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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第四章 氷宝国編
61/114

61 甘い

ボキッ、バキッ


そんな音が響くキッチン、五十鈴は休むことなく手を動かし続けていた


「涙が入ってもあれですし」


何だかんだと五十鈴は動じなかった、涙がなんだ顔がなんだ。

食材は食材だ、しかも美味しい食材。

五十鈴は慈悲もなく、ゴリラの力でチリーズの頭と体をバッキリと折る作業をしている。

チリーズ達は折られる仲間を見て気絶したのか動かなくなったので折りやすい折りやすい。


「さて、削ったり色々しないと」


そう言いつつ片手で握り小さく砕いていく。

意外と固いが温めたらすぐに溶けるらしいので大丈夫だろう


砕いたチリーズをパラパラとピザに乗せ。

ドルガドに作ってもらったパーラーを出す、ピザを窯へ入れる時や取り出す時などに使う先端が平らな棒状の道具だ。

ピザカッターも作ってもらった。ドワーフ作だから切れ味が凄そうだ


そのあとは流れ作業で焼いて、三人が伸ばした生地に具材を乗せ、また焼くその繰り返しだ。



「できました!」


長かった、100枚は余裕で焼きましたよ……目の前にはピザの山。

こんな数のピザなんて人生で見たことない。


「おいし、そう!」


「すっげーな、こんな食べ物はじめて見た!」


「主様、食べてもよろしいでしょうか」


三人から向けられるキラキラした瞳、勝手に食べ始めないのだから良い子達である。


「それじゃあ、いただきます!」


「「「いただきまーす!!」」」


五十鈴の言葉を聞いて三人は切り分けたピザをそれぞれ手に取り口に運ぶ。

五十鈴はそんな三人を見ながらソラと一緒にゆっくりピザを味わう。


「うまっ!!」


スノウはピザの美味しさに感動している、ロロと銀月はチリーズをみょーんっと伸ばしながらもさもさと食べ進めている。


「五十鈴! これすっげー美味しい! チリーズの美味しさと他の食材の旨さが混ざりあってヤバイ!」


「喜んでもらえたなら良かったですけど、早く食べないと食べられますよ。

この頃私の家族達の胃袋は異次元に繋がりだしてるので」


目の前にはもさもさ止まることなくピザを食べ続ける二人。

それを見てスノウも急いで食べ始める



一時間もしないうちに大量にあったピザを完食。でも満足しないのがロロ達である。


「五十鈴、デザート、は?」


「今日は無しです」


五十鈴の言葉にこの世の終りだとロロ、銀月、ソラが落ち込んでいる。

よくわかっていないスノウは不思議そうにそんな三人を見ているので説明しよう


「いつもは食後のデザートを出しているんです。」


「デザート?」


「甘い食べ物ですよ」


もしかして甘いものを知らないのだろうか? いや、まさか


「ああ! サトゥーラみたいなやつか」


「サトゥーラ?」


「これだよ!」


渡されたのは(てのひら)サイズの雪の結晶、六角形を基本として様々な形がある。


スノウはそれを口に入れ、ゴリゴリとそのまま食べている。


「五十鈴も食べてみろよ」


そう言われ口に入れてみると、とてつもなく甘い。

砂糖とは違う感じの甘さ


「氷砂糖ですか」


「甘いだろ?」


確かに甘いがこれをデザートとは言えない。もしかしてこれしか甘いものを知らないのだろうか


「スノウ、氷宝国で甘い物って言ったら?」


「このサトゥーラだけど?」


氷砂糖だけ!? しかもそのまま食べるだけで終わり? ガッツが聞いたら号泣するだろう……


「スノウにはちゃんとしたスウィーツを食べさせないとですね。

それとロロ、今日デザートがないのは明日とっておきのスウィーツを作るからですよ。街の皆にも食べさせてあげましょう」


とっておきという言葉にロロ達の瞳が輝く。


「それにはスノウの力がいるんですけどね」


