えた絵柄をもう一度見れればなぁ」
『できますよ?』
……なんて?
『五十鈴様が見たものを印刷することが可能です。むしろ皆様のアルバムとか作ってあります。五十鈴様、ONLYアルバム1~5は、私の宝です』
「言えよっ! ナビさんナビさん、いっつも説明が遅いよナビ! それと、私のアルバムって何? 5って何?5冊目?そんなにあるの、ねぇ」
『……さて、魔神の仮面の絵柄をみた時の印刷ですね』
明らかに話をそらしたよ…後で絶対に問いただしてやる
そう決意してると、二枚の紙がペラリと表れる
「あと、エルフ国にあった掠れた転送魔法も印刷してくれますか?」
『はい』
ペラリと出てきた紙と最初の二枚を並べてみる
「仮面のは…一つが青色で何か描かれてて。もう一つの仮面は緑色で何かが描かれてる。…これ、どっちも同じ絵柄っぽい?
たぶん、転送魔法のやつは緑の仮面と同じだ」
掠れてて何が描かれてるのかわからないけど…線らしき部分を合わせると全部が全部、同じものが描かれてる。色は違うけれど
「これが復元できれば絵柄がわかるんですが…」
『さすがに復元は難しいかと、申し訳ありません』
「謝らなくていいですよ、ナビにはいつも助けられてます。時々発言とかあれだけど、ありがとう」
お礼もしっかり言わないとね、いつも助けられてるわけですし
『五十鈴様……めっちゃすこ、一生推します』
「そういうとこだぞ、ナビ」
すことか推しとかどこで覚えたんだよ…。
そんな会話をしてたら、突然部屋前の縁側がチカッと光って
「わわわっ鈴お姉ちゃん!受け止めて!!」
「!?アミル」
突然、桜国のショタ枠が降ってきました。素早く縁側に出てキャッチする
「成功した!!」
「キラキラした瞳をしない!魔法道具を作るのはいいですけど、危ないことは駄目だって言ったでしょうが」
全く反省の色がなし。
キラキラした瞳でガッツポーズをしている。
魔法国から連れ帰ったステラとアミル、この二人には魔法道具を作る才能がありすぎるほどあったらしく。
色々作っては試して爆発させたりしてる。国の皆にも被害が出てるけど、楽しんでるのも現状で。
この前は私の髪がめっちゃ伸びましたよ、平安貴族みたくなってた…皆して切らないでってすがり付いてきて髪を切るのが大変だった…
「アリッサさんがGOって言ったんだよ? 魔法薬とか魔法道具を作るときは「当たって砕けて弾けてドッカーン」って言ってた!」
「砕けて弾けちゃ駄目でしょ。弾け飛ばすのは服だけにして
あの服が弾けるキノコとかアリッサが作ったんじゃないですよね?」
「アリッサのお婆様が作ったって聞いたよ?」
「血筋ぃ、その血の運命だったわ」
手遅れだわ…諦めよう。
そんなことを考えてるとドタドタと廊下を走ってくる音がして
「「アミル!!」」
「もはや痴女だよっっ!!」
バサリとアリッサの体に羽織を巻き付かせる、ソラが急いでフードから出て頭に乗っかった
ステラを腕に抱えた下着姿のアリッサが満面の笑顔で走りよってきたので思わず叫んでしまった…アンガス頑張ってくれよ、桜国じゃなかったらと考えるとゾッとする
「せめてもう少し布面積がある下着を着ましょうよ?ほぼほぼ紐ですよ!」
「窮屈なのって嫌いなのよ」
窮屈じゃない下着を開発するしかねぇ!
「で、今度はどんな魔法道具を作ったんですか」
「これだよ!」
ステラの手のひらに乗ってるのは
黒く丸い瞳
白くはためく布
艶めかしい脚
「メ、メジェドさま」
エジプトで見たことあるビジュアルの人形が四体
「ふふん!鈴お姉ちゃんの髪の毛を混ぜて作ってみたら転送魔法もどきが出来る魔法道具が出来たんだよ。髪には魔力が宿るからね!命名、髪様転送人形。
たまたま出来たから、もう一度作るのは無理だと思う」
毛ってあれかぁ、平安貴族の時の毛かぁ。たしかに髪には神が宿るって言うけれども
「この子は転送魔法を搭載した子でね、アミルの周りに四体囲むように置くでしょ」
「もはや黒魔術みたい」
メジェド様人形がアミルを見つめてる…
「ステラ、アリッサさん。いいよ」
「わかった!」
「まかせて!」
返事と共にアミルの姿が消えて
「うわっと!」
「ナイスキャッチ鈴お姉ちゃん!」
さっきの縁側に落ちてきた時みたいに突然表れるアミルを落ちないように抱える
「メジェド様は転送魔法の陣の役割をしてるんですね?」
「知らない場所には飛ばせないし、飛ばす場所に悪意を持って行くと体がバラけちゃうから悪事には使っちゃ駄目だよ?
