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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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50/53

「重なる想い、揺れる世界 ――“全員の本音”が交差する夜」

その夜、学園の中庭は静まり返っていた。


昼間は生徒で溢れかえる場所も、

夜になると、噴水の水音だけが淡々と響く。


俺は、そこに立っていた。


――四人を呼んだのは、俺自身だ。


逃げないと決めたから。

選ぶだけじゃなく、向き合うと決めたから。


ほどなくして、一人目が姿を見せる。


◆ローゼリア


白いカーディガンを羽織り、

いつもと変わらない柔らかな微笑み。


「ブランデー様……

 皆さんも、呼ばれているのですね」


その声は穏やかだが、

覚悟を知っている人の目をしていた。


次に現れたのは――


◆アルティナ


腕を組み、壁に背を預ける。


「……全員集合ってやつね。

 まあ、覚悟はしてたわ」


強気な口調の裏に、

わずかな緊張が滲んでいる。


そして――


◆ルナ


静かに歩いてきて、

俺の隣ではなく、少し離れた場所に立つ。


「未来、見えない。

 でも……だから来た」


最後に――


◆リュミエラ


夜でも分かるほどの気品。

王女としての姿勢を保ちながらも、

その瞳は“一人の少女”のものだった。


「皆さま……

 本日は、お集まりいただきありがとうございます」


四人が揃った瞬間。


空気が、張りつめた。



【沈黙を破ったのは、アルティナ】


「で?

 ブランデー、今日は“誰を選ぶ”話?」


単刀直入。


逃げ道を断つ言葉。


俺は首を振った。


「違う。

 “どうやったら、誰も失わないか”を話したい」


四人の表情が、微かに揺れる。


ローゼリアが、そっと言った。


「……それは、とても優しいけれど……

 同時に、とても残酷な願いですね」


ルナも小さく頷く。


「一人を選ぶ未来は、見える。

 でも“全員が救われる未来”は……

 まだ、輪郭が曖昧」


リュミエラは、静かに問いかけた。


「ブランデー。

 あなたは“全員を恋人にしたい”わけでは、ありませんわよね?」


核心だった。


逃げずに、答える。


「……違う」


その一言で、

少しだけ空気が緩む。



【ブランデーの告白】


俺は、噴水の縁に腰を下ろし、

四人の顔を順に見た。


「ローゼリア。

 俺は、君の優しさに救われた」


彼女の指先が、きゅっと握られる。


「アルティナ。

 君の強さは、俺に“弱くてもいい”って教えてくれた」


アルティナは、視線を逸らしながら舌打ちする。


「ルナ。

 君は未来を捨てて、今を選んだ。

 それがどれだけ勇気のいることか、俺は知ってる」


ルナは、目を閉じて息を吐いた。


「リュミエラ。

 君は国を背負って、それでも恋を選ぼうとしている」


リュミエラは、胸に手を当てて一礼する。


「ありがとう。

 それだけで、報われますわ」


俺は続けた。


「俺は……

 誰かを“都合よく選び続ける”つもりはない」


その言葉に、

全員の視線が集まる。


「恋は競争じゃない。

 勝った負けたで、切り捨てるものじゃない」


一度、深呼吸。


「でも同時に、

 “全員を恋人にする”なんてことも、しない」


アルティナが、低く笑った。


「……当たり前でしょ。

 それやったら、殴る」



【世界の条件】


その時――

ゼロの声が、全員に聞こえる形で響いた。


《解析結果を共有します》


全員が息を呑む。


《この世界は“勇者の感情”を基軸に構築されています》


《特に“恋愛感情”は、

 世界安定値を大きく左右する要素》


《条件は三つ》


一つ目。


《勇者が“自分の幸福”を否定しないこと》


ローゼリアが、小さく頷く。


二つ目。


《選ばれなかった者が、

 “自分の価値を否定しない未来”を持つこと》


ルナが、息を呑んだ。


三つ目。


《選ばれた相手が、

 “他者を排除しない覚悟”を持つこと》


リュミエラが、目を見開く。


アルティナが腕を組んだまま、言った。


「……つまり?」


ゼロは淡々と答える。


《“誰かが幸せになることで、

 誰かが壊れない”選択をしなければ、

 世界は歪みます》


静寂。


重いが、逃げられない真実。



【それぞれの本音】


最初に口を開いたのは、ローゼリアだった。


「……わたし、分かっていました」


微笑みながらも、瞳は潤んでいる。


「ブランデー様が、

 “全員を抱え込む”方ではないこと」


一歩、前に出る。


「それでも、

 選ばれなかったとしても……

 わたしは、わたしで在りたい」


アルティナが続く。


「私も。

 負けたからって、価値がなくなるほど

 弱くなったつもりはない」


拳を軽く握る。


「……悔しいけどね」


ルナは、少し俯いてから言った。


「未来が一つじゃなくなった今……

 “選ばれなかった未来”も、

 ちゃんと生きられる気がする」


最後に、リュミエラ。


「恋は、所有ではありません」


凛とした声。


「誰かを選ぶということは、

 他を否定することではない」


視線を俺に向ける。


「ブランデー。

 あなたがどの道を選んでも、

 わたくしは“あなたを愛した自分”を誇ります」


その言葉で――

胸の奥が、少し軽くなった。



【ブランデーの決意】


俺は立ち上がり、

四人を見渡す。


「……ありがとう」


一人ずつ、ちゃんと目を見て言う。


「まだ、答えは出せない」


正直な言葉。


「でも、

 “誰も失わない未来が存在しない”とは、

 俺は思わない」


夜風が、噴水の水面を揺らす。


「時間をくれ。

 逃げるためじゃなく、

 本当に選ぶために」


四人は、それぞれのやり方で頷いた。


誰も泣いていない。

誰も取り乱していない。


それが、何よりの証拠だった。



【ラスト】


その場を離れた後、

ゼロが静かに告げる。


(マスター。

 世界安定値、上昇中)


(“全員が自分の価値を肯定している”状態は、

 極めて稀です)


「……まだ、道の途中だな」


(はい。

 ですが――)


一拍置いて。


(“破滅する未来”は、

 ほぼ消滅しました)


夜空を見上げる。


星は、まだ揺れている。

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