31 ドワーフ国
ドワーフ国は桜国から西に進むとたどり着く国だ、離れているがお隣さんである。
歩いて行くとひと月半程かかるが銀月に乗っている五十鈴には関係のないことだ
ドワーフの国の周りには岩山が沢山あり、その岩山に囲まれた中心に国がある。
周りの岩山では鉱石等が沢山とれるため、まさにドワーフの国が立つには最適な場所だといえる
入り口に降り立つった五十鈴達
「ここがドワーフ国ですか」
立派な門構え、堂々としている。力強い感じの門
銀月と黒桜を連れて足を踏み入れると、一人のドワーフが五十鈴に声をかけてきた。
「桜国の主、桜木五十鈴殿か?」
見た目はドワーフだが、まったく小さくはない。
イメージとは少し違うようだ、でも髭はもっさりである。
「はい」
「主殿までの案内を頼まれたギガントだ」
よろしくなっと言い、五十鈴達を連れて歩き出す。もちろん自己紹介もしてある。
歩きながらドワーフ国の街を見るが、女性のドワーフも沢山いるようだ。
皆筋肉がしっかりついてて体格は良い方だろう。
やはり他国の者が歩いていると注目されるが気にしてたらきりがないので無視を決め込んだ。
この国の道の真ん中にはトロッコが通っていて、様々な鉱石らしきものが積まれている。
トンカントンカンなにかを作る音が聞こえるのがドワーフ国っぽい
そんな風に五十鈴が考えながら歩いていると、 洞窟を改造したかのような大きな建物が建っている。
「ここがドワーフ国の主殿だ」
ついてこいっと言われ素直についていくと、誰かが背を向けながら立っている
背には大きな斧が二本、クロスして背負っているようだ。
「主! 連れてきたぜ」
ギガントの声に反応するように振り返ったその人は、モサッとした深紫髪を結い上げ褐色系の肌が艶やかな女性。腹出し衣装だが腹筋は立派なシックスパックである
「おお! やっと来たか!」
彼女は赤銅色の瞳を輝かせて五十鈴にズンズン近付いていく。
銀月と黒桜は少し警戒をしたが、次の行動で二人は固まることになった。
ガシリッ
「!?!?」
五十鈴の豊満な胸を鷲掴みにされた。しっかりと両手で掴んでいる
黒桜と銀月は固まり動かない、動いているのは彼女の手である。
「良い大きさに良い柔らかさだ! 健康な証拠だな!」
五十鈴は何にも動じない性格だ、こうされた場合の対応はこうだろう
ガシリッ
「あなたも良いものをお持ちですね」
五十鈴も相手の胸を鷲掴んだ。最初に掴まれた時は驚いたが、女性同士だ気にするほどでもない
「そんな風に返されたのは初めてだ! 気に入った!」
胸の掴み合いを止め、向き合う主達
「私はこの国の主、ミラルドだ」
そう挨拶するミラルドの頭には大きなタンコブが一つついている。
あの掴み合いをしたあとにギガントに拳骨されたのだ。
台詞はこうだった
「他国の主になにやってんだあんたは!? 桜木殿が心広い方だったから良かったものを!!!」
あれは良い拳だった、主なのに容赦ない拳だと言える
「私は桜国主、桜木五十鈴です。こちらが副官の黒桜と銀月です」
二人は前に出て挨拶し、直ぐに五十鈴の後ろに戻った
「五十鈴の副官は殴らなそうでいいな、ギガントも見習えよ」
「貴女は桜木殿を見習ってください」
「私は主だぞ! 普通殴るか!?」
「殴りますね、愛の拳だと自負してますよ」
さらりと言いきるギガント、上下関係が見えてくる
「ミラルドさんは何故私をこの国に呼んだのですか?」
「さん、なんて止めてくれ鳥肌がたつ! ミラと呼んでくれてかまわない」
ぞわわわーっと鳥肌をたてながらミラルドがそう言った。
「ではミラ、なんで私をドワーフの国に呼んだんですか?」
五十鈴がそう聞くとミラルドは立ちあがり、背に持っていた二本の斧を構えた
「配達係から五十鈴が強いって聞いてな、手合わせしたかったんだ!
