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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第六章 桜国編
100/114

100 昔の思い出は、軽く聞いちゃいけない



おばあちゃんは優しく、暖かい人だった


「いたたたたたたっかぐや、痛い、絞まってる!

だがっかぐやの柔い太股がわしの顔面にあるのはうれしっ、いだだだだだだだ!?」


「やだわ、和也(かずや)さんったら。締め付けが足りないって?」


たとえ、お祖父ちゃんに笑顔で三角絞めをしていても。




「さぁさぁ、早く謝ってくださいな。私の桜最中を食べたことについて!」


「死んでも謝らんぞ! 町内会でもらってきただけなら許せたが、風間のジジイからもらったものなどっ」


「一日限定100個の桜最中と風間さんは関係ないでしょう?」


「あのジジイはお前に気があるんじゃ、そんなやつから貰った最中を食わせられるか!

かといって捨てるのは勿体ないから、わしが食ったぞ。

最中生地が舌にのせると溶けるように消え、桜あんは素朴な甘さ。

刻んだ桜の塩漬けの葉も入っててな、その塩気がアクセントになっていて、とてつもなく旨かった!」


技をかけられながらも最中(もなか)の食レポをする祖父


「「有罪」」


五十鈴とかぐやの声が合わさり、和也はシバかれた。祖母の繰り出されていくストリートな技を景色にお茶を飲む


桜最中、私もお祖母ちゃんも食べたかったんだからお祖父ちゃんは確実に有罪


祖父は祖母の昇○拳でKOしました。





両親がいなくても、祖母と祖父。二人が毎日笑ってくれるから私も笑って過ごせてたんだと思う


でも、お祖父ちゃんが亡くなった。大好きな祖母を残して

祖父は祖母をおいていってまで人のために生きた。

嵐で荒れた天候の中、川に落ちた人達を助けたんだから


「あの人らしいわ、どこまでも優しくて。空みたいに心の広い人だった。」


祖母はそう言って笑った。


葬儀にきた人たちは沢山いて、すごく長い列

祖父が手をさしのべた人の数なんだろうと幼い自分でも理解できた


昔から祖父は、自分が死んだら悲しい顔より笑顔で見送ってほしいって言ってた。

この長い列は黒い服で暗いはずなのに、悲しい顔をして叔父に会いに行くものは誰一人居なかった。


叔父の顔を見て泣き出しても、絶対最後に笑顔を祖父に見せる


私の祖父は、人に愛される人だった。



祖母は寂しいとも悲しいとも言わなかったけど、二人になった家はどこか寂しくて

でも、そんな寂しさを吹き飛ばすかのように祖母は明るかった。


「五十鈴、花言葉って知ってるかしら?」


「花言葉?」


「そう、例えば和也さんは私に桜が似合うからって庭に桜を植えたんだけどね。

花言葉が「高貴」「清純」「精神美」「精神愛」「優れた美人」とかかしら。

私を初めて見たときに、桜から産まれた天女だと思ったんですって」


「少女漫画かな?」


木から落ちて来た女の子と恋愛が始まるやつ的な


「少女漫画なら和也さんが初恋ね…。でも、初恋の人には違う花言葉にたとえられたの。

この押し花の花の花達でね。花言葉もそうなんだけど、この花も特殊でね、この花達は──────────」




その先の言葉を思い出す前に、からだの圧迫感で目を覚ました


体にのしかかる重さで


「ステラ、重いです。アミルは手に持ったものをしまいなさい。

ソラ、止めてくれてありがとう」


目が覚めた五十鈴の上に乗ってるステラと何かの薬品を持ったアミルと、薬品を持った手を必死に止めるソラ。


「昨日、星降る日の話をしたでしょ。 七夕?風にするって 。

