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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第六章 桜国編
91/114

91 青天




魔神の腕に滴るドライアドの血、笑みを浮かべながら五十鈴を見詰める



だが、五十鈴は一切焦っていない。

五十鈴にとってこの状況は想定内だったからだ


「ソラ」


五十鈴のその一言で魔神の腕が刺さったドライアドがドロリと水色の液状になる

そのまま地面に落ち、形になったのは可愛らしいスライム。

そのまたスルスルっと五十鈴のフードに収まった


「貴女は世界樹ではなく、ドライアドさんだけを狙っていたみたいですから。対策しないで側を離れたりなんてしませんよ」


「ふふっ、そう……」


そう言った魔神の体は徐々に消えてゆく、怖がりもしない。

受け入れるように笑みを浮かべている


「ロロ、もう隠さなくていいですよ」


「うん」


ロロの返事と共にドライアドが姿をあらわす


ずっと近くにいたけれど感知されないようにしていた。

ロロの黒い球体とソラの力を合わせた空間、ソラの透明化を表面に付けてロロの力でドライアドさんの存在を遮断していた。

声だけは聞こえるようにして、ソラが擬態したドライアドさんのすぐ側に控えてもらっていた


この国の上にある糸も同じような作り。ソラの透明化した体液と魔物の糸、それとドライアドさんの血を合わせて作った網だ


「ほんと、主ちゃんって凄いわねぇ。誰も失わずに助けちゃったか……」


ふふっと笑って彼女は仮面を取る

烏天狗一族を見詰めるその瞳にどこか寂しさを滲ませて

その視線を受けて烏天狗の頭が口を開いた


「……何故、我らを拐ったのですか」


「似てたからよ……その真紅の髪がとても。

私の大切な人と同じ色だった、だから側に置きたくなったの……ごめんなさいね」


魔神の謝罪の言葉に、ドライアドやエルフ等が驚く


「主ちゃん、ううん。五十鈴ちゃん、私の願いを叶えてくれてありがとう。

“家族から刃を向けられても家族だと受け入れる”その心を大切にね」


幸せそうに笑うその顔におもわず手を伸ばすが、彼女はさらりと五十鈴の手をすり抜け消えていく。

残ったのは彼女が持っていた仮面だけ

手に取り見てみると前のときと同じように印章のようなものが(えが)かれていたが、すぐに消えてなくなった


「魔神の願いってなんなんでしょうね……」


「分かりません、私を狙った理由も分からずじまいですから……」


「そうです……ね……」


五十鈴の体がふらりと倒れる


「五十鈴様!?」


「主!!」


「主様!?」


様々な声がするが五十鈴は眠気に逆らえずその声は遮断された




ーーーーーーー




桜国、五十鈴の部屋にて

フィアが五十鈴の狐面を抱いて座っている


「烏天狗一族を一度に眷属にしたため倒れられたようです。呼吸も安定していますし、熱も出ていない。

五十鈴様なら三日ほどで目覚められるかと……」


狐面からするドライアドの言葉にホッとした皆だが、烏天狗一族だけは違った


「俺達のせいで……」


その言葉に黒桜と銀月が頭の頭を叩く、軽く叩いただけなのに畳にめり込んだ。五十鈴が寝ているため誰もつっこまない


「次その言葉を口にしたら土に埋めますからね」


「そうだぞ、主様は家族を守って疲れて寝ているだけだ。むしろ讃えろ」


キリッとしながらそう言う銀月、五十鈴に心酔してることがうかがえる。

それにたいして誰も何も言わないのだから恐ろしい


烏天狗達は埋った頭を上げ。今度はフィアの方、狐面に向け口を開こうとしたが、先に口を開いたのはドラアドの方だった


「烏天狗の頭様、私やエルフ達に対する謝罪は受け付けません」


