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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第一章 獣人国編
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14 ゴリラとゴリラ

五十鈴と銀月は今、黒い毛が艶やかなガタイのいいゴリラ達に囲まれていた。



五十鈴達が喫茶店に足を踏み入れてすぐ、喫茶店に来ていたゴリラ達に突然持ち上げられ、あれよあれよというままに席につかされこの状況になったのである。


「あんたがあの森の主になった嬢ちゃんか」


そう言って五十鈴をじろじろと見るゴリラ達


「体も小さいし、腕も細い、強そうには見えないのになんであの森の主になれたんだかなぁ。」


鼻で笑いながら五十鈴に言うゴリラ達に銀月が口を開く。


「貴様ら主様を愚弄するかっ」


そんな銀月を素早く止めた五十鈴。


「強さは見た目じゃわかりませんよ。」


五十鈴の強気な発言に目を細めるゴリラ


「そこまで言うなら確かめてみるか?」


ゴリラは片腕をテーブルに置き構える


「賭けがないのはつまんねーよな。あんたはこの宿屋に泊まりに来たんだろ? あんたが勝ったらこの宿屋に泊まってる間の料金を払ってやる。

俺が勝ったらこの喫茶店のナーナミルをこの国にいる間は毎日おごってもらうってのでどうだ?」


ナーナミルとはなんだろうか?飲み物だろうか? 食べ物だろうか?


「いいですよ」


そう言って五十鈴も片腕をテーブルに置きゴリラと手をしっかりと握り合う。ゴリラの手は大きく、五十鈴の手がすっぽり収まる程


ゴリラ達は勝ちを確信して疑っていないようだ。

そして勝負の合図がゴリラ達から出され……




五十鈴の前には倒れたゴリラが五人、壊れた机が一つ。

ふぅっとナーナミルを飲みながら一息。銀月は小腹がすいたのか赤いリンゴのような実を食べている。

対決は腕相撲、どちらが勝つかなんて決まっている。


「ナーナミルってバナナミルクに似た飲み物だったんですね。」


でも私、バナナミルクって苦手なんですよね……


そんな五十鈴に五人のゴリラ達はでかい図体を小さくしながら一塊(ひとかたまり)になりこそこそと話している


「や、やべーよ!つえーよ!」


「いや、それよりも自分達から挑んだ上に負けたとか親方には言えない!」


「親方にばれたら拳骨喰らうぞ」


「あれ痛いんだよなぁ……」


「どうすんだよ!」


こそこそと話していると、カランっと扉から音がして五人のゴリラよりも体格の大きいゴリラが立っていた。


「てめーら、休憩時間は終わってるぞ」


そのゴリラの言葉と共に青ざめ始める五人のゴリラ達。


「ん?あんたは」


ふと目があった五十鈴とゴリラ


「こんにちは、あのゴリラさん達のお知り合いで?」


「ああ、あいつら何かしたのか?」


ギロリと五人のゴリラに目を向けると五人はあからさまにビクついている

その返事に銀月が前に出る


「主様を愚弄して、勝負を仕掛けて来た。」


銀月の言葉に眉を寄せて五人のゴリラに近寄っていく


「てめーら! 絡みに行くなって言っただろーが! 脳みそ入ってねーのか!」


ゴンゴンゴンゴンゴンっと五人の頭に拳骨をきめていく、とても痛そうな音だ


「すまねーな嬢ちゃん、あんた桜国の主だろ? コイツらあんたがどんな奴か気になってこの宿で待ち伏せでもしてたんだろーよ」


「う、気になったんだからしかたねーじゃないっすか。あの森に主が出来たっていうんだから気になりもするっす」


「会ってみたら華奢な女の子だしさ。」


「そうそう」


「狼族の男が付いてたから最初はビビったけどいいやつらそうだし。」


「どうにか仲良くなれねーかって考えたら勝負ぐらいしか思い付かなかったんっすよ」


頭にたんこぶをつけた五人はしゅんっとしている。勝負したら仲良くなれるとでも思っていたんだろうか……


「で、どっちが勝ったんだ?」


その言葉にうっと言葉をつまらせる五人のゴリラは五十鈴の方を見る


「……テメーら負けたのか」


少し驚いた様子のゴリラ。


「嬢ちゃん、俺の名前はガッツ。一つ勝負してくんねーか?」


ニッっと笑いながら腕を出すガッツ。純粋に五十鈴の強さが気になり勝負を仕掛けて来たようだ。


「では」


五十鈴も腕を出し構える。先程のゴリラたちよりも大きくしっかりとした手だ。


銀月に合図を頼み、いざ勝負!


ガッ


そんな音と共に全く動かない五十鈴の腕にガッツは冷や汗を流す


「嬢ちゃん、何もんだっ」


必死に力をいれているのがわかるが五十鈴にとっては微々たるもの


「ただの小娘ですよ」


そう言って一気に力をいれるとガッツの腕はあっさりと倒され、勢いのままに机を壊しガッツは遠心力により一回転してから床に叩きつけられた。

ピタゴラってるスイッチみたいな予想外な動きだったと後に五十鈴は語る。





「ははは! 気に入ったよ嬢ちゃん! あんたすごいな!」


楽しそうに五十鈴の背中をバンバン叩いている。

あの腕相撲のあと謝罪と共に自己紹介をされた。

五人のゴリラ達はイチ、ニィ、サン、シィ、ゴウと言うらしい。まるっきり数字である。


「俺達はこの国の大工をしてんだ、桜国で何か建てたり作ったりすんなら力貸すぜ」


「ほんとですか!」


丁度色々作りたいと思っていたため、この申し出は有難い


「おうよ! この国には大工が沢山居るからな、気軽に頼んでくれや。

他国には行ったことねーけど嬢ちゃんの国なら楽しそうだ。いつでも依頼してくれ。」


男らしい。喫茶店に入っただけなのに大工と仲良くなってしまった。

うれしい誤算だ。建築問題が獣人国一日目にして解決した。


そろそろ宿にチェックインしなければと亭主に近付く。ちなみにここの亭主はハシビロコウ先輩だ。眼光が半端ない


無事にチェックインを終えてガッツ達の元に戻ると銀月がテーブルに伏せて寝ている。


「嬢ちゃん、こいつチチゴの実食べたら酔ったみたいで寝ちまったぞ」


リンゴっぽいあの実はチチゴの実というらしい。リンゴと違って中身も赤い実だ。

少しアルコールの匂いがする


「チチゴの実は酒の材料にもなるって聞くが、そのまま食べて酔ったやつは始めて見た」


銀月は下戸だったらしい。

桜国はまだお酒は作っていない。私自身が飲める年齢ではないのだから無理だ、お酒については後々しっかり考えなければ……


「とりあえず部屋に運びますか……」


そう言って五十鈴は銀月の両膝の下と背中に手を添えて抱き上げる、姫だきである

ガッツは思った、男にたいしてその抱き上げ方はあんまりだぜ嬢ちゃんっと……


二階に上がった五十鈴は部屋のベットに銀月を寝かせてから一階に戻った


「亭主、私外に出ますから銀月が目を覚ましたら言っといてください。

私が帰ってくるまで待っててくれてもいいし、好きに何処か観光しててもいいって」


ガッツ達も仕事があるため一緒に外に出る。まだ昼を過ぎたばかりだ


「嬢ちゃんがいる間はこの喫茶店に通うとしようかね。それと、宿泊代はまかせとけ」


そう五十鈴に言ってからガッツ達は仕事場に向かい歩き始めた。さらりと格好いい

五十鈴はガッツ達を見送りを、彼らとは逆の道に歩き出す



さて、何から見ていくとしようか



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