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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第四章 氷宝国編
60/114

60 チリーズ

主殿から出て、いつも通り宿屋を探そうとするとスノウに止められた。


「この国には宿屋がないんだ」


「え、そうなんですか?」


「この国に他国の者が来るなんて今回が初めてなんだ、周りは雪だらけだし。

雪山で魔物に襲われたら危ないからな」


宿屋があるとばかり思っていた。

テントとかもないし、鎌倉をつくって寝泊まりするしかないかもしれない。

銀月が暖かいから頑張ればいけるか?

でも、宿屋がない事をこの国の主であるダリウスが教えないなんておかしい、もしや


五十鈴はハッとしてスノウを見ると、どこかそわそわしながら口を開くスノウの姿が



「だからさ、俺の家に泊まってくれよ」


「スノウの、家?」


「おう! 夢だったんだよな、友達を家に呼ぶの!」


わくわくと期待のこもった瞳で五十鈴達を写すスノウ。


ダリウスさんめ、スノウ(みずか)ら友達を家に誘うためにわざわざ宿屋がない事を言わなかったらしい。


断る理由もないのでお願いすることにした。


「じゃあ、氷宝国にいる間はお泊まりさせてもらいますね」


五十鈴の言葉にロロの手を握り跳び跳ね喜ぶスノウ。そんなに喜ばれるとは思わなかった。

ロロにも良い刺激かもしれない、友達は大事だ。

私は性別が女だし、国の主だ。家族だから友達って感じはしない。

スノウと出会えたのは良いことだろう


「銀月、ロロ嬉しそうですね」


「はい、この国に連れてきて正解でしたね」


最初出会ったときよりも、確実に感情が出てきている。

五十鈴と銀月は二人を見詰めて笑みを浮かべた



ーーーーー



「ここが俺の家!」


連れてこられたのは氷で出来た家がポツンと立っている場所。

小さめの可愛らしい家だ。

姉と二人で住んでいたと言っていたので、この大きさで普通だろう。


中に入ると家具は氷じゃない、普通に木製で出来ている。

リビングと部屋が二つほどあり、扉などはなく、どの部屋もオープンだ。

気になるところがあるとすれば


「オレンジ色の花?」


紙に描かれたオレンジ色の花、少し紙から柑橘系の香りがする。

花言葉と書かれた横にはなにも書いていない。

それと沢山のメモ書き等、様々な資料が沢山あること。


「全部姉ちゃんのだよ」


「スノウのお姉さんの?」


この沢山の資料すべてが?


「姉ちゃんって氷魔法の天才だったんだ」


「氷魔法の天才?」


造形が得意とか、強いとかそう言うことだろうか?


