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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
序章 森の主はじめました。
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05 国の方針を決めましょう

鳥居が移動してることに今更ながらに気付いた五十鈴。


本丸の入口から少し離れた入口付近には最初にこの森に来たときの鳥居が立っている。

玄関の顔ですとでも言いたげな佇まいだ。


そんな鳥居をくぐり本丸を間近で見た感想は、本丸と言うか温泉旅館みたいだなというのが本音

玄関は完璧に温泉旅館のような入口だ。広いから団体で入っても問題はなさそうだ


「? 入らないんですか」


五十鈴が本丸の敷居を跨ぐ中、鬼神族も狼族も玄関に一歩も入らず中を覗き込むようにして見ている


「主よ、ここは主の本丸です。私達が入ってもいいのですか?」


黒桜の言葉にきょとんとして皆を見てしまった


「なに言ってるんですか、此から皆もこの建物の中で暮らすんですよ?」


おいでおいでと言うように手招きする五十鈴の姿に恐る恐る足を踏み入れ始める

五十鈴が玄関で靴を脱ぎ揃えてから部屋に入ると、それを見た周りも真似するように履き物を脱いでから入っていく。

ちゃんと履き物を揃える姿は少し笑える

どこをどう見ていったらいいのかわからず、見取り図とか無いだろうかと囁く


《あります、印刷しますか?》


五十鈴の何気ない囁きをしっかりと拾い文字が現れる。

とても優秀だ。

五十鈴は迷いなくyesと答えると、目の前に見取り図が描かれた用紙が三枚現れた。

周りが驚かないのは、主ならば出来てもおかしくないと認識しているためだろう。


一階から三階までの見取り図。見る限り全員余裕をもって暮らせる広さだ。

むしろ旅館とか経営できそうな程に広い

見取り図を見ながら一つずつ見ていく


大浴場に(くりや)、どちらも川から水を汲み上げ使えるようになっている。

水を沸かすのは薪だ。電気と言うものは存在しないため代用品を考えなければならない。

どうにかならないかとナビさんに聞いたら


《魔法道具の作り方も辞書に載っていますが、この国には材料、技術、共に足りません》


との回答をいただいた。

後々他の国について聞く必要があるようだ。


お金についてはこの森に閉じ込められる前に使っていた残りがあるらしく、一文無しではなかった。



一番悲惨なのは食事事情で……


「そういえば、この森の中で何を食べて過ごしていたんですか?」


結界の中に閉じ込められてから作物がないと言っていたなと思い出し聞いてみた


「私達も最初は木の実を食べて過ごしていましたよ」


「最終的に雑草と水で腹を膨らませて過ごしてましたけどね」


「いつの間にか空腹なんて感覚なくなっていましたし」


まさかの回答である、ひもじい……涙が出そうになる五十鈴だが、あることに気付いた


「料理は……」


出来ますかっと聞いてから後悔することになる


「料理? 兄様、料理とはどんなものなのですか?」


「あ、主様。料理ってなんですか? 兄上わかりますか?」


ざわざわと料理について飛び交う会話。

美少女は料理ベタだ……そんな定番は必要ない

ダークマターの道だけは行きたくない……。


作り方を叩き込むしかないと誓った。



二階三階は寝室などの部屋ばかり。

とりあえず女子男子に別れて部屋を使ってもらうことにした。

鬼神と狼族はどう接しあったらいいのか戸惑っているようだが仲はわるくないらしい。


部屋割りを終えて、此からについて話し合う


「この国の方針を発表します。」


そう切り出した五十鈴に皆も背筋を伸ばして耳を傾ける


「他の種族同士とも暮らせる国です。」


五十鈴の発言が予想外だったのか目を見開くものばかりだが、気にせず話を続ける


「種族同士の仲が悪いのは知ってます。でもそれじゃあ意味がない。

この世界には沢山の国があるのに交流はないに等しい。ドワーフの高度な鍛冶や工芸技能、エルフの国の高度な魔法。

国だけに留めておくなんて勿体ないじゃないですか。」


「ですが主よ、国に依頼すれば武器も作ってくれますし、工芸も作ってもらえます。国自体に入国することは禁止されておりませんから、観光もできますよ。

仲は悪いですが、どの国も仕事をちゃんとこなします。

無理に他の国と交友する必要性はあるのでしょうか?」


心底不思議だと言いたそうな顔をする面々に、


「種族同士と言うよりも国同士の仲が悪いんじゃないですか?

様は刷り込みですね。相手の見た目などに惑わされて本質を見落としている。

交友するって意識もないのかも知れないですね。

この世界に問題があるとすれば、国一つ一つが閉鎖的な事です。

相手を見て知ってから好き嫌いを決めてほしいと私は思いますけどね。

鬼神族、狼族、共に恐れられてるって言ってましたけど、あなた達は他の国に何かしたんですか?」


「そんなはずありません! 無意味に傷付ける行為などっ」


「力が強いのは認めますが、それをそんな風に使ったことなどありません!」


他の皆もそんなことはしないと否定していく。

そんな姿を見て五十鈴は笑みを浮かべた


「ほらね、あなた達は力は強いけれど優しい心を持っているじゃないですか。

それを他の国は知らないんですよ。

知ってもらわないと始まらないんです。



ま、はっきり言えば、皆が意味もなく怖がられているのが気に入らないだけなんですけどね。

それに、鬼神族も狼族も仲良くなってるじゃないですか」



五十鈴の言葉に両種族は顔を見合わせる

確かにそうなのだ、話して接してわかった事はお互いの良いとこばかり。

意味もなく(いが)み合う理由も見付からない。

だからこうして同じ主の元、互いに仕えることができている。


「俺達の国が他の種族との交友をする……」


「様々な種族の本質を知る……」


それは考えても見なかった事。この世界の定義を変える事。


五十鈴の言葉を聞いて沸き上がるのは高揚感。

この方の作った国を見てみたいという欲求。

彼等の心に走ったのはこの感情だった。


「主のお心のままに国をお作りください。私達も共に歩むと決めています。」


「「主様が尊過ぎて辛い、どこまでもついていきますっ」」


「俺達の主様は凄いお方だ、この国の行く末が楽しみです」



誰一人反対意見が飛び交うことはなかった。


こうして国の方針は決まったのである。



















まだ他の国には行きませんけどね!

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