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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
序章 森の主はじめました。
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01 鳥居をくぐっただけなのに

桜木(さくらぎ) 五十鈴(いすず)は高校最後の日に黒いセーラー服を着て神社に行くのは漫画っぽいような気がするなっと考えながら歩いていた。


卒業式の後、何となく昔から行っていた神社に向かって歩みを進める

空は快晴、青空が眩しい。

木々がさやさや揺れる音だけがする静かな空間、ゆっくりと長い階段を上っていくと、だんだん見えてくる赤い鳥居だ


五十鈴は神社にある赤い鳥居が昔から好きだった。


鳥居に一礼してからくぐるのは毎回の事。

賽銭箱の前に立ち会釈をし、賽銭箱にお賽銭を入れる。

二礼二拍手一礼の拝礼して、会釈を五十鈴がしようとしたとき背後からガシャンと何かが落ちるような音がした。


「え?」


五十鈴は背後から聞こえた音を確認するために、恐る恐る振り返ると、そこには白い鞘の刀が一振り落ちていた。


「何処から……?」


五十鈴が回りを見渡すが特に何もない、突然現れた綺麗な刀。何故かわからないが吸い寄せられるように、ゆっくりと五十鈴は刀に手を伸ばした。


「白くて綺麗な刀ですね……。」


手に取ると余計に綺麗に見える、白い鞘には金と銀の色をあしらわれた桜が描かれている。

鞘も柄巻も白いが鍔は漆黒。何故か手に馴染む気がした。


その時、リンッと鈴の音が耳に響く。


「鈴の音?どこから…」


鈴の音をたどると、その音は鳥居から聞こえた気がした五十鈴は刀を賽銭箱の上に置き、ゆっくりと鳥居をくぐる……


「…へ?」


五十鈴は自分でも聞いたことのないような変な声を出していた。

それも仕方ないのかもしれない、何故かって?


「ここ、どこですか?」


右を見ても森、左を見ても森、振り替えると鳥居はあるけど賽銭箱や社はない。

長い階段も無くなっているのだから間違いなく最初にいた場所じゃないのは確かだ。

もう一度鳥居を潜るが景色に変わりはない。

唯一変わらないものがあるとすれば賽銭箱の上に置いたはずの刀が一本落ちていること。


迷わずその刀を拾った。防衛手段はとても大事だ


「……とりあえず散策しますか」


桜木 五十鈴、意外と動じない性格。

心が宇宙よりも広いと友人に言われ続けた人物である。


「漫画みたいな展開……少しわくわくしますね。特殊能力とかあったら楽しそうではありますが。高い木の上とかに飛び乗れたりしませんかね?」


ためしにその場で軽く、ほんとに軽くジャンプをした。

ただそれだけなのに五十鈴の体は飛びあがり高い木の枝に足をつけていた


「…………わお」


見下ろすと地面は数メートル下。高所恐怖症なら一発でアウトだ


「……降りてみますか」


普通ならこの高さ、落ちたら死ぬかもしれないが迷わず飛び降りる。

とんっと軽やかな音とともに降り立つ五十鈴


「……他にも試してみますかね」


色々やってみて解ったことは身体能力が化け物並みになっている


「まさか蹴りひとつで大樹が折れるとは思いませんでした。

ふむ、身体能力があり得ないほど高くなってるのは解りました」


軽く蹴っただけで大樹がボキリと折れたのは流石に予想外だった。

他にも魔法的なことも色々やってみたが、治癒(ちゆ)(シールド)りを張れるぐらいで他は何も出来なかった。


「身体能力がゴリラですから、まぁ大丈夫でしょう。

それにこの刀、何でも斬れるなんて何処かで見たような刀ですね……蒟蒻(こんにゃく)も斬れるといいんですけど」


すっかり相棒になった刀を握りしめ森の中を進む。


「動物も何も居ませんね。森ばかりで特にな「ゴツッ」いたっ」


突然の痛みにぶつけた額を擦る、何もないの何かにぶつかり目を瞬く


「透明な壁?」


コンコンっと何もない場所をノックする。目には見えないが透明な壁が行く手を阻んでいるようだ


「ただの壁か、それとも結界とかですかね?この森が囲われてるのか、それとも向こう側が囲まれてるのか。

この森が何なのかすら解りませんけど。異世界的定番で考えるなら、森の中心に何かありそうな感じがしますし……行ってみますか」


森の中心があるであろう方向に向かおうとすると、けたたましい音が森に響いた。

何かと何かがぶつかり合うような音がする

五十鈴は迷いも恐怖も感じないまま音のする場所まで木を飛び移りながら走り出した。

音の方に近付くにつれ、話し声が耳に届く


狼族等(おおかみぞくなど)に私たち鬼神が負けるとでも思っているのか?鼻と耳がいいだけの犬がよく吠えるな」


「グルルルルッ、なめるなよ。その角、へし折ってやる」


殺気を滲ませ睨み合うもの達。額に角が生え黒髪に(くれない)色の瞳、刀を持った鬼神と呼ばれた青年と、銀髪に頭の上に狼の耳が生えた狼族と呼ばれた青年

争っているのは見てとれるが、何故争っているのかは見ているだけじゃ解らない。

とりあえず木の上から観察することにした。


「この森は捨てられた、結界を張られ日に日に結界は迫り範囲は狭くなっていくばかり。

この結界を止めるにはどちらか一つの一族だけになること、同胞を守るためにも早々に死んでくれ」


「こちらも同じこと。生き残るのは狼族だ、貴様ら鬼神を根絶やしにしてくれる」


「「死ねっ!」」


鬼神の刀と狼の爪、両者の、攻撃ががぶつかり合おうとしたはずだった


「な!?」


「うおっ」


ガキンっと両者の間に入り、刀は刀で爪は鞘で受け止めた五十鈴


「ちょっと失礼しますよっと」


軽い力で二人を押し返すと二人は爆風にでも当たったかのように吹っ飛ぶ



「あ」


五十鈴も予想外だったのかぶっ飛んだ二人を見る。


二人とも目を見開き固まっている、予想以上に力が強かったらしい、申し訳ない


「だ、大丈夫ですか?」


五十鈴が声をかけると二人は慌てたように五十鈴の前に並び膝を地面につけた


「ん!?」


五十鈴を見上げる端整な顔が二つ、どことなく瞳がキラキラしている気がするが、気のせいだと思いたい


(あるじ)っ!」


(ぬし)様っ!」


「いえ、違います」


真顔でそう即座に返した五十鈴だが、二人は気にしていないようだ。


「いいえ、あなた様はこの森の主です」


「その金の瞳が何よりの証拠です」


「金の瞳?」


五十鈴は慌ててポケットに入っている鏡を手に取り自分の顔を写し出す。


「金の……瞳」


鏡に写った自身の瞳は金色に輝いていた。


「この森の主は金の瞳を持っていると言われています。」


「私達は主様がこの森に来るのをずっと待っていました」


「どうかこの森をお救いください」


「主様はあなた様しかいないのです」


「「主/主様」」


争っていたとはおもえない程にいきのあった声でこちらを見る。


今日は高校の卒業式。何となく昔から行っていた神社に向かって歩みを進め


鳥居をくぐったら、森の主になりました。


「マジですか……」









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