67 花と弟
あの後、スノウは家に籠り出てこない。
心配になって行ってみたが、返事もしないし玄関のドアを氷で固めて引きこもり中だ。
その日はそっとして置くことにして主殿に戻った。
そして一夜明けた今日、もう一人ダメになっている人物がいる
「ロロ、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ。」
ズウゥゥゥゥンっと落ち込み、体育座りをして全く動かない。
ダークエルフ感が滲み出始めている、相当ショックだったようだ
「……スノウは、友達だ」
「うん」
「スノウ、泣きそう、だった」
そう言うロロの方が泣きそうな顔をしている、そんなロロの頭を撫で。
手を引っ張り立ち上がらせる、そっとしとくのは昨日だけだ。
「じゃ、突撃しますか」
「そうですね、主様」
五十鈴と銀月が良い笑顔で顔を合わせる
「「うちの子と友達になったのなら、私達の家族も同然」」
悲しんでるなら側に居る、泣くなら一人でなんて泣かせない。
「行きますよ、ロロ」
「どこ、に?」
「友達の所ですよ、きっと昨日は色々考えて。今なら落ち着いてるとおもいますから」
五十鈴の言葉に、パァアアっと暗かった空気が明るくなる。
「うん!」
ーーーーーーー
スノウは真実を知り、頭の中がぐちゃぐちゃして仕方なかった。
一日考えて泣いて、いつの間にか日が上ってる。
「ロロに嫌な態度しちまった……嫌われたかな」
初めて出来た友達に酷いことを言ってしまった。きっと五十鈴達も心配してるだろう。
彼女はそういう人だ、国の者を家族だと堂々と言える凄い奴。
血の繋がりなんてきっと関係ないんだろう……
じゃあ俺は?
「姉ちゃんは、俺の事どう思ってたんだろう……。俺の親がしでかしたことで、姉ちゃんの両親は死んだのに。
俺を弟として育ててくれた、血の繋がりもない俺を……
どんな思いだったんだろうな」
俺の親は俺を少しでも愛してくれてたのか?
姉ちゃんは俺をほんとに愛してくれてたのか?
考えれば考えるほど嫌な方に考えてしまう。
気持ちが下がる、涙が出る。
「……姉ちゃん」
ぼやける視界がうっとうしい……
そんなことを考えていると、地響きのような音が近付いてくるのに気付き頭をあげる
ドドドドドドド
「なんの音だ?」
スノウは玄関に近付く音に首をかしげたその瞬間
「「「お邪魔します!!」」」
ドガシャァァアアアアン!
「うおわぁおおう!?」
吹き飛ぶ玄関の扉、氷魔法で厳重に固めたはずなのにあっさりと……
突然の事で変な声が出た。涙が止まったのは必然だ
涙は止まったが心臓が出るかと思ったと、後にスノウは語る
吹き飛んだ玄関の方を見ると五十鈴達がいた。三人で蹴り飛ばして開けたようだ
「……五十鈴」
五十鈴がゆっくりとスノウに近付くが、スノウは俯いて顔を見せないようにする
「見事に目が真っ赤ですね」
まったくとため息を吐きながらスノウの前にしゃがみ、顔を覗き込む
「昨日、ずっと泣いてたんですか?」
「……わけわかんなくなって、気持ちがぐちゃぐちゃして」
泣きそうな顔をするスノウの頭を撫でる。姉がいなくなって、甘えかたも頼ることも出来ないのかもしれない。
「少しはスッキリしましたか」
「……少しだけ」
「昨日沢山泣いて考えたんですよね、なら泣くのはおしまいです。
今日はお姉さんの命日なんでしょう?
きっと悲しい顔をしてるより、笑った顔の方が喜ばれます」
「……昨日ずっと考えてたんだ、姉ちゃんは俺をどう思ってたんだろうって。
血の繋がりのない俺を愛してくれてたのかって……」
瞳を揺らす、初めて会ったときのロロに少し似ていて思わず笑いが出てしまう。
「スノウ、このフローラさんの描いた花。最初に見たとき、少し柑橘系の香りがしてなんでだろうなって思ってたんです。
それで気付きました」
「なにを?」
「フローラさんのスノウに残したメッセージですよ」
そう言って火を用意する、火の上に紙をかざす。それを見てスノウが慌てるがこれでいい。
「何すんだよっ!」
「大丈夫です、燃えませんから」
花言葉と書かれた横に、ゆっくりと文字が浮かび上がる。
「……これ」
「炙り出しです、だから柑橘系の香りがしてたんですね。果物で色を塗ったのかともおもいましたけど、この国には塗料がありますから、変だなと思ってたんですよ。
そしてこれがフローラさんの気持ちです」
浮かび上がった文字、花言葉:弟愛
そして、花の名前はノスウ花。スノウの名前を並べ替えてつけた名前。
「スノウはちゃんと愛されてましたよ」
炙り出しされた紙を見詰め動かないスノウ、花の絵を撫でながら口を開く
「……俺、昔から暗闇が嫌いだったんだ。暗闇ってさ、なんか一人みたいで怖くて駄目なんだ。
姉ちゃん以外に仲いい人って居ないしさ、家はいつも真っ暗」
「……光る花、きっとスノウが暗闇でも怖くないように作りたかったんでしょうね」
「そうだと、いいな」
真っ赤な目で、笑顔を見せるスノウに安心した。笑顔になったスノウは、ロロに近付き頭を勢いよく下げた。
「ロロ! 昨日はごめんっあんな態度とって、友達なのに」
ロロはそんなスノウの握り込められた両手を上から握る
「僕達は、他人じゃ、ない。僕とスノウは、友達だ」
その言葉に、昨日言ってしまった言葉を思い出す。
〝触るなっ! 他人のお前になだめられたくないっ 姉をなくしたのは同じでも、俺は……っ〟
スノウはぐっと目尻に力を入れる、数日しかまだ一緒にいない。
だけど、ロロは友達だと言ってくれる。他人じゃないと言ってくれるのだ。
五十鈴も銀月も、皆が心配してくれる。
「おう、俺達〝友達〟だもんな!」
姉ちゃんが居なくなって寂しかった枯れた心に、新しい芽が生えた。
ーーーーー
スノウを家から連れ出して、氷巨人祭りの会場に向かい歩き出したのだが
ブブブブブブッ
まるでケータイのバイブ音むたいな音が響く、音の出所はすぐ側だ
「ロロがめっちゃ震えてるんですけどっ、」
残像が見えるぐらいの揺れだ
「さむ、い」
確かに気温が一気に下がっている、自分自身も震えが出てくるぐらいに寒い
「おかしい、国の中がこんなに寒くなるなんて」
「息が真っ白ですね……」
はぁーっと出した息は真っ白、ソラも背中で震えている。
「多分祭りをやる広場に主がいるだろうから、早く行こう」
そう言って走り出そうとしたその時、氷宝国の壁が突然吹き飛んだ
ズドォオオオオオオオン
風圧で雪が舞い上がり、視界が悪く何があったのか見えない。
「氷、巨人」
「え?」
スノウの囁きを聞き、壊れた壁の方を見ると60mはあるだろう氷で出来た巨人が立っていた。
氷巨人の現れた場所には氷の剣山が出来ている
ダリウスさんは砕けたと聞いた、それに氷巨人は氷魔法を使えないはず……
「というか、どこの進撃ですか!!」
叫びたくもなる
結論! 面倒事に巻き込まれたようですっ




