表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第六章 桜国編
90/114

90 眷属



烏天狗の頭は一歩下がり、五十鈴から距離をとった。瞳からはずっと涙が伝っている、まるで止めかたを知らないかのように


「……俺達は罪をおかしすぎた」


「罪?」


「俺達の手は真っ赤に染まってる……罪のない人々を殺した、あの森の結界もだ……

たとえそれが魔神に操られていたとしても、殺したことには代わりない」


烏天狗一族は優しい性格だと銀月は言っていた。そんな一族だからこそ、罪の意識に囚われている



「俺が死ねば(みな)も死ぬ、(みな)もそれを望みました。

けれど、魔神がそれをさせてはくれなかった……死ねないんですよ、自分では

だから考えました、魔神が死ねば俺達も終われると。

でも、魔神を殺さなくても終われる……貴女は強い


どうかお願いです。俺を殺してくれ。


俺達の罪を終わらせるために」



涙が伝うその顔で悲願してくるその言葉、周りの烏天狗達も同じような表情だ


「俺達の意識があるうちに……」


「意識?」


彼は左の胸の位置の服をはだけさせる。そこにあったのは黒い石、埋め込まれた邪石だ。その周りの皮膚は血管が浮き出て脈打っている


「この石は俺の心臓に埋め込まれている……左の瞳を見ればわかるでしょう? もう限界なんです

まだ俺達の意識はあるが、いつなくなるかわからない。俺は(かしら)だ、この心臓が俺達種族全てと繋がってる。

此れを埋め込まれてから俺達は魔神に従い人々の命を奪ってきた」


後悔、絶望、哀しさ、そんな感情を詰め込んだ瞳。

でも、その瞳にほんの小さな違う感情が見える


「……本音は違うんじゃないんですか、ほんとに死にたいんですか?

私が聞きたいのはそういうことじゃない、私が聞きたいのは黒翼になってからの貴方の言葉じゃない

私が聞きたい言葉は烏天狗としての、黒頭としての貴方の言葉だ


手を伸ばした時、涙を流した時、あなた自身の言葉を私は聞きたい」


月のような光を放つ金の瞳、その瞳が彼を真っ直ぐ見詰める

そんな五十鈴をどこか眩しそうに、諦めを(にじ)ませた瞳で見る


「……ほんと、いい主に出会えたんだな。鬼頭、狼頭」


「ええ、ほんとに」


「これほどの幸せはないと言える」


その言葉を聞いて、彼はぐっと唇を噛む


「俺達が魔神にさらわれ、こんな物を埋め込まれたのに……


それなのにっ


鬼頭、狼頭は貴女の側で貴女を主と呼べるっ

沢山の仲間達に家族と呼べるほどの信頼もあって、俺達が魔神に囚われているのにっ


お前達は主と出会い笑い合い毎日を過ごしているのが羨ましくて羨ましくてしかたない!

なんで魔神に拐われたのが俺達なんだっ


なんで俺は貴女の側に居れなかったんだっ」



吐き出す心は真っ直ぐに五十鈴を射抜く、初めてドライアドにあった日。

あの日に黒翼の者の話を聞いて瞳がうずいたのかわかった気がした


「手を伸ばしたのも涙を流したのも、そして影が私の言葉を聞いたのも。

貴方が私を主として認めているから

ずっと助けを求めてたから……気付かなくてごめんなさい。

遅くなってしまいましたけど、伸ばしたその手を掴ませてください。

家族の涙を拭わせてください


今度は助けを呼ぶ声を聞きのがしません


だから呼んでください、私を」



ずっと泣いて待っていてくれたのかもしれない、瞳がうずいたときに助けを求めていたのかもしれない

伸ばした手を誰も掴んでくれないのはとても寂しい


「……あるじっ」


五十鈴に手を伸ばす、声に出さないが聞こえた助けての声。

伸ばされた手を、五十鈴はしっかりと掴んだ


「やっと掴めました……ナビ!」


《はい》


彼の胸にある邪石は心臓に埋め込まれている、壊しても死ぬのなら壊れないし取り出せない。烏天狗一族は元々桜国の住人だ、多分出来る

壊せないし取り出せないのなら消せばいい


「書き換えること、出来ますよね?」


《はい、「眷属」に出来ます。主との繋り、心と心の繋り。

魔力消費が多く、下手をすると植物状態になる可能性があります》


「上等です、家族を守れなくて何が主ですか」


手を彼の胸の上、邪石に添えるように


「……主?」


「返してもらいますよ、魔神になんて髪の毛一本あげません」


右手に意識を向ける、自分の気を送るように


「いっ」


右手から全身に電流が走るような痛みがする、バカみたいに痛いっ


《邪石と五十鈴様の力が反発しています、彼は全ての烏天狗と繋がっている。

邪石の力は他の皆にも渡っているようです》


ポタリと五十鈴の左目から血が伝う


「主っ、やめてくれ」


「私がここでやめたら誰が貴方達の涙をぬぐうんですか?

家族の涙は家族が止める、罪があるなら私も一緒に背負う


返せ、私の家族をっ!」




パキンッ




「石が、砕けた……」


胸にあった邪石が砕け、浮き出ていた血管も元通りに。

そして


烏天狗全ての左目が金色に、それを見た五十鈴は安心したのか後ろに倒れそうになる


「主よ!」


「主様!」


地面に倒れる前に、鬼桜と銀月が受け止める


「涙、止まりましたね」


「っっ!」


全ての烏天狗が互いの瞳を見詰めている、邪石からも魔神からも解放された。いつの間にか拘束していたものも外されている


五十鈴達はそんな烏天狗達を見て、ずっと言いたかった言葉を口にする



「「「おかえり!」」」



桜国の家出さん達が帰ってきました





ーーーーーー




五十鈴はふらつく体に困っていた


《一気にこれだけの者を眷属にしたのですから、そうなっても仕方ありません。

動ける方が不思議です》


「ゴリラですからね……もう結界がなくなってますね、急がなければ」


ドライアドさん達を守っている結界がもう消えているはずだ。


「ねっっっっむい!」


眠さでふらついた拍子に手をついた石を粉砕する。眠くて眠くてしかたない


「五十鈴はんがご乱心や!」


「落ち着け嬢ちゃん!」


「「眠そうな主様が可愛らしい……」」


《烏天狗一族を一度に眷属にしたために眠気が出ています。

流石です五十鈴様! あれだけの数を眷属にしても眠気だけとは》


植物状態とかにならなくて良かったですけどね、おやすみ三秒前の気分ですよ


「主、私がお運びします」


そう言った鬼桜に抱き上げられた、プリンセスフォールドが恥ずかしいとか考えられないぐらいに眠い……

そのまま走り出す。

全員が世界樹に向かい走り出したどり着いた場所で見たのは月の光に照らされ美しい笑みを浮かべる魔神。


そして、月の光に反射するように光る赤い(しずく)が、ポタリポタリと落ちていく




「あら、主ちゃん。遅かったわね? よかった、願いを叶えられて消える前に()れたわ」




そう言った魔神の右腕は、ドライアドの胸に突き刺さっていた




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