35 新しい誇り
ゴーレム軍勢は五十鈴、黒桜、銀月の三人が半数以上を倒し、急いでドワーフ国に戻ったのだが
「ポーション持ってこい!!」
「布はどこだ!」
早くしろっと、慌ただしく動くドワーフ達
ゴーレムの大群の被害は大きい、怪我人が多すぎる。
このままでは死人が出る、そう考えた五十鈴は口を開いた。
「ミラ! ありったけの水を用意してください!」
慌ただしく動くミラルドに声をかけると、ミラルドが目だけをこちらに向ける
「今はそれどころじゃ」
「助けたいなら持ってきてください!」
ミラルドの声を遮るように声を張り上げた、間に合うものも間に合わなくなる。
ミラルドは五十鈴の真剣な瞳を見て、周りのドワーフ達に指示を出した。
「此だけあれば足りるか?」
用意されたのは、大樽が数十個。中には並々の水が入っている
「一か八かですが」
やってやりますよ、人の命がかかっているのだから
五十鈴は水の中に手をいれ目を閉じ、集中する。
そして
治癒スキル発動
そうすると水の色がみるみる鮮やかな水色に変わっていく、ポーションよりも鮮やかな色だ。
五十鈴はそれを見て水から手を抜く
「よし」
すぐに鑑定スキルで水を見る
『名称:ハイポーション
詳細:大抵の傷は治せます。』
まさかのハイポーション。予想外の出来だ、ナビ!
《はい》
ハイポーションの使い方は? 塗るんですか飲むんですか?
《このハイポーションはかけても飲んでも効果を出します。肩凝りも腰痛も直る優れものです》
入浴剤みたいな効果だ……とりあえず、これならば助けられる
「ミラ! この水を飲ますかぶっかけるかしてください」
五十鈴はそう言って他の樽にも手を入れハイポーション製作を始めた。
ミラルドはその言葉を信じて樽を持ち上げる。
周りのドワーフ達も同じように樽を持ち走り出した、ハイポーションの力でみるみる治る仲間達に度肝を抜いているようだから、成功したのだろう。
ゴーレム襲来から数時間
怪我人0 死亡者0
すべてが無事に終わり、ミラルドに抱き締めれている五十鈴
「ミラ、苦しいんですが」
「離さねーからな! 五十鈴はドワーフ国の恩人なんだ! しかもなんだ、あのポーション!」
お気に入りの人形を抱き締めるかのよう五十鈴をガッチリボールドしているミラルド
普通の人なら絞め殺されてるかのような力強さだ
「ミラルドさん、主をお離しください。」
黒桜が五十鈴からミラルドを離そうとするが、一切腕の力が緩まない
「断る!」
とても良い笑顔だ。
そんなミラルドを止められるのは、やはりこの人物だろう
「恩人になにさらしとんだ! あんたは!」
ギガントの愛ある拳をくらい、ミラルドの頭にコブが三段出来上がった。
トリプルアイスみたいだと思ったが黙っておこう……
「五十鈴、ゴーレム討伐にドワーフ達の救命、感謝する」
頭を深く下げたミラルドに慌てる五十鈴
「ミラ、頭をあげてください! 私が勝手にやっただけですから、感謝なんて」
「いや、五十鈴達がいなかったらゴーレムを倒すのに手こずって国は潰れていたかもしれない。
それに、五十鈴が居なければ死人が出ていたはずだ。
感謝してもしきれない」
だから、ありがとうっと再び頭を下げたミラルド。
国の主がこんなに頭を下げているんだ、受け取らない方が失礼だろう
「その感謝、受けとりましょう。」
ーーーーー
ミラルドから感謝の言葉を貰ってから五十鈴はドルガド達に会っていた
「ゴーレムの胸にあった石、これは神経伝達を可能にする石です」
そう言ってゴロゴロとテーブルに出す、全部は出せないが山が出来ている。
無双したため大量にある
「普通なら頭を破壊して倒すため、胸の石は消滅して気付かなかった。」
ドルガド達は石を手に取りじっくりと見る。
「固くて砕けねぇと思ってたんだが」
