16 甘党
コンは頭を抱えていた。
彼の目の前にはゴリラの休憩所があるからだ
「きてしもうた……」
わいは何を期待しているんだと思いながらも、昨日一日握られていた左手を見る。
他人に触れたのは久しぶりだった。庇われることなんてあっただろうか……
そんなことを考えながら宿屋に入る。
「来てくれたんですね狐さん」
嬉しそうに笑いかけてくる五十鈴を見て、コンは苦笑ぎみに五十鈴を見た。
昨日一日一緒にいてわかったのだ、彼女は悪いやつじゃない。でも他人だ、繋がりなんて一つもない
だからここに来た。
他人は信用できない、他人は他人だ。信用するだけ無駄なこと。
彼女の目的は何なのか、それが知りたい。それだけが理由だ
それを知りたくて来ただけなのに、なんでゴリラに囲まれてるんだっとコンは目の前のゴリラを見詰める。
「お前が嬢ちゃんの言ってた親切な狐かぁ」
ガッツに詰め寄られて固まるコン
「お前、リドさんとこの長男坊だろ」
その言葉に眉を寄せる
「だったらなんや」
こいつも周りの奴等と同じかと睨み付けるコンだったが返ってきたのは大きな手
「そうか、リドさんとこのか」
わしゃわしゃとコンの頭を撫でる
「父ちゃんのこと知っとるんか?」
「一度助けてもらったんだよ」
「助けた?」
コンが聞き返すとガッツは思い出すように目を伏せる
「俺ん家は貧乏だったんだ、なかなか仕事が見付からなくてな。
体格は良いし顔はゴツいから怖がるやつがいて仕事が決まらねぇ、そんな時に声をかけてくれたのがリドさん、お前の親父さんだ。
リドさんは俺達に大工の仕事を進めてくれたんだ、建物を建てる仕事だからな他の奴等とも知り合うことが多くなってだんだん受け入れられてった。
今じゃ親方なんて呼ばれて仕事ができてる、感謝してんだよ」
予想外の感謝の言葉。知らない父の話
「あの人は優しい人だ、人殺しなんかするはずがねぇ。何かあるはずだぜ」
ガッツの言葉と共にテーブルにコトリとお皿を置く五十鈴
「それを調べるんですけどね。とりあえずガッツさん試食をお願いします。」
ガッツに出したのは昨日亭主とお菓子作りの話で盛り上がったために出来上がったバナナのパウンドケーキだ。
ナーナパウンドと名をつけた
「旨そうだな」
大きい手に小さいフォークがシュールだ。
パクリと一口食べてから天を仰ぎ出すガッツ
「うめぇ」
彼は甘党なのである、むしろスイーツ男子。甘いものには厳しい判定をするとのこと。
そんな彼からのうめぇの言葉と共に亭主とハイタッチを交わした五十鈴。パァンっという軽快な音が喫茶店に響いた。
「やりましたね亭主」
「ああ、商品として出そう。五十鈴さん、この国にいる間色々とアイディアと知恵を貸していただきたいのですが。」
もちろんですっと亭主と握手した。この世界の菓子とか食材を知るチャンスだ。
ちなみに銀月はずっと皿洗いをしていたりする。
「で、ガッツさんは狐さんのお父さんについて何か知ってたりするんですか?」
ナーナパウンドを一口一口味わいながら美味しさに震えているガッツに声をかけた五十鈴
「いいや、俺もあんまり知らねぇな。どっかに記録はされてるんじゃねぇか? 」
「確実に隠されてるやつですよね。」
できればキャッツなアイはしたくない。
「獣人国初の処刑だったからな、混乱したよ国は。そういや、殺人があった後にルスホ副官の方翼がなくなったな……なんか関係あんのかね」
ガッツの言葉に意外とすぐにわかるかもしれない。そう思った五十鈴はある場所に向かうことにした。
コン、五十鈴、銀月の三人は配達係本部に来ていた。
コンをじろじろと見てくる配達係が気になって仕方ない。クウ達に人となりをちゃんと見ろと言われたからか、特に嫌悪などの視線は感じないが。
動物園の動物の気持ちがわかる気がする。
「クウ!」
「五十鈴さん?」
クウは突然の五十鈴の訪問に首をかしげている。
「ちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいことですか?」
五十鈴はコンをクウの前に出す
「彼のお父さんについて」
そう五十鈴が聞くとクウは周りを素早く確認してから五十鈴達引っ張って一つの部屋に連れていく
「誰もいませんね……」
キョロキョロと部屋の周りを確認してから扉を閉じるクウ
「それで、何が聞きたいんですか? 」
「彼の父親はほんとに処刑されなければいけないことをしたのかどうか」
クウはため息をひとつ吐き出した。
「五十鈴さんって懐に入れた人にたいして強引に進めていきますよね。」
「何処がですか」
無理矢理引っ張って夕食に連れていったのは誰だったかを切実に叫びたいクウ
「君も入っちゃったかも知れないから気を付けた方がいいですよ。」
何処か同情するような目でコンを見る。
「当時は私も子供でしたので大人たちから聞いた話しか知りませんよ。」
「それでも良いから教えてください。」
五十鈴の言葉にやれやれと思いながらも口を開く
「この話は鳥一族の間ではタブーなんです。」
「どうしてですか?」
「なんでなん?」
二人が不思議そうにクウを見ると観念したとでもいうように口を開く
「殺されたのが鳥一族の者だからですよ。」