だから、とりあえず手合わせ願おうか!」
ブンッと容赦なく斧を五十鈴に叩き込むミラルド。
五十鈴達は軽くジャンプして避けたが、その斧は床を壊しめり込んでいる
ギガントが壊れた床を見て嘆いているのが見えた、苦労してるんだろう
「まったく、そんな理由で呼んだんですか……。黒桜、銀月、端に寄っててください。」
五十鈴の言葉に小さく頷くと二人は素早く端に寄った
「まだまだー!」
ミラルドは五十鈴に向けて斧をぶん投げる、それを避けた五十鈴に向けて素早くもう一本の斧を叩き込む。
ガキンッ
背から刀を出し斧を受け止める五十鈴
「ほっせー武器だな、壊れないのか?」
「性能はピカ一ですよ。蒟蒻もしっかり斬れます」
なんでも切れると思ったが、あの時の黒い鎧といい、意外と斬れないものがあるらしい。
斧を押さえていると後ろから先程の避けたはずの斧が五十鈴に向かって返ってくる
「ブーメランですか、まったく!」
五十鈴はギリギリまで引き寄せてその場から素早く抜け出す。
ミラルドは突然いなくなった五十鈴に対応できなくそのまま斧を降り下げると、もう一つの飛んできた斧ごと床に叩きつけた。
金属と金属のぶつかる音が鳴り響く
「避けるなんてずるいじゃないか!」
「ずるくありませんよ」
「もっと本気でやろうぜ!」
五十鈴は小さくため息をついた。
「仕方ありません。ほら、武器を拾って」
五十鈴の言葉に瞳を輝かせるミラルド、素早く斧を拾って構えた
「ミラルドさんからどうぞ」
「じゃ、遠慮なく!」
そう言いミラルドは五十鈴に斧二本を叩き付けたが
ガシリッ
「!?」
「しっかり、そのシックスパックに力を入れてくださいね?」
二本の斧を素手で掴み、そのままミラルドの腹にひと蹴り。
決着がついた瞬間だった。
「この斧でかいですね」
手元に残った二本の斧を左右に持ちながらくるくると回す。
そんな五十鈴を壁にめり込んだミラルドは茫然と見詰めていた。
「五十鈴が強くて笑えない」
負けたのが余程ショックだったのだろう、気落ちが半端ない。キノコが生えそうだ
「そんなに落ち込まなくても」
「こんなに細い奴に負けた」
五十鈴の腕を掴みながら言うミラルド。
「主、敗けを認めるのも強さですぞ」
「負けました!」
認めるのが早すぎる、立ち直るのも早いようだ。
「五十鈴はこれからこの国の観光か?」
「そうですよ」
「そっか。この国は武器、防具、様々な工芸品を学び、研き、高めてきた国だ。
常に新しいものを作り失敗し完成させる、努力の国。
他国は私達の国の物を使い捨ての物とでも思っているのか、大量に買おうとする。
それが私は許せない、ちゃんと見て選んで買ってくれるなら文句も言わないさ。
私は他国と交友があることは良いと思うぞ。
けど、私の国の価値は技術だけだと思われている、まったくもって腹立たしい。
良いやつらばかりだと言うのに」
眉に力をいれて語る彼女はちゃんと国の主の顔だ、ちゃんと民の事を考えている。
「そうですね、ミラもいい人みたいですし」
五十鈴の言葉にまたもや瞳を輝かせる。その姿を見て可愛らしいひとだと思った五十鈴
「私も五十鈴は良いやつだと思うぞ!」
素直な性格、それがドワーフ国の主らしいです。




