80 魔力
箱から出てきた絵本を手に取る
「クレアの大好きだった絵本じゃの……たしか、女の子が愛の魔法で男の子を助ける話だったはずじゃ」
プリンセス系のお話のようだ
パラリと本をめくってみると、オレンジ色の髪をした女の子と桃色の瞳をした男の子が描かれている
「暗い世界にいる男の子は悲しみを知りません、愛も知りません。
ですが女の子は悲しみも愛も全てを知っていました」
本の始まりを読み、パラパラと最後のページまで飛ばす
「女の子のおかげで男の子は悲しみも愛もどちらも大切なものだと知りました。
そして女の子は男の子に愛の魔法ををプレゼントし、男の子はその愛を受け取り知ったのです……
これで終わりですか? なんか中途半端な終わりかたですね」
「この絵本はアイリス様がお書きになったものでの、ルイスの前の主が生まれたばかりだったクレアのオレンジ色の髪を見て、アイリス様のような女性になれるようにと、くださったんじゃよ。
アイリス様もオレンジ色の髪を持った女性だったと言われていたからの。
じゃが、この絵本はアイリス様が最後まで書く前に亡くなっておる」
絵本の女の子もオレンジ色の髪、じゃあこの子はアイリス様か……
「ルイスはその絵本の男の子に似た子なんじゃ。
ルイスは孤児での……母親の愛情を知らずに育ち、愛情も悲しみも分からないんじゃよ
孤児だったルイスを連れてきたのはクレアなんじゃ、ワシは空き家をルイスに与えクレアとルイスは幼馴染みになった」
「愛情も悲しみも知らない、ですか……」
「そうじゃ、前主が亡くなってからルイスの瞳は主の瞳の色、桃色に変わったのじゃよ。
ルイスはこの国の主に選ばれたのじゃ
ルイスは魔法を生み出すのが上手での、様々な魔法アイテムを作っておったのじゃよ人の役に立つものばかり。
じゃが、黒き賢者の書に出逢いそればかりを研究するようになったのじゃ」
「クレアさんは止めようとしたんですか?」
「何度もやめるように言っておったようじゃ」
この楽譜と絵本だけじゃわかりませんか……
「この絵本借りていってもいいですか?」
「よいぞ」
「あとは楽譜ですね、これに全てが書いてあるって言ってたんですよね?」
「そうじゃよ、ワシにはただの楽譜にしか見えんがな。音楽として弾いてもダメじゃった」
楽譜を見つめてもなにもわからない
「クレアさんの部屋に入ってもいいですか?」
「好きに見てくれ、すぐ隣の部屋がクレアの部屋じゃ」
ーーーーーーー
「わぁ、すごい数ですね」
「本の山だな」
「クレア様の部屋に入るのは初めてですが、凄いですね……」
円形の部屋、360℃どこを見ても本の棚
「本が好きな子じゃったからの」
「魔力についての本が多いですね」
「先程の絵本にあった愛の魔法を見付けたかったのじゃよ。
おとぎ話じゃが、クレアはあると信じていたのじゃ、魔法は心で愛だと」
本棚には魔力についての本に絵本等が沢山ある。
円形の棚で、上までで全部で30棚ある。10棚ずつで色が違って可愛らしいデザインだ
「好きに見ててよいぞ、本棚の本は抜いてもすぐに元の位置に戻るようにクレアが魔法をかけていたようでの、机や床に積んであるのは読めるはずじゃ。
ワシはこれから講義での」
シルッドはそう言って部屋から出ていった
「ずっと火薬の臭いがしていたことに恐怖を感じます」
「だな」
最初に会ったときから、うっすらと火薬臭がしていた。ちょっと恐怖だ
気になっていたのだけれど、この国の結界は物理的な攻撃では壊れないんでしょうかね……
《魔力の膜のようなもので出来ているようです。通っても国の内側に戻る仕組みで、殴っても拳が内側に現れるだけかと》
あれを壊さないと私自身も出られないんですけど……そんな風に考えながら机を見てると、気になる本を発見
「 主の魔力?」
五十鈴が不思議そうにしていたからか、レオンが近付いてきた
「魔力の性質ですよ、国の主の魔力は特殊なんです」
「そうなんですか?」
「国に一人しかいない者ですから、どの国の主も持っているのが主の魔力。
主の力が反映するのはその魔力を使っているからだと、言われていますよ」
魔力も色々とあるらしい。
これだけの本、読んでいったら何か分かるかもしれない。
ーーーーーーー
「これは……」
床や机にある魔力の本をかたっぱしから読み続けてあることに気づいた。
この国の人達は、この国に昔から膜が張られそれを疑問にも思っていなかったから気付かなかったことがある事に五十鈴は気付いた
「どうしたんだマスター?」
「何かわかったんですか?」
ユリとレオンが聞いてくる、わかったと言えばわかった
「クレアさんは病気の原因は国を覆う結界が原因だって言ってましたよね」
「シルッドじいさんはそう言ってたな、さっき」
〝あの結界から外に魔力は漏れないようになっとる、他国からは場所も特定できんよ〟
そう言っていた。
本に書いてあったのは、魔法国には常に魔力が充満している、それが普通だと書いてあったから国の中の人は気にしてないみたいですけど
「病気の正体は魔力中毒的なものかもしれません」
「魔力中毒ですか……?」
「この国の中に大量の魔力が漂っている、魔法国だからって事で気にしてなかったみたいですけど。
これって、あの膜のせいで魔力が国の中に溜まってるって事なんじゃないですか?
そのせいで体に影響が出る人が現れたのかもしれません、魔力の量が多く入りちゃんと消化できる人と消化できない人。
私は違和感がないので消化できていると思いますが」
「じゃあ、クレア様は……」
「多分、多くの魔力を消化できない人だと思います。術とか使って魔力を消費しても、国に漂う魔力は変わらないのでまた中毒になる。
まぁ、私の考えが正しければですけど」
そう話してるとガチャリと扉を開いてシルッドが現れた
「本を読んでたようじゃの」
「シルッドさん、講義は終わったんですか?」
「火薬について少し話をしてきただけじゃしの、すぐに終わったわい」
「シルッド様、孤児院にあの病気にかかっている子はいますか?」
「二人ほどいたはずじゃが、どうかしたのか」
「その子達に会ってみれば分かると思います」
ーーーーーーー
学園の中庭の端に孤児院は立っている。
ここの管理クレアがしていたが、亡くなってからはシルッドがしてるらしい。
中に入りシルッドに案内されたのは寝室
「この病気にかかり、手足が上手に動かせなくなってからはベットにずっと寝たきりじゃよ」
二つのベットに寝かされた男女の子供が二人、息があらい
「お姉ちゃん、誰?」
「私は五十鈴、君を苦しめてる悪者を吸い取りに来たんですよ」
五十鈴はそう言って子供の胸に手を置く
「使い方あってるのかわかりませんけど……」
余分な魔力を吸収する、掌に何かが集まる感覚がある
「取れました」
五十鈴の掌には光の玉が出来上がっている。子供は自分の体の変化に気付いたらしい
「……動ける」
体を起こして掌を開いたり閉じたりしている
「当たりみたいですね」
とりあえず……この掌の魔力の玉、どうしよう。




