69 咲く記憶
ノスウの花が咲いているということは、フローラさんの肉体はないが意識が残っているのかもしれない
「氷巨人とフローラさんの魔力は結合していない、分離できれば倒せるって事かもしれません」
「ですが主様、そんなこと出来るのでしょうか?」
銀月の言うと通り、やり方が分からない。
二つを分離されるにはフローラさんの魔力を吸い出す?それは無理だ、他に……
「……魔力を遮断」
氷巨人に吸われたフローラさん魔力だけを遮断できないだろうか?
氷魔法が使えなければ倒せる
首筋からノスウの花が咲いているのなら、あそこにフローラさんの魔力が集まっているということ。
あとは遮断する方法だけだ。あの首筋から氷巨人の全身に巡ったフローラさんの魔力を遮断できれば、ただの動く氷の塊になるはずだ
氷魔法の魔力と動くための動力としている魔力は別なのかは知らないけれど
魔力の遮断は、あの二人なら出来るかもしれない
「でもその前に、魔神の目的を聞きたいところですね」
氷巨人の肩に乗り、こちらを見ている。仮面のせいで表情は一切分からない
魔神は国の壁上を指差し移動した……呼ばれている
「主様、俺も」
「いえ、銀月は氷巨人を皆と止めていてください」
用があるのは私だけのようですから、そう言って五十鈴は走り出した。
壁を走り登っていく、国の壁上は人が立てるぐらいの幅が余裕であるため落ちる心配はない
「私に何のようですか」
チャキリと刀に手をそえる
「ただ話をしたかっただけだよ、そんなに警戒しないでくれ」
そう言って魔神は話を続ける。
「君は魔神をなんだと思う?」
「……さぁ、私にはわかりかねます。でも、何かを求めているように感じますね」
五十鈴の解答に嬉しげに笑う魔神
「そう、だね。私達は願いを見たいのだよ」
「願いを見たい?」
「みんな違う願いなんだけどね、その願いを見れたら魔神は消える。
そして君は、願いを見せてくれるだろうね」
願いを叶えるではなく、願いを見る?
「それはどういう……」
「そこまでは教えてあげないよ」
そう言って魔神はまた、氷巨人の肩の上に戻っていった。
今回魔神は全く攻撃をしてこない、ただ見ているだけだ。
分からないことが多いが、氷巨人を倒さなければいけないことだけは確かだ。
銀月の攻撃も、ダリウスさん達の攻撃も全く効いていない。
氷騎士も押されぎみだ、私の攻撃も意味をなさなかった。
たぶん今回の勝敗を決めるのはあの二人だ。
「ロロとスノウの所に行かないと」
ーーーーーー
「ロロ、その力凄いな」
スノウが見ているのは、ロロから放たれる黒い球体。氷巨人に叩き込まれ威力抜群だ、直ぐに再生するから爆音だけが響く
「これで、包むと、音、臭い、視界、遮断される。威力も強い」
「すごっ!」
ダークエルフの力に怯えることなく瞳を輝かせるスノウに照れるロロ。
そんな二人の元に五十鈴が降り立つ、その姿を見てスノウが五十鈴に駆け寄る
「五十鈴っ 大丈夫だったか!」
スノウはすぐさま五十鈴の体に怪我がないか全身をペタペタと触る。
容赦なく胸と尻とか触るあたり、ナチュラルにセクハラだ。
「怪我してませんから、女の子の体をペタペタ触らない」
「……うおわぁ!」
何をしていたのか気付いたのか、真っ赤になって両手を上にあげるスノウ
「心配してくれたんですよね、ありがとうございます。
でも、他の子にやったら殴り飛ばされるでしょうから気を付けてください」
特に家の子達とか。私をペタペタ触るだけでも拳が飛ぶかもしれない。
自意識過剰? いいえ、今まさに銀月からの鋭い視線がスノウを射貫いている。
ロロは純粋だから不思議そうな顔だけれど
「スノウ、フローラさんの意識だけがまだ残ってるかもしれません。
彼女の魔力は完全には氷巨人に取り込まれていない」
「姉ちゃんが?」
「はい、だからフローラさんの魔力と氷巨人を分離させれば壊せる。
そこでスノウとロロにやってもらいたいことがあるんです。」