「余裕で砕けますよ」
ゴリッと掌で砕く五十鈴、ためしに黒桜と銀月も渡したら、五十鈴よりも粗いが砕けた。
大根潰しの効果は抜群だ
「嬢ちゃんなにもんだよ……。だがまぁ、これがあれば作れるかもしんねぇ」
そのあとは直ぐに製作開始、五十鈴と副官二人は石を砕く。
砕くと熱に弱くなるのか作業は思ったよりも早く進んだ。
それをドワーフ七人が造り上げた義肢に加工していく。
「よし、出来たぞ!」
出来上がったのは銀色に輝く義肢、漫画に出てきそうな出来だ。
「あとはつけるだけですね」
これで神経伝達が出来、しっかり動くのなら成功だ。
ドルガドが元々ついていた義足を外し、新たに作った義足をつける
「おお!」
ピタリとくっついた義足、痛みもなくついたようだ。
「動く! まるで本物の足のようだ!!」
持ち上げた足はスムーズに動いているようだ。
足首も指ひとつひとつも、問題なく動かせている。
「成功です!」
五十鈴とドルガドは拳をトンッとぶつけた。
ドワーフ国にて、人々の希望となる義肢が誕生した瞬間である。
実は全員分の義肢を作っていたらしく、皆がみんな新たな義肢を付けている。
「ドワーフ国に来た目的をすっかり忘れてました。」
五十鈴は思い出したように声を出した、桜国の武器や防具を買い求めに来たはずなのに、ドルガド達と作るのに夢中ですっかり忘れていたのだ。
その事についてドルガドに話すと、良い案があると言い笑顔を見せた。
連れてこられたのは主殿、ドルガド達は堂々と入っていく
「ミラルド様!」
ミラルドの前に並び立つドルガド達
「どうした、お前ら? 五十鈴まで連れてきて」
不思議そうにドルガド達を見ているが、彼等の付けている義肢を見て目を見開く
「お前ら、それ」
ミラルドの反応に、にっと笑うドルガド達
「嬢ちゃんが俺達の誇りを取り返してくれただけじゃなく、新しい誇りまで造り出してくれた。
俺達は嬢ちゃんの為に誇りを使っていきたい。
桜国に移住する許可を頂きたく参上いたしました。」
その言葉にミラルドは立ち上がった。
「……お前達は毎日詰まらなそうだったな、まるで生き甲斐を無くしたかのように。
私はお前達になにもできなかった……。そうか、新たな誇りを手にいれたか」
どこか寂しそうであり嬉しそうでもある顔で、そう言ったミラルド。
「許可しよう、お前達の誇りを存分に発揮してこい。
桜国と繋がりがほしかったとこだ、丁度良いだろう。
五十鈴!」
ミラルドに呼ばれ前に出る
「獣人国とはもう同盟を組んでいるんだろ? 配達係が言っていたよ。
五十鈴の力は驚異だ。
あのポーション、確かハイポーションだったか? あれを作れるのも驚異のひとつと言える。
私はな五十鈴の力に恐れがあるが、それ以上に頼もしいと思ったんだ。
そこでだ、ドワーフ国は桜国を全力でサポートする。
私達の技術と力で手をかそう。
それに、今回出来上がった義肢も桜国とドワーフ国で作った物だと発表するには手を組むのが一番なんだ。
そして、この国に何かあったときには助けてほしい。
ドワーフ国とも同盟を結んでくれないだろうか?」
確かにドワーフ国と繋がりができるのは良いことだらけだ。
断る理由はないだろう。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
笑顔で手を握りあった二人。
ため息を吐いた者も二人。
「銀月、主は全ての国と繋がりが出来そうな気がするのだが……」
「俺も思った。国と国、繋がりのなかったものを繋げていく気がするな」
二人は五十鈴を見ながら苦笑すつつも、楽しそうであった。
それから、ドルガド達の象徴板が完成するまではこの国に居てくれとミラルドに引き止められたので、もう少しドワーフ国に居ることになった五十鈴達。




