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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
序章 森の主はじめました。
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06 副官とは扱かれるものだ


五十鈴は朝日の眩しさと、左右から来る暑苦しさで目が覚めた。

確認すると可愛らしい顔が二つ


「……どんな状況ですか、これ」


右を見れば銀髪美少女が、左を見れば黒髪美少女が、

しっかりと五十鈴の体に抱きついていた。


「どうしましょう……動けません」


五十鈴がどうしようかと悩んでいると、襖がスパーンッと開かれた


「火花!!」


「雪音!!」


そこにいたのは二人の兄で、部屋の状況を見ると声なき声で叫びをあげた。

二人が居ないことに気付き、急いで部屋に来たらしい。

返事もしてないのにこの二人が勢いよく襖を開けるなんて驚きだ…


兄に起こされて数分後

私の目の前には正座させられる美少女が二人


「火花、兄は怒っているぞ」


「うっ」


瞳をつり上げ見詰める黒桜の気迫に火花が小さくなっていく


「雪音、俺が言いたいことはわかっているな」


「あ、兄上」


逆にこちらは満面の笑みだ。しかし、その瞳は一切笑っていない

雪音はプルプルと震え上がっている


「二人とも落ち着いてください」


まぁまぁっと、二人を落ち着かせようとするが


「落ち着けません! 火花は無断で主の部屋に入り、あまつさえ、あんな、あんな風に密着するなど!うらやまコホンッ (いただ)けませんっ」


「そうです!黒桜の言う通り、雪音ばかりずるいではありませんか!