「やってほしいこと?」
「スノウ、フローラさんの魔力を感じることは出来ますか? 」
「そりゃ毎日一緒にいたんだ、出来るよ」
よし、これが出来なければ無理だったけれど出来るのなら大丈夫だ
「ロロとスノウの技を掛け合わせてほしいんです」
「掛け合わせる?」
「スノウの氷でフローラさんの魔力にロロの技を誘導してフローラさんの魔力だけをロロの力で遮断してほしいんです。
ロロの力は外部すべてから遮断しますから」
スノウの氷とロロの遮断する力をを首筋から巡らせ、フローラさんの魔力だけを遮断していく。
遮断出来れば、あとは私が氷巨人を壊せばいい
「二人の息を合わせないと絶対にできません」
少しでもずれれば多分無理だ。
「「やる」」
真っ直ぐと強い眼差しで五十鈴を見る二人。
「なら、頼みました。私は氷巨人の気を引きますから、その内に首の後ろ、ノスウの花から中に巡るようにして入ってください。
完全に遮断されてから私が一気に攻撃を叩き込みます」
ーーーーーーー
五十鈴が氷巨人の気を引きに走り出したのを見送り、スノウとロロは氷巨人の背後に行くために走り出した。
見上げると、確かにノスウの花が咲いている
「あそこか」
「わかり、やすい、ね」
「ここじゃ低すぎる」
そう言ってスノウが地面に手をつけると、二人を持ち上げるように氷が盛り上がる
「これでよく見えるな」
離れているがノスウの花がよく見える。姉の心が目に見えた。
「ロロ、信じてるからな!」
「うん、僕も」
二人は手を前に突きだす。
「俺の力に合わせろ」
「まか、せて」
スノウの手からパキパキと音がなる、ロロの手からも黒い闇が溢れでる
「「闇氷!!」」
氷と闇が絡まりあいながらノウスの花に叩き込まれる。
スノウは意識を集中させながら姉の魔力を凍られていく、それの上からコーティングするようにロロの闇が包む
氷巨人に黒い反転模様が出来始めた
五十鈴は氷巨人の体に出てきた黒い反転模様を見て笑みを浮かべる。
「フローラさんの魔力を確実に遮断でき始めていますね」
増えていく斑点が止まった。氷巨人の氷魔法が発動されない
それを見て五十鈴は壁を蹴り氷巨人の頭の上まで飛び上がる。
「君達の勝ちだよ」
魔神のその言葉と共に、五十鈴は氷巨人の頭を上から容赦なく殴り付けた
弾け飛ぶ氷巨人、飛び散る氷。
宙に放り出された魔神の仮面が割れた。
反転した瞳の色、白目部分が深い青色で黒目部分が白い。
「願いは見れた、〝大切なものをなくしても生きる強さ〟これでやっと、終われる」
ありがとう、桜国の主
「まっ」
そう言って笑った魔神に手を伸ばすが、サラサラと砂になって消えていく
五十鈴が掴めたのは割れてしまった仮面だけ
そのままタンッと地面に足をつける、仮面の内側を見てみると模様があるが。
役目を終えたかのようにすぅっと消えた。
でも、今の模様は……
「国の印章?」
考え込むように仮面を見詰めていると、スノウ達が駆け寄ってくる。
五十鈴は仮面をボックスにしまい三人の方に意識を向ける
「スノウ、ロロ、よくやりました」
「だろ!」
「がんばった!」
くしゃくしゃと二人の頭を撫でていると、視界にオレンジの光が見えた。
キラキラと降り注ぐ氷巨人の欠片が地面に吸い込まれるように落ち、静かに花を咲かせていく
国の中に次々に咲き誇るノスウの花
「……綺麗」
氷で出来ているのに暖かい……
「思い出した」
スノウはノスウの花を見詰めている
「思い出したんだ、姉ちゃんの最後の言葉……」
〝たとえ血の繋がりがなくても私はスノウを愛してる、大切な私の弟。
寂しくないように、きっと私が花を咲かせるから
ねぇ、スノウ
私を姉にしてくれて、ありがとう〟
スノウの瞳から涙が溢れる。それでも笑顔が浮かぶのは五十鈴やロロが居るから、寂しくないから
姉は本当に花を咲かせてくれた、愛してくれた
「俺の方こそ、俺の姉ちゃんになってくれてありがとうっ」




