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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
序章 森の主はじめました。
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02 心は宇宙よりも広い

桜木 五十鈴 18歳。腰まである長く癖のない艶やかな黒髪。

美人とも可愛いともとれる顔立ちだが本人に自覚なし。

父母を幼い頃になくし祖母に育てられてきた。

バイト代を貯め高校卒業後は独り暮らしの予定だったが、鳥居をくぐったら身体能力が化け物=ゴリラになり、森の主になりました。




「この森は捨てられたのです」


鬼神はまっすぐ五十鈴を見つめ、そう言いはなった。


「捨てられた?」


「はい、国にはそれぞれ『主』というものが居るのです。そして、この森も昔は一つの国でした」


鬼神の語る内容はまさに本やゲームみたいな話だった。

この世界には様々な種族の国があるらしい。

獣人国やドワーフの国、エルフや魔王なども存在している。


その様々な国には『主』というものが存在し、その国の源となるのが『主』という存在。

『主』の本質は国に反映されるため、主のいない国は力のない国と認識される。

主になるものは瞳の色で決まっているとのこと、この森なら金瞳。

主の瞳と同じ色は基本的には居ないが、『主』の眷属になることで同じになるとか。


別の国に住むのは可能だが、種族同士仲は良くないらしく、様々な種族が共に生きるのは難しいと言われている。

この森は鬼神と狼族、二つの種族が森を半々の割合で分け住んでいたのだが。

主のいない国は必要ない、それも理由のひとつだがもう一つ理由をあげるのなら『鬼神』『狼族』この二つの種族の力を恐れた他の国達が森共々排除しようと考え始めたことだろう。


