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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
序章 森の主はじめました。
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09 近侍

昨日の夕食から一夜明け朝日が眩しい清々しい朝。

五十鈴の目の前ではクウとマトンが(しご)かれそうになっている


「クウさんマトンさん、この国の仲間になったのなら大根を片手で握り潰せるぐらいになっていただかないと」


にっこり笑いながら大根を片手で握り潰す黒桜。しっかり桶を置いて大根を無駄にしないようにしているのが立派だ。

だが、潰れた大根を見て二人はすっかり震え上がっている


うん、今日の夕食にすりおろし大根が出そうだ……

それにしても、この国をゴリラパークにでもする気なんだろうか


「狼族も鬼神族も皆出来るからな、お前らも出来るようになってもらわないと」


その言葉に無理だと首を高速で振っている。


「大丈夫です、出来ますよ握り潰すぐらいなら」


「主様のを見れば握り潰すぐらいなら簡単だと思うようになるんじゃないか?」


そう言って五十鈴を見詰める四人


「主、これを」


さっと大根を差し出された。これはあれか、握り潰せと?


「しょうがないですねぇ」


そっと大根を握り一気に力をいれて


パァンッ!


まるで風船が割れたかのような音と共に弾け飛ぶ大根。

黒桜と銀月は瞳を輝かせているが、後ろの二人は今にも気絶しそうだ。

なんかごめん……



昼過ぎにはクウとマトンが獣人国に帰るようで準備をしている


「昨日も見ましたが、米、茶葉、野菜どれもこの国にしか無いものばかりですね。それに美味しいですし」


クウは夕食で食べた和食が気に入ったらしく、朝食もおかわりするほどだ。


「とりあえず、米と茶葉、全部は無理なのでこの二つを今回持ち帰らせてもらいます。」


そう言って鞄にぎゅむぎゅむと詰め込んでいく。


他国に気に入られれば注文依頼が入る、その依頼書を獣人国に持ちかえり記録してから依頼されてる側の国に依頼書を渡し、それを受理して依頼品を配達係が獣人国にもって帰りそれから相手側に届ける。

配達係は平均100㎏までなら持てるらしく、体が大きい配達係なら倍は持てるため、あまりに多い荷物や重い荷物の場合は他の配達係も手伝ってくれるとか


100㎏も持てるなら、大根を片手で握り潰すのも夢じゃないな


「そうだ、五十鈴さん。これを渡すのを忘れてました。」


クウが差し出したのは、小指サイズの小さい笛と根付けの象徴よりも大きい手の平サイズの象徴板。

根付けと違って、板の中心の一面に象徴が彫刻してある。見た目は判子に近い


「こっちの笛は私を呼べる笛です。私にしか聴こえない音が出ますから私達を呼ぶときに使ってください。


こっちの象徴板は印章(いんしょう)です。依頼書を受理する時とかにポンッと押していただければ象徴の絵柄が付くので様々な書類などで使ってください。

国の主だけが持てる物ですから盗難防止もバッチリですので安心して大丈夫ですよ」


御璽(ぎょじみたいなものなのだろう。たぶん


「それじゃあ獣人国に戻りますね」


「世話になった。」


そう言ってまた腰に紐ををくくりつける


「またそれに座るんですか?」


「マトンは緊張とかでも吐き、酔っても吐き。

普通なら荷物が腹側(はらがわ)で補佐が背中に乗るんですけどね……一度背中に吐かれたので」


じと目でマトンを見詰めるがマトンは全力で目をそらしている


「でもなんでこの乗り方に落ち着いたんですか」


「ああ、ただ単にマトンがこの乗り方を気に入ってるからですよ。酔うくせに」


「仕方ないだろ、背中がダメだからってお前が俺の角に紐を巻き付けてぶら下げながら飛ぶから。あの時は命の危機を感じたぞ」


想像するとシュールな光景だ。ブランコと大差ない気がするが言ったらいけない気がする。


「そうだクウ、後々獣人国に行きますので」


「え?五十鈴さん自身がですか?」


「はい、そうですけど?」


何言ってんだこいつ見たいな目で見られてる。失礼だな


「主自ら他の国に行ったものなんて居ませんよ。でもまぁ、五十鈴さんらしくて良いと思います。

主が他国に行く場合、その国の主にまず始めに挨拶しに行ってください。」


五十鈴さんが獣人国に来るのを楽しみにしてます。っと言って飛び上がるクウ


「クウ! マトン! 配達や仕事以外でも来ていいですからね!」


そう言って手を振る五十鈴を見てから獣人国に飛んでいく。

やはりファンタジーではなくファンシーな姿だ



二人が獣人国に帰ってから数日たった。

皆根付けを腰にしっかりと付けている、もちろん五十鈴も。


今の状況を説明するならば、黒桜と銀月が五十鈴の前に正座して座っている。


「近侍、ですか」


「はい」


「俺と黒桜が、ですか」


「はい」


沈黙が続いたが、ツツーッと二人の頬に雫が伝う。


「神よ感謝します。……いいえ、神より主の方が偉大な方、主万歳」


そう言い天を仰ぐ、黒桜


「主様の近侍、常に側に仕える側仕えっ、美しく強く気高く優しさに溢れた主の近侍っ」


ダンッと畳を殴り付けながら恥ずかしい誉め言葉がつらつらと並べられていく。

今までも側にいることが多いのだから今とそんな変わらないだろうに、何故そんなに喜んでいるんだろうか。


「引き受けてくれますか?」


そう聞くと二人は



「「謹んでお受けいたします。」」




二人が近侍を受け入れてからというもの


「主よ、茶をいれましたので飲みましょう」


「主様! 私の体を枕にしてくださっていいですからね!」


「主! 」


「主様!」


なんか前よりも側にいることが多くなった。

それと同時に火花と雪音の右ストレートを兄達にいれようとする姿が恒例行事になりつつある。


「兄様! 主様の近侍になったからとベタベタベタベタしすぎです!」


「?そんなことはないと思うが」


ブンッと火花の拳が振るわれるが全く当たらない。


「兄上もですよ! 主様は女性です! 毎日兄上と一緒だなんて疲れてしまいます! 」


「主様はそんなこと思わないさ、あの方の心はとても広いからな」


雪音の拳もすごい早さで銀月に向かうが当たる気配がない。

そんな兄妹達を見ながら五十鈴はズズズっと茶をすする。


「恒例行事になりつつありますね」


「はい、毎日ですからね」


返事をしたのは朔、五十鈴の隣に正座している。逆側には琥珀。


「飽きないものですかね?」


「飽きませんよ、きっと。だって主様の近侍だなんてとても羨ましいことですから。な、琥珀」


「ああ、俺達は主様の側にいることが何より幸せだと感じますから。頭達ばっかりずるいじゃないですか、そろそろ殴られてもいいと俺は思います。」


そんなもんかっと、五十鈴は何となく二人の頭をくしゃくしゃ撫でる。

真っ赤になった顔が可愛らしいが、黒桜と銀月がすごい形相でこっちを見ている。

朔、琥珀、今すぐ逃げた方がいいかもしれない……


次話で序章が終わる……はずです。

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