私ならば狼の姿で主様を包み込むようにして寝れるというのにっ」


二人とも隠しきれない本音が出ている。

銀月の発言は少し魅力的だと思ってしまった。もふもふは狡い……


「兄様はむっつりです!私は女!兄様は男ですっ」


「兄上!少しは本音を隠してください!妹ながらに恥ずかしいですっ」


ぎゃーぎゃーと言い合う兄妹達を放置してナビに話しかける


《お呼びでしょうか?》


ピコンとすぐに現れる文字に笑みが浮かんでしまった。

聞きたいことはただひとつ


枕元にあった汚れ一つない綺麗なセーラー服と黒タイツ。

置いたとすれば確実にナビだと五十鈴は思ったのだ


この本丸には和服が多数置いてあった。

ファンタジー要素のある和服が多くテンションが上がったのは仕方がない。

寝巻きとして今着ているのはその中にあった普通の浴衣。

セーラー服は汚れたので洗わねばと黒いタイツと共に置いたはずだったのだが、朝になると新品のように綺麗になっていたのだから驚いた


《ボックスに入っていた物と交換いたしました》


ボックス!?っと驚く五十鈴に淡々と返事をしていく


《はい、物を収納できるボックスです。五十鈴様のセーラー服は洗い替え出来るほどあります。タイツも同じく》


ボックスについての説明を求めると


《大きいもの小さいもの何でも入ります。入れれば腐りませんし壊れません。》


よく見ると辞書アイコンの横に箱マークアイコンが増えている

昨日はなかったはずだと聞いたが


《……それと、このセーラー服とタイツは特殊使用ですので。暑い日は夏服仕様になり、寒い日は冬服仕様になるため、一年中着れる優れものです。》


さらりと話を逸らされた気がする

そして、なぜそんなにセーラー服を推してくるんだろうか。一年中同じ服装でいろと言いたいのか


《セーラー服萌え……すみません、バグが発生しました。》



完璧にナビの好みだ……



五十鈴はセーラー服を(まと)い、背に刀を紐でくくる。しっかり背なかに刀を背負えたことを確認してから皆を大広間に集めた。

皆の服装が昨日よりもお洒落な和服になっているのがわかる。

各種族で似た服装になっているようだ


「今日から色々と始めていくのでよく聞いてください」


はいっと返事が返ってくるため、小学校の先生になった気分だと五十鈴は思ってしまった。


「まず女性陣には料理を教えますからこっちに集まってください」


五十鈴の言葉にぞろぞろ集まり出す。


「男性陣は私と一度手合わせしますので料理が終わってから始めましょう。それまでは自由に好きなことでもしていてください」


そう言い女性陣を連れて厨に向かった。

昨日の内に畑などから食材は収穫してある。

あとはレシピが必要だ、限られた食材しかないため調べないと少し厳しい


《レシピを印刷しますか?》


もちろん答えはyesだ


それから数時間様々なレシピを見て取り合えず作ってみた。

良かった、見た目は悪いのがあるがダークマター的なものは一つもない。

ホッと胸を撫で下ろしてから料理を口に運ぶ

うん、問題ない味だ。練習すればもっと美味しくなるであろう出来なので食に関してはクリア。

鬼神族は器用なのか料理の見た目も完璧だった。これからが楽しみだ


ある程度教えてから男性陣の方に向かう。


「主!」


「主様!」


いち早く五十鈴の存在に気付いたのはやはりこの二人。他の者もぞろぞろと集まってくる


「皆の力量を知りたいので私と手合わせしてもらいます。他の国に私が出掛けている間に何かあったら困りますからね。鬼神と狼族とはいえ油断は禁物です」


「主自ら手合わせして頂けるなど嬉しく思います。

けれど、主に刃を向けるなど……」


「主様は私達の大切な御方です、手合わせとはいえそんなことは出来ません」


周りの鬼神族、狼族も同じ気持ちなのか首を振り頷いている


立派な忠誠心だが、それでは力量がわからない。ならば


「!?」


黒桜の顔の横スレスレに五十鈴の蹴りが入る。

それなりに本気で蹴ったがギリギリで交わしたようだ。


「手合わせ、お願いしますね!」


そのまま横にいた銀月の顔面めがけて回し蹴りを叩き込むが即座に避けるられる

うん、動体視力に瞬時に動ける瞬発力。合格点


「油断してると吹っ飛びますよ!!」


そう言い地面を強く蹴り、周りの鬼神と狼族の間に飛び()る、そのままの勢いで加減をしながらも蹴散らしていく。

受け身や防御がちゃんと出来ているのは合格点だ


段々と両種族共に反撃をし始めた。彼等は何処か嬉しそうに反撃してきて、それを受け流していく


「背中、がら空きですよっと!」


次々に繰り出される蹴りの嵐


黒桜は刀で、銀月は爪で同時に攻撃を左右から仕掛けたが


ガキンッ


「忘れてませんか?」


鞘と刀で二人の攻撃を受け止める


「初めて会った時と同じだなんて芸がありませんねっ」


あの時と同じように吹き飛ばす五十鈴。

その隙を狙ったかのように二人の青年が五十鈴の懐に入るが


「作戦は良かったですが、足元がお留守ですよ?」


素早くしゃがみこみ足払いをする。


五十鈴は立ち上がると服に付いた砂埃をパンパンっと払い落とす、息を切らしながら地面に倒れ伏す皆を見ると、倒れ伏しながらも何処か嬉しそうな笑みを浮かべている。


二つの種族は散々強いと言われ続けてきた。

怖いと恐ろしいと

だからこそ目の前にいる少女に指一本触れられないことがとても嬉しかったのだ。


自分達よりも遥かに強い相手、仕えるに足る主。これ程嬉しいことはない。


「決めました」


五十鈴はそう言うと最後に懐に飛び込んできた短髪の鬼神族の青年と癖っ毛の狼族の青年を見た


「名前は確か……(さく)琥珀(こはく)でしたよね?」


両一族の者達の名を五十鈴はしっかりと覚えている。


「「は、はい!!」」


呼ばれた二人はバッっと立ち上がり(たたず)まいを正し、ピシッと立った。

まさに直立不動、そんな姿に苦笑してしまう


「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。」


そう言われても主から名を覚えられてただけでも嬉しいのに、名を呼ばれてしまったのだから緊張もする


「二人の冷静な判断と、瞬時に動けたその動きを見て二人には黒桜と銀月が居ないときの指揮をとってほしいんです。

副官、えっと……補佐役として働いてほしいんですが、出来ますか?」


「ふ、副官……」


「俺が頭の補佐役」


恐れ多いと全面から出ている


「他の国に行くときにどうしてもどちらか片方は連れていくことになるでしょうし、両方居ないときもあると思いますから」


駄目でしょうか?っと聞くと二人は主の為だと力強く五十鈴の瞳を見返した


「「やらせてください」」



その返事に嬉しそうにありがとうと言う姿に、主が喜ぶなら副官だろうが補佐役だろうがやってやろうと意気込んだ二人だったが、肩にぽんっと置かれた手に振り返り顔を青ざめた


「朔」


「琥珀」


「「しっかり (しご)いてやるからな 、覚悟しとけ 」」


主の笑顔が見れて嬉しいが、俺達死ぬかもしれないと思った朔と琥珀だった。
































皆 主が大好きなんです。



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