鈴お姉ちゃんは明日から魔国に行っちゃうから、今日のうちに色々するんじゃないかなって楽しみで早く起きちゃった!」


「起きなかったら飲ませようかなって作ったんだけど起きちゃったかぁ」


犯罪、犯罪だよ? 私ってこの国の主ですよね? なんで朝から薬を盛られそうになってるの? 残念そうな顔をしないで

桜国に来てからこの子達の成長が恐ろしい方に向かってる気が


「せっかく、アリッサさんが寝込みを襲うといいって教えてくれたのに」


「する、じゃねぇ。原因が悪い大人の教育だったっ」


どうにもならねぇ…。

早く同年代の友達でもつくらないと、完全なるアリッサのクローンが生まれる。

二人が服とか脱ぎ出したら泣く自信があるぞ、私は


「それにしても。朝早いのに騒がしい…」


寝てるわたしを助けてくれたソラをなでくりまわしながら耳を澄ませると、パタパタ歩く音や会話をする声がする

騒がしいけど、楽しそうな雰囲気が伝わってくる


「桜国の星降る日がすっごく楽しみなんだよ。もちろん私達も」


「僕たちも星降る日は初めてだから、すっごく楽しみ」


ああ、魔法国は膜のせいで空も見えませんでしたしね。


「星降る日まで、残り6日ですからね。当日にバタバタしたくないですし」


明日から私は魔国に行きますしね…帰ってくるのは星降る日の当日


「私も楽しみなんですけどね、みんなと過ごす初めての星降る日」


そう言いながら、ささっと着替えてステラとアミルを抱き上げた。

廊下に出ると、よりいっそう聞こえる皆の声。ほんとに皆して早起きしてるらしい


いつもよりも早く起きた、というか起こされたけど。

起きる時間が早くなっただけで朝の空気がとても澄んでる気がする。


そんな朝の空気をおもいっきり肺にいれてから、ゆっくりと吐き出す


今日も空は青天だ




**************




皆楽しみなのか今日の朝食は豪華だった。


松茸の炊き込みご飯がでましたよ。香りがものすごくよかった…

大広間で朝食を食べたから、香りが漂ってるけどそのまま聞きたいことを皆に聞いてみる


「エルフ国、獣人国、ドワーフ国、人間国、宝氷国の星降る日ってなにしてたんですか?

桜国でもやってほしいこととかあるなら聞きたいんですけど」


ひとつやふたつあるかなぁって思って聞いた私が馬鹿だったと、この後に後悔することになる


一瞬の沈黙、そして最初に口を開いたのはロロだ


「姉さん、いなくなってから、綺麗って、楽しいって、わからなくなってた、から。

姉さんと見てた、星降る日は、綺麗だったのに」


今年は一緒に楽しもうねって、いやいや。それより待って、嫌な予感がするんですけど

皆して何か悟った目をしてるんですけど。


「わいらは家にこもってたしなぁ、狐がいるだけで星が降らなくなる言われてて。

わいらにとっては嫌な日やった記憶の方が強いで」


「うん…兄さんも僕も、空なんて見たって楽しくなかったしね」


その言葉に狐一家が頷く。


頷かないで、一生大事にするから。

それ以上言わないでください、私のSAN値がゴリってる


「俺は毎年リドさんと飲み会してたなぁ、リドさんがいなくなってからは一人でナーナの馬鹿食いしてたぜ。

あの人がいなくなってから見る星は、なんだか綺麗に見えなくてな」


しんみりと囁くようにそう言ったガッツ。

ごめん、私が泣きそう。なんで追い討ちをかけてくるの?


「義足になって、色々荒んでたしな。

俺達皆で集まって“誇りがねぇ俺達が、星降る日を見る資格なんてねぇ"って思ってたからな。

もう何年も見てねぇなぁ、降り注ぐ星を」


今年は目に焼き付くぐらい見よーぜ! むしろ降り注ぐ星の下で抱きついたげるよ!