発動する相手は飛べないんだ。囲った中の人は飛べるけど物だけとかは飛ばせない。
飛ばす人の量は、発動する人の魔力量なんだ。
一人を飛ばすだけでも結構な魔力を消費するからステラとアリッサさんの魔力を使って飛ばしてもらったんだよ。
今回は近い距離を飛んでるから大丈夫だけど、距離が遠かったり人数が多いと壊れちゃうんだ」
「突然のスプラったを挟んだ説明ありがとう。中の人はなにもしてないって事なんですね。
飛んだのはアミルだけど、ステラが場所を決めて魔力はステラだけだと倒れちゃうからアリッサさんと二人で魔力を使って私の上に転送してるわけだ」
「「さすが鈴お姉ちゃん!突然縁側に表れたのに直ぐにキャッチしてくれて、説明をポンポンしてるのにすぐに理解してくれる!めっちゃ好き!」」
「私も、ちょっとぶっ飛んでる二人が好きですよ。爆発は控えてほしいけど」
くしゃくしゃと頭を撫でとく
「桜国の皆がね、居なくなった五十鈴ちゃんの元に直ぐ行ける物とか作れないかって言われて作ったんだけど、魔力の消費が激しくて実用的ではないわね」
ざんねんって言いながら服を着はじめるアリッサ、返された羽織を着る
「とりあえず鈴お姉ちゃんにあげようかなって、何かの役に立つかもだし」
「お守り代わり!私とアミル、アリッサさんの想いは詰まってるよ」
「なんでこのデザインなのかは聞かないけど、ありがとう」
お礼を言って四体のメジェド様を受けとると、三人は次の魔法道具について語りながら去っていった
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「皆揃いましたね」
五十鈴の前に左右に並び集まったのは、ドライアド、銀月、黒桜、コン、ロロ、スノウ
五十鈴の前、左右を皆に囲まれた位置に青天が座っている
「青天、辛くなったら話さなくていいですからね。」
「大丈夫です、主…では。
あの日はいつも通りの夜でした、当時の黒頭。俺の父は森の警護に出ていたのです。
いつもなら一二時間で帰ってくるのに、その日だけはどれだけ待っても帰ってこなくて。心配になった俺や烏天狗達は探しに行こうとした、そんなときです。
何かに操られるように動きだして、たどり着いた場所に居たのは魔神に石を埋めつけられた父でした」
「じゃあその時には」
「はい…もうすでに魔神の手に烏天狗一族は囚われていました。
ですが、今思い返せばあの結界を作ったのは魔神でも烏天狗一族でもない」
「魔法国ですか?」
「たしかにあの国のものもそうですが、あそこまでの結界を作れるほどではない。もう一種族、魔神の側に居ました」
青天の言葉に全員が驚いた。
魔法国で、魔神、魔法国以外にも結界を張る手伝いをしたものが居たとは聞いたけど、それは烏天狗一族の事だとばっかり思っていたからだ
「どこの種族なのか俺には解らなかった、けど。瞳の色がマゼンダ色だったのは覚えてる」
見たら忘れられなさそうな色…
「どこの国の人でしょうか?コン、獣人国では色んな国から情報が入りますよね、マゼンダ色の瞳の国って聞いたことありますか?」
「はじめて聞く色や」
コンの言葉と共に全員が解らないと首を振ると、襖がすすーっと開いた。全員がそちらを向くと
「マルラ?」
入ってきたのは、いつもの天真爛漫さが嘘のように静かな魔王の妹、マルラ。皆の顔を見つめ、そっと口を開き
「マゼンダ色の瞳は多分竜国だよ」
静かに、そう言った