その排除方法が結界を張り、中から出られないようにし、結界は範囲を狭め鬼神と狼族を一網打尽にする方法。

唯一結界を止める事が出来るのは、どちらか片方の種族を根絶やしにすること。


自分達の手は汚さない方法で排除しようとしているのがわかる。

だが、結界が止まったとしても結界自体は消えないため意味のない争いだ。

あまりにも雑な扱いに五十鈴は無意識に眉を寄せていた。


「俺達は森と共に捨てられたのです」


黙っていた狼族が口を開いた。その瞳は悲しみや怒り、様々な感情が見てとれる。


「俺達狼族、そして鬼神族、互いの種族を潰しあい同胞は次々に死にました。

他の国の連中はこの森がどうなろうと俺達がどうなろうと気にもしないでしょう。


だからこそ、あなた様に会えたことが嬉しくて仕方なかった……」


とても嬉しそうに、くしゃりと顔を歪ませる狼族の男に五十鈴はぎょっと目を見張ってしまった。

そんな五十鈴を見る鬼神もくしゃりと顔を歪ませ笑顔を見せた。


「主よ、あなたは私達を吹き飛ばしたあとに大丈夫かと聞いてくださった……その言葉を私達は聞いたことなど一度もないのです。

鬼神も狼族も心配されたことなどありません。


けれど貴女は私達の間に迷うことなく入り攻撃を止めてくださった。

鬼神と狼族の間に入る者など見たこともありません。

貴女は私達を恐怖のこもった瞳でなどで見なかった

貴女の金の瞳はまっすぐ私達を見てくださった、その時に思ったのです。

この方のお側に居たいと……この方が私達の主だと」


この上ない幸せだと二人は五十鈴に言うのだ。

鳥居を潜って来ただけの会ったばかりの人間に向かって。


そして五十鈴はそんな彼等を見て思ってしまった、たった今会ったばかりの彼等が笑顔で過ごせる国を作り守りたいと。

彼等の主になりたいと……思ってしまった


知らない場所に来て不安じゃなかったかと言えば嘘になる。でも、なぜかすんなりとこの状況を受け入れているのだ

そして、五十鈴は宇宙よりも広い心を持っている。だが、この言い方には小さい間違いがあった。

懐に入れたもの限定、これが答え


五十鈴は守りたいと思ったものにたいして宇宙よりも広い心を持っている。

友人達に言われ続けた宇宙よりも広い心というのは、友人達が気付いてないだけで友人達を守りたいと大切だと思っていたからそう呼ばれていただけだ

五十鈴は懐に入れたものを決して裏切らない


二人は入ったのだ桜木五十鈴という人間の宇宙よりも広い心の内側に。

これは五十鈴の不安など吹き飛ぶほどの出来ごとだった。


「私も……私も君達に出会えて嬉しいです」


心からの笑顔、それが五十鈴の出した答え。

二人は五十鈴の笑顔に自然に無意識に見とれていた。

美しい金の瞳を細め柔らかく笑うその笑顔に


「結界を壊そう」


君達の主になりたいから



*******



話の結果、結界のせいで五十鈴の主としての力が行き届いていないと聞かされた。

そのせいで正式な主としての力が出ていない。

ならば早く結界を壊そうと結界の発動場所に行ったのだが


じぃぃぃぃい

そんな音がほんとに聞こえるんじゃないかと思うほどの五十鈴を見詰める沢山の視線

鬼神族と狼族が勢揃いしている、ざっと見た限り50は居るだろう


「狼族は皆集まった」


「鬼神族もだ」


二人が会話をしているのを見てざわめきたつ。

敵対していた二人が並び普通に会話しているのがありえない光景なのだろう。


「静まれっ主の御前だ!」


「狼族もだ!」


主と言う言葉にピタリと先程のざわめきが嘘のように止まる。


五十鈴は堂々と凛とし佇まいで皆の前に出た。

緊張などしない、恐怖などない、だって私はこの森の主になるためにここに立っているのだから

そう思いながら皆を金の瞳に写し出す。


「桜木 五十鈴と申します。見知らぬものが突然現れ驚かれたでしょう」


静かな空間に五十鈴の声だけが響き渡る。


「私はあなた方の主になりに来ました。こんな小娘が主と思うでしょう。

こんな小娘に主が勤まるのかと、それでも私はあなた方の主になります。

あなた方の主になりたいと思ってしまったから。

守りたいと思ってしまったから。

だからここに立っています


この森の貴方達の主になるために」


五十鈴の心の内は恥ずかしさで爆発寸前である。気合いで言い切った。


めちゃくちゃ恥ずかしい。なんだこのクサイ台詞は……

誰も喋らないよ。終わったな、これ


そんな五十鈴の心の内など知らず、しんっと静まり返る森。

だがその静けさも一瞬で終わりを迎えた


「「「「いよっしゃぁああああああ」」」」


「!?」


あまりの雄叫びに驚き固まる五十鈴、そんな五十鈴に次々声がかかる


「主様ー!!」


「素敵です主様!」


「こんな綺麗な主様だなんて!幸せで死ぬかもしれません!!」


「な、涙がとまらねぇっ」


どれもこれも五十鈴を受け入れる言葉ばかりで五十鈴は戸惑った。

いきなり来た小娘を受け入れられないと思っていただけに驚きも二倍だ


「主よ、皆あなた様を待っていたと言ったでしょう?」


「俺達は皆待っていたんです。それにさっきの言葉が皆嬉しかったみたいですよ」


「さっきの言葉?」


「俺達の主になりたい、俺達を守りたい。

俺達に守るなんて言う主が現れたんです。嬉しいに決まっています。」


「鬼神も狼族も強い種族、守るなんて言葉を言われることなどあり得ません。

それに言ったでしょう? 恐怖のこもらない真っ直ぐな瞳が私達にとってはとても嬉しいものなのです。」


五十鈴は喜ぶ皆を瞳に写し小さく笑う。


「そういえば、あなた達の名前を聞いていませんでした」


ふと考えると鬼神と狼族この二人の名前を聞いていないことに気付いた。

これだけの鬼神と狼族がいるのだ、名前で呼ばなければ混乱する


「私達頭には名がないのです」


「仲間達には(かしら)って呼ばれてるから名がありません」


「他の者達には名があるんですか?」


「はい、あります。ですが頭は頭、名が必要ありませんでしたので」


「不便もとくになかったので気にもしていませんでした」


二人はそう言うが名前がないのは不便だし、何だか寂しい気がしたので一つ提案をしてみることにした。


「じゃあ私が名付けても良いでしょうか?」


その言葉にキラキラと瞳を輝かせる二人。まるで犬のようだと思ったのは内緒だ。


「「是非お願いしますっ」」


五十鈴は二人を見詰める。

鬼神は額に二本の角、サラサラの黒髪が肩につかない長さで(くれない)色の瞳は切れ長。黒い着物がよく似合う。

狼族は耳が生え所々跳ねているが綺麗な銀の髪、肩につくぐらいの長さだ。瞳は灰色をしている。狼族は皆灰色の瞳だった事に気付いた。

じっくり二人を見て思ったことは、顔が整っていること。

五十鈴自身、容姿の善し悪しは特に気にしていないが、二人とも綺麗な顔をしていることは確かだろう


黒桜(くろう)銀月(ぎんが)


「黒桜……」


「銀月……」


確かめるように自分の名を言う二人、気に入らなかったかと声をかけようとしたが、二人の嬉しそうな顔を見て言葉を飲み込む


「とても気に入りました。」


「ありがとうございます主様」


「気に入ったなら良かったです」


へにゃりと嬉しそうに笑う二人に苦笑したのは仕方ない。名をつけただけでここまで喜ばれると少し照れてしまう。


挨拶も名付けも終わった、あと残っているのは結界だけだ

皆のためにも、さっさと壊しますかっと気合いをいれた。


















ゴリラ要素がなかなか出せなくて悲しいです。


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