だから、もうやめようよ、ね。

やめてやめて、アイリーン前にでてこないで


「ゴムパン以下男とゴムパンを使ったコース料理を食べてましたわ…顔色を伺いながら。

好きでもないのに笑顔を向けて、好きでもないのにおめかしして。

馬鹿みたいな一日を過ごしてましたわ」


目を伏せないで、大丈夫だから! 今年は大好きなゴリラと過ごせるから! 美味しいご飯もたくさんあるからっ


「星降る日に、お前の顔なんて見たくないって部屋に閉じ込められてました。

窓から降り注ぐ星を一人で見て過ごすのが毎年でしたから…参考になることはなにもないです。ごめんなさい」


謝らないで謝らないで、まって、まって


「俺もロロと一緒。

姉ちゃんがいなくなって、あんなに綺麗だ凄いって思ってた日が、つまんない日になった。

主の頭を光りまくらせる迷惑な日だって最終的に思い始めてた」


反射はしかたないよ… 笑わせないで、この状況で笑えないから

今度帽子送るね、うん


「俺は初めての星降る日だぜマスター、壊れて捨てられてたしな

マスターに出会わなきゃ星も何も見れなかっただろうし」


生まれてくれてありがとうっ


「つい最近初めて空を見ただけでもすっごく綺麗だったのに」


「キラキラ光が降ってくるなんて、凄いね」


そうだね、一緒にお空綺麗しようね。お姉さん頑張っちゃう…


「我らは死ぬか生きるかでしたから」


「食べるものも草しかなかったしな」


「烏天狗一族は、死にたいと願って生きていたので。星なんて見てられませんでした」



………


地獄のバーゲンセール!! 出せば出すだけでるじゃん!!

一年に一度の日が、最低最悪な日になってるじゃんっ

星降る日じゃなくて、厄降る日じゃん!


確かに聞いたのは私だけどさ…


「はぁぁぁ…」


五十鈴は手で目元を隠して上を向く。

そうしないと零れそうだからだ、なんかこう…熱いものが


それと

朔、琥珀、背中撫でてくれてありがとう。でもね、それも追い討ちです



***********




「七夕風にするって言っても短冊とか、七夕飾りを真似たものをつくるぐらいですけどね」


そう言いながら、ガッツとドルガドに七夕飾りの説明を始めた


「毎年使うものですから、デザインも少しお洒落にしましょう。

ちなみに、これが紙で作った飾りです」


机の上に並べたのは、星飾り、提灯、吹き流し、菱かざり、輪飾りだ


「これ全部紙で出来てんのか? 器用なもんだな」


「これをどう使うんだ?」


ドルガドとガッツは飾りを手にとって興味深そうに見ている。


「桜の木に飾るんです。

重くならないようにしないといけないから軽量希望で」


「何か意味があんのか?」


「ありますよ。

提灯なら"心が温かく、明るくなりますように"


吹き流しなら"機織りの上達"


輪飾りなら"みんなの夢が繋がり、叶いますように"


菱飾りなら"星降る日を祝っていることを神様に示す"


星飾りなら"星々にいる神様に願いが届きますように"


