72 フォンデュ!
無事氷宝国とも同盟を組み、チリーズの再売り出しも決まった。
ダリウスの涙と鼻水に見送られながらスノウを連れて桜国に帰ったのだが
「ロロに、友達?」
「友達を連れてきた、だと?」
呆然とロロを見る皆、特に琥珀と朔がプルプルと震えている。
その気持ちはよく解る。そしてずっと言いたかった……
「お赤飯ですよぉおおおおお!!!」
「ワオォォォォオオオン!!」
五十鈴と銀月は氷宝国で叫べなかったロロに友達が出来た喜びを高らかに叫んだ。
全員が張り切って準備を始める。ロロは皆の弟的存在として認識されているため、友達を連れてきたと聞いて喜びが溢れ出ている
「五十鈴の家族って素敵だな」
「自慢の家族ですからね」
「そっか、やっぱいいな」
羨ましそうに皆を見つめるスノウにデコピンを一つ。もちろん手加減して軽くだ
「スノウも私の家族になったんですよ。フローラさんもね」
ノスウの花をこの国にも咲かせると言うことは、フローラさんもこの国の家族になると言うこと。
「私もご飯作りを手伝ってきます」
そう言って立ち去る五十鈴の背中を見つめスノウは思う。
家族と言ってくれる五十鈴のその心が不思議だった。他国の者を受け入れ家族だと言うその心が。
そんなスノウに黒桜が近付く
「私達の主はすごいでしょう?
何故主が他国の者を家族だと言うのか不思議だと言いたげですね」
「五十鈴みたいな人、はじめてみたからさ」
他国の者を簡単に受け入れる、そんな主は存在しないと思っていた。
「家族の輪がこの国にはあるんです。」
「輪?」
「はい、主を中心にした輪。
主の作るその輪は、だんだん大きく繋がっていくんです」
「大きく繋がる?」
「はい、その輪に主は迷いなく手を引きいれて行き、繋げていく
主はその輪が切れないように大事に大切にしてくださる。
主はそういう方なのです、種族が違ってもその輪を繋げ広げる。
あなたも主が繋げた家族なんですよ、私達の輪に入ったんです」
皆幸せそうに暮らしてる、その中に自分も入ったと考えると、心の内が暖かくなる
「やっぱり、五十鈴はすげーよ」
彼女の背中は小さいけど、スノウには大きく見えた
ーーーーーー
歓迎会から数日、とうとう出来上がった。
「冷蔵庫!!」
ドルガドとガッツ、そしてスノウの共同作だ。業務用のサイズなのが驚きだが、よく食べる者ばかりだから丁度いい。
氷でできているがドアを開くための取っ手がちゃんとついている、アンティーク感溢れる取っ手だ。
冷蔵、冷凍、野菜室、良くできている、これで夏を乗り越えられる。
氷宝国との共同作って事にして他国にも売る予定。売る時はもっと小さいサイズにするから配達係りでも運べるだろう。
それともう一つ、待ちに待ったあれも完成した。
「どんな感じに作ったんですか?」
楽しみだと言いたげに五十鈴が聞くが、ドルガドとガッツは頭をかきながら、苦笑いをする
「ちょっと張り切りすぎちまってよ」
「サイズがなぁ、大変なことになっちまった」
そんな二人に見せられたのは二メートルのファウンテンが二つ。
とてつもなく大きい。
「リアルにファウンテンですね、これはこれで楽しめる気がするのでOKです」
むしろこのサイズのフォンデュとか夢がある、お菓子の家なみに楽しみですよ、これ。
このサイズならお腹が別次元に繋がってても直ぐには無くならないでしょうし、皆でフォンデュ祭りでもしましょうか
思いついたら即行動、料理組と一緒にチリーズを大量に砕き、チョコレートも用意。
フォンデュするのは野菜とフルーツだ。お菓子作りの手間が省けた。
でもこれだけじゃ皆のお腹は満足しないだろうから、なにか作らねば……
取り出したのは氷宝国付近にいた牙雪兎、帰りに狩って帰ってきたのだ。
牙雪兎のお肉は鶏肉に良く似ている。
「主様、今日は何をお作りになるのですか?」
火花が見たことのない牙雪兎を見つめる。他の皆も見たことがないようだ
「唐揚げも作りたいところですが、今日作るのはハートチリーズフライです。」
ハートとはささみのこと。鶏肉の胸肉の一部は胸肉の内側にある紡錘形の2本の肉。
ササの葉の形に似ている事からささみと呼ばれているが
牙雪兎にあったささみに似た部位、それが胸部にあるのだが、ハートの形に見えるのでハート肉と呼ぶことにした。
筋とかもなく処理しやすく、調理しやすい。
驚いたのは牙雪兎の牙は鰹節として使える。鑑定スキルがなかったら気付かなかった。
ハート肉を切りわけ、チリーズを巻いていく。
「ソラもやりますか?」
「○」
ソラがにゅっと手を出し、きちんとビニールをつける。
その手でくるくるーっとハート肉とチリーズを巻きはじめた。
ソラは料理を作る手伝いが好きみたいで良く手伝ってくれる。
毎回量が多い、皆ほんとによく食べる。
今巻いてるハート肉巻きも、私一人で100個は余裕で作っているのだから皆の食欲は恐ろしい。
「主様の料理はとても美味しくて、ついついたくさん食べちゃいます」
「わかるわ雪音、主様の味って感じですよね。肉じゃがとかお味噌汁とか」
……おふくろの味か!