「誰よりも氷魔法を使うのが上手だったんだ。

姉ちゃんさ、ずっとオレンジ色に光る氷の花を咲かせたがってた。

花言葉を何にしようか、すっごく迷ってたよ。

この国は寒いから花が咲かないし、一面真っ白で色がないからって」


そう言ってスノウが見るのはオレンジの花が描かれた紙。


「俺達の氷魔法は氷を生み出し形を作る。色がついたり光らせたりってのは出来ないんだ、それと動く氷とかも出せない。

他の魔法道具とか使えばできるだろうけど、純粋な氷魔法で作りたかったみたいでさ。


姉ちゃんは氷魔法は心の魔法だから、暖かい光を灯した氷も作れるんじゃないかって」


「氷魔法は心の魔法……」


「氷魔法は使う者の心を表す、その心ひとつでどんな形にもなる奇跡の魔法だって姉ちゃんは言ってた」


そう言って、スノウは(てのひら)に氷の花を作り出す。


「俺も作れねぇかなって、やってみてるんだけどさ。

形だけで冷たい花しか咲かせられないんだ」


そのままでも綺麗な氷の花。キラキラ光っていて宝石みたいだ。

確かにこの国は花とか木とか色鮮やかなものがない。

氷と雪、一面真っ白で綺麗だけれど淋しい印象を受ける。

スノウが氷の花を見詰めていると、そんな空気を壊すかのように音が響いた


ぐぅぅうううううう


飯をくれと、訴える音。鳴らしている本人は五十鈴を見詰めている


「……ロロ」


「おなか、すいた」


エルフのお腹はどこに行っても通常運転。確かに雪の中歩きまわってお腹も空いてるだろう


「スノウ、キッチンはどこですか」


五十鈴は苦笑しながらスノウにそう言って、ご飯を作ることにした。


「こっち、窯とかもあるから使ってくれ。氷でできてるけどちゃんと焼けるよ。

この国では基本、食材の上にチリーズをのせて一緒に焼いてから食べるんだ」


氷の煉瓦(れんが)で窯が出来ている、不思議な感じだ。


「それとチリーズとか使って良いから」


そう言ってチリーズをドンッとテーブルに置いたスノウ。

待ちに待ったチリーズの登場にテンションが上がるかと思いきや


「想像と違う……」


というか気持ち悪い。これってあれですよね


「マンドレイクですよね、顔が怖いんですけど」


口は氷魔法で塞がれているが、恐怖におののく顔をしている。

色はチーズ、香りもチーズ、見た目はマンドレイク。

非常に気持ち悪い、あと


「微妙に動くんですけどっ 震えてるんですけど!!」


先程からピクピクぶるぶる震えている。

確かに二足歩行のキノコとか出会いましたけど、あれはまだセーフだ、顔とか無かったですし。


「そりゃ生きてるからな」


「生きてるっ!?」


チリーズって生き物なんですか、それとも魔物ですか何なんですか。

五十鈴は手に持ったマンドレイクの顔をじっとみる、ポロリと涙が一つ落ちた


「ス、スノウ。このチリーズ泣いてるんですけど」


「大丈夫だ、調理したら溶ける」


容赦ない、これを調理するには勇気がいる。


「チリーズって、どんな風に実ってるんですか?」


確実に牛乳とかから作ったものではないだろう。じゃなかったら動かないはずだ


「雪の中で実るんだよ、掘り返すと出てくる。雪をどかすと叫ぶからさ、氷魔法で黙らせるんだ。

チリーズの種類によって声とか違ってて面白いんだぜ」


だから口が塞がれてるのか……というか雪の中で実る物なんですね。

この世界ってほんとに不思議です


五十鈴はこの世界の不思議をまた一つ学んだ……


「……やるしかありませんね」


五十鈴はそう言ってボックスを開く。チーズを手に入れたら作ろうと思っていたものは沢山ある


「窯があるなら作るものは決まってます、三人にも手伝ってもらいますからね」


そう言って大量にあるものをテーブルに出した五十鈴。


「必ずやらなきゃダメって訳じゃないですけど、三人とも器用そうですし」




ぐるぐるぐるぐる


いまの状況を説明すると、四人でピザ生地回しをしています。

発酵させてある大量のピザ生地をボックスに叩き込んでいた、あとは伸ばして形を整えるだけにしておいたものだ。


「三人ともやっぱり器用ですね……」


全員見事にピザ生地回しができる、均等に延びた生地が綺麗だ


「たの、しい」


「この生地なんなんだ? すっごく伸びるな」


「何の料理になるのか楽しみです」


三人とも楽しそうに回している。

それにしても、うさぎの着ぐるみさんのお陰で美味しいケチャップとかピザソースとか作れて助かりました。

出会ってから国の入り口にマートラが大量に贈られるようになったんですよね……あのうさぎさん、何者なんでしょうか……


「さて、ソースも塗った。具材も乗せた」


ロロが沢山食べるのでじゃんじゃん焼かなければいけない。

生地は三人に任せて焼いていくとしよう。


ちなみに今回のピザの種類は……じゃが芋醤油バターピザ、魔物狩りに行ったときのキノコ達を合わせたキノコピザ、色んな種類の二足歩行キノコが居たので狩りまくった産物だ。

それと肉の乗ったピザも作りたいので、牙雪兎のピザ。


スノウが狩った魔物だ、鑑定してみたら鶏肉みたいな感じだとわかった。

多分、不味くはならないだろう。

あとはピザに一番大事なあれだ。


「気合いでいける、はず」


人間国では食の神と呼ばれたのだ、並べられこちらを見て涙を流すチリーズ達に負けていられない。


五十鈴は無言でチリーズに手を伸ばした



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