48 不味い
よし。ロロ、ソラ帰ろう
脳内でそんな事を喋る五十鈴。
「魔物退治をしてくれてる奴等、通称魔退治部隊がな、ゴーレム倒しまくった主なら頼もしいって言い出してさ。
ゴブリン退治も楽しくできるってさ。
だから一緒にゴブリン退治に行ってくれ」
いやいや、待て。普通他国の主にそれをお願いするか?
いや、しないよ普通は
「他国の主に依頼しますかゴブリン退治を、普通」
「しないな!」
やっぱりしないじゃん! なんで呼んだんだよっ 意味がわからないよっ
人間国怖いんですけど、騎士団長が裸だった時点で普通じゃないけど、もうやだこの国
「魔退治部隊はあんたの強さを見たいんだよ、他の国との交友がなかったはずなのに、あんたは違った。
奴等って自由だからさ、あんたの自由に他国を見て周って自由に交友を持つところに好感が持てたんだろうさ」
そんな風に見られてたのか……どの国でもゴリラ要素で無双していただけなんだけれど……
「仕方ありませんね」
この国に来てしまったんだ、しかたない……交友の場を広げて帰ろう
「奴等も喜ぶよ。頼むぜ五十鈴」
ニッと笑う彼は悪い人ではなさそうだから、まぁいいでしょう
「そうだ、明日は第二騎士団長の婚約パーティがあるんだ、来てくれよな」
「行ってもゴリラ芸しか出来ないんですけど」
「なんだゴリラ芸って、逆に見てみたい。 ま、ただ出るだけでいいから大丈夫だろ」
出席することが決まったなっと考えてると、一人の男性と同い年ぐらいのブロンド髪少女が部屋に入ってきた
「主よ」
にやにや顔で腹が立つ感じの男、ザ・アブラギッシュ!って感じです
「ん? ああ、連れてきてくれたのか」
リンクの言葉と共に、男は連れてきた少女を前に出す。
「私の娘です。汚いのは我慢してください」
汚い? 何をいってるんだこの男は。そう思いながら彼女を見ると、五十鈴から見て左半分の顔を火傷している。
思い出すのはリンクの言葉
『この国では女性は男達の飾りだと思われてるんだ。
見た目の良い女ばかりを連れ歩く』
ふざけてる、はっきり言おうではないか
「とてつもなく可愛いお嬢さんをお持ちですね」
五十鈴の言葉にその場が静まり返る。ニヤニヤしていた男はポカンとしている。リンクは満足気な顔だ
だが、ほんとの事である
「空色の瞳は宝石みたいに綺麗ですし、ブロンドの髪も癖がなくて光輝いていますし。うん、やっぱり凄く可愛らしいです」
口説いてるわけではない、彼女は男前だ。さらりと言えるところが彼女のすごいところだろう。
五十鈴の言葉に彼女は真っ赤になっている
「……正気か」
ぼそりと喋った男の言葉に言い返す五十鈴
「正気かと聞きたいのは私の方ですよ。女を何だと思ってるんですか?
飾りですか? 自分のお人形とでも思ってるんですか?
下らない、人の価値は見た目で決まるんじゃない。
あなたは父親なのに娘の何を見ているんですか」
男は驚いた顔をしている、それとリンクさん爆笑するのやめてください。
「五十鈴、魔退治部隊のリーダーは俺の副官だから仲良くしてやってくれな」
リンクのその言葉を聞いてからロロと少女の手を引いて外に出た。
ーーーーー
「あ、あの。」
手を引いて歩いていた少女が戸惑ったように声を出す
「あ、ごめんなさい。痛かったですよね」
「い、いえ! あの、ありがとうございます」
しっかりお礼も言える、ほんとにさっきの男が父親なのか問い質したくなる。
「そうだ、名前をまだ聞いてませんでしたよね」
「アリス・マグナリアです。五十鈴様」
「様呼びなんてしなくても良いんですよ」
「いえ! 私はずっと五十鈴様を尊敬していたのです。女性でありながら主をしていると聞いてから」
尊敬、そんな事を言われるとは予想外である。
「だから嬉しかったです。あなた様の案内役を任された時は」
「なら、まず始めに宿屋に案内をお願いできますか。アリス」
名前を呼ぶだけで喜ぶ彼女は可愛い、ロロとソラを嫌がる様子もない。
他種族を嫌いではないのかもしれない
「はい、もちろんです!」
宿屋、もちろん下は食事処。
宿屋と何かはセットなのが普通なんだろうか?
「アリスはお昼食べましたか?」
「いえ、まだです」
「じゃあ一緒に食べましょう、ロロのお腹も限界なのかブルドーザーみたいな音が鳴り響いてますし」
もはやお腹の音じゃない
亭主に頼んで食べ物を出してもらう、主食はパンのようだ
「パンにスープにサラダですか」
「この国の主食はパンですから。朝も昼も夜もパンなんですよ」
顎が疲れそうだなっと思った五十鈴だが、そういえばパンはまだ作っていないと思いつつ口に運ぶ。
隣でロロとソラもパンを口に入れているのが見えるが言いたいことがある
「「……まっずい」」
そう、不味いのである。見た目はパンだが食べたらゴムでした。
亭主には申し訳ないけど果しなく不味い、ゴムを食べてるような感触に、鼻を抜ける変な香り
「これはヤバイです。人間国滞在中これを食べろと言うのだろうか……ロロ、息してますか」
「五十鈴、食べ物、食べたい……」
そうだよね、これは食べ物じゃないよね……先程から亭主に睨まれてるけど気にしない、だってほんとに不味いんだもの
「そ、そんなに不味いですか?」
「アリス、これは不味いんだよ。舌に刷り込まれてるだけなんだよ」
なんでこんなに不味いんだ、魔物退治してるなら魔物を使って美味しい料理を作れるはずなのでは?
「魔物とか食べないんですか」
五十鈴の言葉に食事処に居た者や、亭主にアリスもぎょっとしている
「魔物って食べれるんですか!?」
まさかの食べ物と認識していない。嘘だろ……
「食べれますよ、美味しいですし」
そう言ってボックスからブータリコの角煮を出す。
ロロがすっごく見てくるので、ロロの前にも出しておく
「うわぁ、すっごく良い香りがします」
食事処に漂う角煮の香りに周りの者が集まってきた。
人ホイホイみたいだ
「良かったら皆さんもどうぞ」
五十鈴の言葉に皆が皆フォークを持つ、しっかり亭主もいらっしゃる
恐る恐る口に入れた者達は、食事で神を見たと五十鈴を称えたのである。




