74 再構築
「人を再構築、ですか?」
人を生み出すではなく?
「ルイスは魔法研究を追求する内に、人や永遠の命を作り出す魔法を研究するようになったんです」
「私は副官でしたが、主の一番近くにいたにもかかわらずお止めできなかった……
主も最初は魔法の研究も人のためになるものばかりを作っておられた。
彼は天才だったのです、彼は魔法でなんでも作り出せました。
そしてある書に出会ってしまった……それが人を再構築し、永遠の命を与える魔法、黒き賢者の書です。」
「その魔法を発動するためにルイスはあらゆる研究をしました……
そして、たどり着いた答えが魔力形成です」
「魔力形成?」
「大量の魔力を凝縮、魔力については分からないことがいまだに多くあります。
魔法国には沢山の魔法書がありますから、それを見てこの答えにたどり着いたようです。
この国の伝説なんです。
魔法国初代主が考えたとされる魔法、この魔法を研究することは昔から禁忌だと言われています。
この魔法は一度民を殺し、再構築して死なない体を生み出すんです。
でも、変わりに感情がなくなる。それはもう、人じゃない
ですがルイスはこの魔法を発動させる気なのです……
発動させて何が起こるか検討もつきませんが、このままだと大変なことが起きるのは間違いないはず」
民を人を、一度殺す……自分の国の?
「そのための魔力が必要になり、捨てられた森と言われていた国の者達から魔力を集めようとしたってことですか……」
鬼神と狼族を苦しめた結界を張った理由がこれですか……
「あの結界を張る手伝いをしたのは、僕達が操られていたからです」
「操られていた?」
「言い訳になるかも知れませんが、結界を張るために魔神が手伝ったと言いましたよね?
主はその魔神と手を組み、魔神の力で僕達を操ったのです。
その時に気付きました、主は何か大変なことをしようとしている事に」
また魔神か……
「魔力形成で出来上がるのは、黒い石だと言われています。
それをどう使うのかはよく分かっていません」
ん?……黒い石? 嫌な予感がするのですが……
「ルイスは主殿に籠り魔力を集め着々と再構築するための準備を整えています。
あの時操られていたのは一部の者達だけ、ルイスの禁忌に気付いていない民の方が多いのです」
「その禁忌に気付いたものが、ここに居る方達ですか」
そう聞くと皆が頷いた。
「魔法国は昔から隠された国ですから、他国に助けなど求められるわけがない。
けれど、ルイスを止めるには魔力を打ち破る力があるものが必要でした」
「だから僕達はあの結界に未来を託したんです。
あの結界を壊せるほどの者が外から隠された魔法国の内側に現れるのを。ルイスを止められる者を」
五十鈴を見詰める沢山の瞳、すがるようなそんな瞳で。
「面倒ごとによく巻き込まれるとは思ってましたけど、あの結界を壊したときから巻き込まれていたんですね……。
一度お祓いに行った方がいいかもしれない」
絶対に何か憑いてますよ。
「民は仲間で家族です」
五十鈴は桜国の者達が心から大事だ。
でも、この国はどうだろうか? 民が悲しげな顔で助けを求めている
その原因が国を守らなければいけない主がしている事のせいだと思うと、同じ主として恥ずかしくなる
獣人国もドワーフ国も、何処の国の主も民を愛していた。けれど、魔法国は違う
国と国が仲良くないこの世界で、他国の者に救いを求めるぐらい追い詰められている
「再構築して甦らせたとしても、民を殺すことにはかわりない……
国の主は民を守るものです、やっていいことじゃありません」
「じゃあ……!」
五十鈴の言葉にリーナの表情が明るくなる
「ルイスが魔力形成をする前に止めに行きましょう。微力ながら私も手伝います」
ルイスを止めて早く桜国に帰らないと、私がいなくなる寸前に見た皆の顔が頭に残って消えない……
ーーーーーーー
「この部屋は僕が作ったんです。ルイスに五十鈴さんの魔力を感知されずに逆転送させるために作った部屋
五十鈴さんを呼ぶために皆の魔力を使ったため、もうほとんど魔力がないんですよ」
ドーナツとポースイのおかげで少しはマシになったが、青白い顔の人達が多い。魔力が減っていたのが原因だったようだ。
逆にチモ草とゴムパンを食べた二人は元気になっている、どちらも栄養素が高いからだろうか?