面の向こうでツンッとそっぽを向くドライアド


「俺達はエルフ国を襲ったことを謝罪すらさせてもらえないのですかっ

操られていたとしても、エルフ国の民を殺めたというのに!」


ドラアドはふっと笑みを浮かべた


「エルフ達からの伝言です。


私達は友人と同じ金の瞳を持った者とは初対面であり、私達が恨んでいるのは黒翼の者達である。

私の友人を泣かせたら承知しないと」


「ですが……っ」


「五十鈴様はエルフ達に


『烏天狗は私の家族だ罪は一緒に背負う

それでも恨みがはらせないなら腕だろうと足だろうと持っていってもかまわない。

でも、命だけは差し出せない。この命は家族達にあげたから』


っといい放ちましたよ。

貴方達がしなければいけないのは謝罪でも死ぬことでもない。

五十鈴様を悲しませず共に生きること。


ただそれだけのこと……

その瞳に恥じぬように生きてください」


ドライアドの言葉に、謝罪の言葉を飲み込み姿勢を正す


「謝罪がダメなら、せめてこれだけは言わせてください……ありがとうございますっ」


烏天狗達は深く頭を下げた、金の瞳から流れる涙はもう、哀しみからではない……



ーーーーーーー


パチリッ


金の瞳が部屋を見回し一言


「え、怖い」


五十鈴の布団を取り囲むようにして烏天狗一族がずらりと並んでいる

皆して隈がすごい、ここはブラックの会社だっただろうか?

いや、桜国はホワイトすぎるほど真っ白な筈だ


今は朝だろうか?

皆うたた寝しているのか、こくりこくりと船をこいでいる

五十鈴は起こすか迷ったが一番近くに居た烏天狗の(かしら)の肩をそっと揺すった。

ゆっくりと開いた左右別の色をした瞳が五十鈴を写した



「……主?」



「寝るなら布団に入った方がいいですよ?」


苦笑しながらそう言うと、彼は素早い動きで入り口の襖をスパーンっと開いた



「主のめがさめたぞぉぉおおおおおお!!!!!」



その言葉と共に様々な場所から様々な音が聞こえる、直ぐにどたばた近付く音。


「地震がおきたのかとおもうぐらいの揺れが起こってて逃げたいのですが……ナビ、どうしましょう」


『受け入れればよろしいのでは?

五十鈴様が気を失ってから三日ですからね、皆様流石に寂しさ限界、ヤンデレ度も上がっていそうです。


それと五十鈴様、おはようございます』


「うん、おはよう。挨拶してる場合じゃないけれど」


次々に部屋に表れる皆を見て笑みが溢れた、ガヤガヤする皆を見てから五十鈴はある一人に瞳を向けた


青天(せいてん)


五十鈴のその一言は、ただ一人に向けられたもの


「ずっと考えてたんです。やっと決まりました、青い空の下を羽ばたける名前。

貴方の名前は青天、どうでしょうか?」


隈が出来た彼は目を見開くが、黒桜と銀月が左右から小突く


「青天か、良い名をもらいましたね」


「桜はこの国の象徴、月は主の瞳の色、天は主そのものだ

やっと三人そろったな」


「青天……。これが俺の名前」


「気に入りませんか?」


「いいえ、ありがたく頂戴します。

主、私共烏天狗一族は生涯をかけあなた様に仕え貴女様と共に」


他の烏天狗達も膝をつく、鬼神と狼族も似たようなことをしたなっと笑ってしまった


「よし、とりあえず」


五十鈴は烏天狗一族以外に向かって口を開いた


「烏天狗一族は隈先輩にとりつかれてます! す巻き隊出動!!」


「「「はっ!!」」」


ノリが良い子達で良かった。烏天狗一族がぐるぐると布団に巻かれていく

皆楽しそうにす巻きにしていく


「睡眠は大事ですよ、何処かの閉まっちゃう系のおじさんになっちゃいますからね」



襖の外から見える空は青空だ。まさに青天、家族が増えて騒がしい日々がまた始まる

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