42 一緒に
次々に吹き飛ばされ行くエルフ達、火の玉も雷もダークエルフの彼は振り払う。
どんなにエルフ達が束になっても勝てない強さ
「ナビ、ダークエルフってどれぐらい強いんですか?」
小声で聞いてみる
《普通のエルフの倍は強いですが、五十鈴様なら勝てるかと》
それが聞けて安心だ。
ナビと喋ってる間もエルフ達は蹴散らされていく。
「邪魔、どけ」
そう言い、彼は持っていた短剣を目の前に倒れ伏すエルフに向けた。
ガキンッ
「おいたがすぎますよ」
五十鈴は短剣を受け止めるが、力が強いからかギチギチと音がなる。
「お前、邪魔する、殺す」
「そう簡単に殺されるわけにはいきません」
五十鈴は彼の瞳を見る、暗く淀んだ瞳には何も写っていない。
「つまらなくないんですか? そんな感情だけだなんて」
五十鈴の刀とロロの短剣がぶつかり合う。
やはり力が強い、本気で殺しにかかってきているのがわかった
「魔神、出せ」
「まったく話が出来ませんね」
声が届いてない。
「邪魔、だ」
その言葉と共に掌に黒い光の玉を作り出す。
「ちょっ」
容赦なく五十鈴に撃ち込まれるそれを、五十鈴は刀で切り伏せる
「話を少しは聞いたらどうですか!」
容赦なく顔面に拳を叩き込む。話を聞かなすぎてイラついてたのかフルスイングだ。
吹き飛んだロロは直ぐに立ちあがり五十鈴に向かってくる
「うるさ、い! 早く、魔神 出せっ!」
ロロも容赦なく五十鈴に攻撃を叩き込んでいく、顔面に蹴りを入れられそうになり、その足を五十鈴は掴んだ
「復讐や憎しみで何ができるんですか!」
「姉さんは、僕を、かばって死んだ、ぼくは、あの魔神、殺す、邪魔するなっ」
五十鈴はその言葉を聞いて掴んでいた足をそのまま持ち上げ投げ付ける
「うぐっ」
「それで復讐ですか、エルフ達に攻撃までして」
「うる、さい! 僕は、魔神、殺す。姉さんの仇 、とる!」
ロロは両手剣を持ち、地を蹴る。
二本の剣は五十鈴に向かって来るが五十鈴は避けない
「なっ!」
「捕まえました」
両手剣を素手で掴む、血が滴るが気にせずにロロを見つめる
「貴方は何を見ているんですか? 魔神ですか? 憎しみですか? 復讐ですか?……いいえ、違います」
暗く淀んだ瞳を見る
「貴方は姉の死から逃げてるだけです。復讐を糧にして姉の死から目を背けてるだけ。」
「うるさいっ!」
「駄々をこねる子供ですか貴方は…… ふざけないでください、ドライアドさんが貴方を助けたのは貴方がちゃんと自分と向き合えると信じていたから。
姉の想いをちゃんと受け止められると信じていたから。
なのに、なにをしてるんですか君は」
「うるさいっうるさい!」
ロロは拒絶するように両手剣から手を離し五十鈴を蹴り飛ばす
「うっ」
そのまま吹き飛んだ五十鈴、ロロは頭を抱えている
「うる、さい。僕は」
「いけませんっ!」
ドライアドの声がこだまする。その声と共にロロの体から黒いものが溢れだし、草木が枯れていく。
「黒い球体……」
ロロを中心に黒い球体がゆっくり広がっていく、それに触れたエルフが火傷をおったような傷がつく
「五十鈴様、あれはエルフにとっては毒です! このままではエルフ国までもがっ」
五十鈴は黒い球体に近付く
「駄々っ子の次は引きこもりですか、まったく」
「五十鈴様いけません! それに触れてはっ」
「お断りします。このエルフ国を守る約束ですし、
彼にも用がありますから。
ソラ、ドライアドさん達と一緒に居てください」
ソラは首をふるかのように体を左右にプルプルと揺らし、フードの中から出てこない。
「仕方がありませんね。落ちないように気を付けてください」
自身に守盾を何重にも纏わせ、ドームに手を突っ込む。
すると、頭に流れてくるのはロロの記憶や想い
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痛い、悲しい、憎い
魔神を殺さないと、姉さんの仇を取らないと。
姉さんが死んだのは魔神のせい
全部、全部、魔神がいけない、あいつのせい
違う、僕が弱いから
なんで死んだのが僕じゃないんだ、僕は、僕は、生きてちゃいけない
苦しい、痛い、暗い……
「違う」
ちが、う?
「貴方は生きてもいいんですよ」
そんな、わけ
「貴方のお姉さんはなんて貴方に伝えたんですか」
姉さん、の、言葉……
『「生きて、幸せになってロロ」』
姉、さん?
ロロの目に一瞬写ったのは姉の姿、次に写ったのは黒髪の少女。
「幸せってなんでしょうね?」
しあわ、せ?
「そう、幸せです。」
わから、ない、
「人それぞれですから、私にもわかりません。でも、貴女のお姉さんは幸せになってって、言いました。」
う、ん
「復讐の道に少しでも幸せなことってあるんでしょうか?」
……。
「わからないなら探せばいいんですよ」
さが、す?
「そう、この世界は沢山の国や人がいます。きっと楽しいこと嬉しいこと様々な出来事に出会えますよ」
であう……
「だからロロ、一緒に世界を見ていきませんか?」
いっしよ、に?
「そうです一緒にです。
悲しいときは一緒にいましょう、嬉しいときは一緒に喜んで。
人生って楽しいものなんですよ?」
そう言って五十鈴は暗闇の中座り込むロロに手を差しのべる
「だからロロ、私達と家族になりましょう」
そう言って笑う五十鈴の顔と姉の笑った顔が重なって見えた
ポロリと流れた涙と一緒に、彼女の手を掴んだ
暗闇が晴れた
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ドライアドは祈るように黒い球体を見詰める。
「五十鈴様……」
五十鈴が中に入ってから一時間はたとうとしている。
だんだん範囲を広げる球体、枯れる草木。エルフ達はなすすべもなく球体を見詰めていた。
その時だ、黒い球体が割れた
「五十鈴様!」
ドライアドの目に写ったのは五十鈴の手を握るロロ。
手を引っ張りロロを立たせ、ドライアドに気づいたのだろう、五十鈴が笑顔を向けた
エルフ達は武器を下ろし、ドライアドは涙を浮かべた。
彼の心に声が届いた、大切な民を失わずにすんだ
「ありがとうございます、五十鈴様」
そう小さく囁き、五十鈴の元に歩きだした