「窓も入り口もないですね……」
密室って感じだ、明るすぎず暗すぎす。ずっと居たら気が滅入る気がする……
「この部屋の問題点と言えば、魔力吸収する壁で出来てること。
感知されずに逆転送させる部屋を作るには、密室にして魔力吸収の壁の設置が絶対条件なんです。
それと、この部屋に悪戯されたら困るからトラップを設置してあるんです
ですから、一度入ったら私達は出れません。一か八かでしたが、五十鈴さんを無事に呼べて良かった。
ルイスは一週間後に魔力形成をする気ですから、それの前に止めないと」
入ったら出られない、危ない橋を渡ったようだ。私が来なかったらどうする気だったのだろうか……
「この部屋から出ないと何も始まりませんね」
壊すかっと壁に近付くと、皆が焦りだす。何だと思うより先に複数の火の玉が飛んできた
スパン!
ソラと一緒に素早く対処、周りに被害は出させません
「これがトラップですか。壁に近付くと発動するって感じですね。
火球のトラップなんて魔法界っぽくていいですが、今は迷惑きわまりないです。
……それにしても皆さん、何で顎が外れてるんですか? 目まで床に落として」
驚いてますって顔が全面に出ている。そんなに驚くようなことをしただろうか?
これぐらいなら桜国の皆も出来るだろうし……
「え? え? 五十鈴さん今、何を?」
「残像しか見えませんでしたぞ……」
「火球をこのフォンデュフォークで斬っただけですよ? ね、ソラ」
「◎」
「き、斬った? そんな細いもので……?」
「はい、このフォンデュフォークは桜国自慢の職人二人がテンション上げて作ってくれた物で。
熱い食べ物を食べる時用のフォーク、熱を遮断する素材でできてるんです。
食べる時にフォークが熱くて火傷しないように配慮されたフォークなので火球も一刀両断可能なぐらいの熱遮断になってます。
素早く、力強く火球を切り裂けば、一刀両断するうえに風圧で炎も抹消ですよ」
五十鈴の説明にポカーンっとする皆。五十鈴は、ハッとしながらフォークを見付める。
国の者の力強さはゴリラレベルしかいない……普通は出来ないのか……
当たり前すぎて、普通の感覚がなくなってきている
自国がゴリラパークだとすっかり忘れていた……
「……トラップがあるから壁には近付けませんね」
私が大丈夫でも他の皆が危ないし、どうやって壊すか……。
「この部屋の壁全てに近付くと発動するようになってるんですか?」
「え、あ、はい、近付くと絶対に発動します」
「気になってたんですけど、転送魔法が使えるのに何故脱出ができないんですか?」
なにか条件があるのだろうか?
「転送魔法には条件があって。距離、人数、重量により必要な魔力量が変化するんです。
魔力量をとても使うからなかなか出来ません。五十鈴さんをこの場に連れてくるのにも、ここに居る全ての者から魔力を借りて発動させたんです
ここに五十鈴さんを呼ぶために妨害魔法を遮断するにはどうするか考えるのが大変だったんですが、五十鈴様の国は何故か妨害魔法が発動されなかったようで無事に呼べました」
「妨害魔法?」
「はい、転送禁止地帯や転送妨害魔法などで転送できない場所が設定されていることもあります。
国の入り口にある門からは転送妨害魔法が出てるんですが、それにも条件があって。
その国の種族が住んでいるかどうか、例えば獣人国には獣人が、ドワーフ国ならドワーフがっということです。」
ん? 待てよ、それはおかしくないか……
「待ってください、桜国に居る一族は鬼神族と狼族。どちらも居ます。
私がここに転送されたと言うことは、転送妨害魔法がまったく発動してないってことですよね?」
五十鈴がそう聞くと、リーナとアンガスが怪訝そうな表情で口を開く
「鬼神族と狼族だけ、ですか」
なにか間違ったことを言っただろうか……
今度は五十鈴が怪訝そうな顔をすると、アンガスが口を開く。
「五十鈴殿、たしかあの森は三種族が暮らしていたはずですぞ」