「俺?」


「手伝ってくれますか?」


「おう! もちろんだ」


良い返事だ、明日のスウィーツ作りが楽しみになる。

この国の人達の胃袋を掴むチャンスである。


「明日はスウィーツ作りと、この国の散策をするとしますか」


「なら俺が案内してやるよ」


「ほんとですか? じゃあお願いします」


「そういやさ、五十鈴達は何でこの国に来たんだ?」


「冷蔵庫を作っていただこうとおもいまして」


夏が来たら確実に食材から異臭が漂い出す、それを回避するためにこの国に来たのだ。


「冷蔵庫?」


「食材を腐らせないためのものですよ、あの入れものみたいに食材を入れとくものです」


五十鈴が指を向けるのはスノウのキッチンにある氷の入れもの、中には牙雪兎の肉が入っている


「他の国には無いものです。氷石だけじゃ無理があります」


獣人国、ドワーフ国、人間国も氷石だった。どこの国も腐る食材の扱いに困っているようで、今回この国に来たのは他国の食材事情のためでもある。

食材が腐るのももったいないですし、どうにかしないといけない問題だ


「俺達は氷魔法が使えるから気にしてなかったけど、そうなのか」


氷宝国の物は食べ物が暑さで腐るってイメージがないらしい。

まぁ、雪国だし仕方ないけれど。腐ったお肉とか野菜の臭いはえげつない。

昔、夏に冷蔵庫が壊れた時に痛感している、モモ肉が腐って臭いで殺されるかと思った。


「そうなんですよ、回避するにはこの国の氷魔法が一番だと思って来たんです。

スノウ、試しにこれを作ってみてくれませんか?」


ナビに冷蔵庫の製図を出してもらう、もちろん電気を使わない形と開くためのレールやらが書いてあるだけの製図だ。


「なんか面白い形をしてんだな、開くところも沢山あるし」


「作れますか?」


五十鈴がそう聞くと、スノウは紙を見ながら手を前に出す。

パキパキと音がなり始め、一気に形作る


「よし、これでどうだ?」


出来上がったものをじっくり見てみる、見た目は完璧に冷蔵庫だ。

冷蔵、冷凍、野菜室、どれもしっかり開くけれど問題が一つ。


「温度別になってないのが問題ですね」


全部が同じ冷気を帯びている。掴む部分も冷たい、改良すれば使えそうな気がする


「色々と組み合わせれば良いのが出来上がりそうですね、形と動きは完璧です」


「あとは主と相談すれば出来るんじゃねーかな?」


「そうですね、元々相談する予定でしたし。形が出来るのなら可能性はありそうですね」


後々ダリウスさんと相談して冷蔵庫を作るとしよう。

暖石を使って家も作れているのだ、頑張れば冷蔵庫も作れるだろう。


「デザート……」


「主様のお菓子……」


とっておきのスウィーツで誤魔化したけれど駄目ですか、やっぱり


「どれだけ食べたいんですか」


「食後、おやつ、大事」


「主様……」


捨てられた犬みたいな顔をしているこちらを見ている。

どれだけお菓子が食べたいんだ。


「仕方ない、寒い国に行くってなった時に作って持ってきた物を出しますか。スウィーツやお菓子って感じはしませんけど」


そう言って五十鈴がボックスから出したのは竹筒、ガッツとドルガド作の保温竹筒だ。

外側は桜国の竹を使い、内側に保温石を加工してある。

保温石はその名の通り保温してくれる石だ。

加工して使えば、家の壁とかにも使える優れもの

ちなみにこの竹筒、一週間は暖かさが失われない最高傑作。

それを三本ほど出す。


「中身はお汁粉です。スノウもどうぞ」


「お汁粉!」


「主様のお汁粉ですか! あの甘くて暖かく、もちっころが入っている!」


キラキラキラキラものすごい。ちなみに、もちっころはお餅の事だ。

桜国の餅米で作り、もちっころと名前をつけた。



この後、スノウはお汁粉を食べてからサトゥーラに一切手をつけなくなった。



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