確かに皆、料理らしい料理を食べてなかったようだし。この国の味みたいになってるんですかね?
一番得意なのはちくわぶの煮物なんですが、今度作りましょうか
「じゃあ揚げ始めましょうか」
ジュワジュワと揚げられていくハート肉、香ばしい香りがひろがり、皆のお腹が鳴り始める。
外でフォンデュ祭りをすることにした。桜国の中心に広場も作ってあるからそこでやることになり
皆もテーブルを並べたり準備を手伝ってくれている、あとはこのハートチリーズフライを出すだけだ。
楽しみなのか厨の入り口を覗き込む者達がチラホラと。
トーテムポールみたいである。
あとよだれがすごい、早くしないと掃除が大変だ。
手早く揚げ終わり、レタタの上にのせる。レタタはレタスの事、人間国から買ったものだ。
「よし、完成しました!」
大量に盛られたハートチリーズフライ。
130㎝ほど山積みになったフライ達の大皿、それが全部で50皿ある。
大食い大会の会場にしか見えない
二皿をひょいっと持ち上げ広場まで歩く。鬼神も狼族もひょいひょい持ち上げ広場に向かう
広場にはテーブルや小皿などが置かれ、準備万端。ハートチリーズフライの乗ったお皿をテーブルに置き。
二つのファウンテンにチリーズとチョコレートをセットして。
「チリーズとチョコレート流しますよ!」
スイッチようなものをパチリと押すと、二メートルのファウンテンから綺麗に流れ出すチリーズとチョコレートが流れだし、フォンデュ祭りが始まったのである。
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わいわいがやがや、ロロとスノウが囲まれている。
ガッツがチョコフォンデュに夢中だ、手作りのマシュマロは動物の形にしてある。
よく見るとゴリラの形をアイリーンが大量に持っている、愛を感じます
それと、氷宝国から帰ってきてから思ったのだが
「距離が近くありません? 」
「そうなんよ、あれで付き合ってないんや」
「え、あんなに毎日一緒に居るのにですか」
アイリーンの勢いが勝って付き合ってるとばっかり……
あ、ガッツがアイリーンの頭を撫でた。
おお、アイリーンが鼻血を出したがガッツが素早い対応だ。
さては毎回鼻血を出してますね。
「さて、私もフォンデュ!」
「○」
ソラと一緒にフォンデュ用のフォークを構える。
とろとろと流れるチリーズフォンデュをキラキラした目で見ている自覚はある
テンションが上がっている自覚もある!
チョコフォンデュはあとで食べましょう、まずはチーズフォンデュです!
「五十鈴はんが可愛ええ……」
「主様が可愛らしい」
「家の主がこんなに可愛いわけがある……」
五十鈴の姿に悶える者が多数。
「私はじゃがいも、ソラは人参。それでは、チリーズフォンデュにとうにゅ《桜国の者ではない魔力を感知しました》……!?」
ナビの文字と共に、魔方陣が足元に広がる。皆が駆け寄って来るのが見えた。
《逆転送魔法が発動されたようです》
皆が五十鈴に手を伸ばしたが、五十鈴の姿は跡形もなく消え去ったあとだった
「主ぃいいいいいい!」
「いすず、はん?」
五十鈴の名を呼ぶが、そこには誰もいない。