とかですね」


「そりゃ、大事な飾りだな。気合い入れてつくらねーとな」


「嬢ちゃん、どんな感じにするかは決まってるのか?」


そう聞かれて、机の上に金平糖の山をドンっと出す


「決まってはいませんけど、星飾りは金平糖を作るから飾りは作らなくてもいいかなって思ってるんです」


夜空をデザインした金平糖、一粒一粒がキラキラと宝石のように光ってる


「コンが金平糖を小瓶にいれて首に掛けられるようにしたらいいんじゃないかって提案してくれて

七夕限定の金平糖でも作って、桜国の皆に配って首から下げてもらうことにしました。

宣伝にもなるので、観光に来た人も買うと思います。

小さい瓶は魔法国でお洒落で可愛いデザインのを作ってくれるよう、既にコンが交渉しに行きましたし」


桜国の経理担当、稼ぐときの行動力がすごいなと、改めて思いましたよね…


「さすがリドさんの息子だな!」


嬉しそうに笑うガッツに私も笑みをもらす。


「だから、星は別に作らなくても大丈夫です。他のは二人に頑張ってもらいますけど」


金平糖を三人でボリボリ食べながら話を続けていく


「吹き流しは意味を変えて、皆が上達したいものが上達します様にって意味の飾りにしたいんですよねぇ」


「上の部分だけ色んな形にすりゃいいんじゃねぇか?」


「人それぞれだしなぁ、上達したいもんなんて。色んな形がありゃ人それぞれって意味になるだろ

ガッツの旦那と一緒に作りゃ、いいのが出来そうだしな」


「採用です採用。私が考案しなくても大丈夫そうですね」


いやいや、さすがにデザイン考えんのは大変だってと二人が言ってくると

五十鈴はフッと笑みを浮かべ、ポンッと二人の肩に手を置いた


「私は二人の技術もセンスも信じてます。桜国一の職人ですから。

さすが、私の自慢の民で友で家族ですね」


その言葉を聞くと、二人は勢い良く立ち上がった



「「任せてくれ、最高の飾りを作ってやるぜ」」



二人はバサリを上着を羽織り、太陽の光降り注ぐ道に歩いていった


「戦場に向かう人スタイルでかっこ良く立ち去りましたけど、しっかり金平糖のお皿を持ってきましたね。

ドルガドなんて、髭に金平糖のカスが絡まってましたし」


やる気がでたのはいいことだし、言ったことは本当のことですけど。

チョロすぎません?心配になるんですけど




***************




明るかった空は、星が輝く夜空の顔を見せ始めている


鳥居から主殿までの桜道には、わいわいとそれぞれが短冊を書き、それを烏天狗一族が桜の木に掛けていく


「五十鈴さーん!」


バサバサと羽音とクウの声か響いた。飛んできたクウに五十鈴とマトンが笑顔で手をふる


「クウ、疲れてませんか?」


「問題ないですよ、頼まれてたものもしっかり持って帰ってきました」


クウが鞄から出したのは、願い事が書かれた短冊。


魔法国で仲良くなったリーナ達に短冊のことを話したら、自分達も桜国に短冊を飾りたいって言われたので。


獣人国、人間国、氷宝国の主や副官、仲良くなった人にも書いてもらおうと、朝早くから短冊の紙をクウに届けてもらったのだ


短冊の紙は桜国産の和紙。防水仕様で様々な柄があっておしゃれで可愛い

マトンに和紙を投げてもらい、宙に散らばる和紙を短冊サイズに刀でシュババって切って、それを皆に配った


渡された短冊の一番上の願い事が見えたのだけど


“民が(みな)、幸せであります様に“


ここまではいいんだけれど、小さく、ほんとに小さい文字で


“仕事が減ります様に”って、書いてある


「名前を読まなくてもわかる、絶対にパルドさんだ…。マトン、とりあえず頼みます」


「ああ、任せてくれ」


短冊を掛けるときに使う紐はマトンが用意してくれた。願い事が書かれた紙の上側に映える二重叶(にじゅうかのう)結び。

ひもの表側は「口」、裏側は「十」という漢字を表し、合わせると「叶」になる結び方だ。

願いごとが叶うようにという意味が込められていて、日本古来から受け継がれている結び方


マトンがせっせと朝から大量に結んでくれた、いま渡された短冊にも作っておいたのを結びつけていく


「完成だ」


「ありがとうございます。 二人はもう短冊書きましたか?」


そう聞くと二人は頷き、もう青天に掛けてもらったそうだ


「じゃあ私はこれを掛けてもらってきます。疲れてるでしょうから、しっかり休んでください」


パルドさん達の短冊を持ち、桜並木を歩く。ちょうど梅と椿が居たので短冊を渡し掛けてもらい

桜の木に色とりどりの短冊が揺れる様を見ながら歩く


一つ一つの木を見ながら歩いてると、一つの木の下にマルラが静かに佇んでいるのを見つけた


その手に持ってる短冊は、ぎゅっと握られた手に潰されてクシャクシャになっている


それぞれの願いが書かれた様々な短冊が風に遊ばれ揺れる

それを見つめるマルラが、無意識だろう小さな声で呟いた



「馬鹿みたい…」







記念すべき100話。

今年のバレンタインはゴリラチョコを奉ることにする

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