表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/54

「その名前を呼ぶために ――満月の夜、世界が止まる」

満月は、迷いなく空にあった。


雲ひとつない夜空。

白く、強く、すべてを照らす光。


まるで――

“逃げ場を与えない”ように。


学園の中庭。


俺は、その中心に立っていた。


誰に言われたわけでもない。

誰かに呼ばれたわけでもない。


それでも、分かっていた。


――ここで終わる。

――ここで始まる。


ゼロの声が、静かに響く。


(最終選択地点、確定)


(世界再構築準備、完了)


(マスターの発声をトリガーに、

 全システムが更新されます)


息を吐く。


心臓の音が、やけに大きい。


「……四人、来てるんだろ」


(はい)


(すでに、観測可能範囲内に全員存在)


「呼ばなくても、来るか」


(それが“関係性”です)



集結


最初に姿を現したのは、ローゼリアだった。


白いワンピース。

風に揺れる髪。


「……来ました」


その声は、震えていない。


次に――アルティナ。


腕を組み、いつもの強気な表情。

だが、その奥に緊張がある。


「逃げなかったわね。

 上出来」


三人目――ルナ。


静かに歩き、

俺の正面ではなく、少し横に立つ。


「未来、見えない。

 でも……これでいい」


最後に――リュミエラ。


ゆっくりと歩み寄り、

一歩引いた位置で止まる。


「……準備は、整いましたわ」


四人。


誰も、泣いていない。

誰も、取り乱していない。


それが、何よりも重かった。



世界の停止


その瞬間。


風が止まった。


噴水の水が、

空中で静止する。


遠くの笑い声も、

虫の音も、

すべて消える。


ゼロが宣言する。


(世界時間、停止)


(観測対象――マスター及び四名のみ)


(最終選択フェーズへ移行)


空気が、透明になる。


逃げ道はない。



ブランデーの言葉


俺は、四人を見る。


一人ずつ。

ちゃんと。


「……ありがとう」


それが最初の言葉だった。


「ここまで、

 俺と一緒にいてくれて」


ローゼリアが微笑む。


アルティナが鼻で笑う。


ルナが目を閉じる。


リュミエラが静かに頷く。


「俺は――」


言葉が、少し詰まる。


でも、止まらない。


「最初、何も分からなかった。

 強さも、世界も、恋も」


拳を握る。


「でも、

 お前たちと出会って、

 全部変わった」


胸の奥が熱くなる。


「優しさを知った。

 強さを知った。

 未来を知った。

 覚悟を知った」


一歩、前に出る。


「だから――」



選択


ゼロの声が、重なる。


(発声を確認次第、

 世界再構築を開始します)


四人の視線が、

俺に集中する。


逃げるな。


迷うな。


これは――

俺が決めることだ。


深く息を吸う。


そして。


 


「俺が選ぶのは――」


 


その名前を、呼んだ。


 


「――ローゼリア」


 



世界の反応


光が、爆発した。


満月が、さらに輝きを増し、

中庭全体を白く染める。


ゼロの声が響く。


(選択確定)


(対象:ローゼリア・ノア・リヒト)


(“勇者の伴侶”として認識)


(世界再構築――開始)



ローゼリア


ローゼリアは、

一瞬、理解できなかったように目を見開いた。


「……え……」


次の瞬間。


涙が、溢れた。


「……本当に……?」


一歩、近づく。


俺は、はっきり言った。


「俺が一番、

 “幸せになりたいと思えた相手”が、

 ローゼリアだった」


彼女の肩が震える。


「優しさに逃げたんじゃない。

 優しさに、救われたんだ」


ローゼリアは、泣きながら笑った。


「……ずるいです……

 そんな言い方……」


崩れるように、抱きついてくる。


「……嬉しい……

 嬉しいです……っ」



アルティナ


アルティナは、

一瞬だけ目を閉じた。


そして――笑った。


「……そう」


短い言葉。


だが、その中に全部あった。


「いいじゃない。

 納得できる理由だった」


拳を軽く握る。


「負けたけど――

 私、ちゃんと戦ったわ」


そして、俺を見る。


「後悔すんなよ」


それが、彼女の“最後の一撃”だった。



ルナ


ルナは、静かに頷いた。


「……この未来、見たことある」


涙は出ていない。


でも、声は少し震えていた。


「でもね。

 今の方が、好き」


小さく笑う。


「未来じゃなくて、

 “今のブランデーが選んだ結果”だから」


胸に手を当てる。


「……これで、いい」



リュミエラ


リュミエラは、

深く一礼した。


「おめでとうございます」


完璧な所作。


だが――

目の奥が、ほんの少しだけ揺れている。


「あなたが選んだ道、

 誇りなさいませ」


顔を上げる。


「そして――

 幸せになりなさい」


その言葉は、

王女としてではなく、

一人の少女としての祝福だった。



再構築


ゼロが告げる。


(世界再構築、完了)


(安定値――最大)


(分岐未来、確定)


風が戻る。


水が流れる。


音が、世界に帰ってくる。


すべてが、

“正常”に戻った。



ラスト


俺は、ローゼリアの手を握る。


「……これから、よろしく」


ローゼリアは、涙を拭きながら笑った。


「はい……

 ずっと、よろしくお願いします」


後ろで、三人がそれぞれの方向を向く。


終わりじゃない。


それぞれの――

“新しい始まり”。


満月は、静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