「恋の戦闘力、世界レベル。――今日から本格的に修羅場です」
ローゼリアとの初デート、初キス――
それは世界に“恋の魔法法則が覚醒した”瞬間でもあった。
翌朝。
俺はいつもより早く目が覚めていた。
胸が軽い。
呼吸が楽。
なんというか――世界が明るく見える。
【ゼロ】
(おはようございます、マスター。
昨日の“恋の確定イベント”により……)
(マスターの存在値が 13% 上昇しました)
「存在値って何?」
(世界への“影響力”指標です。
マスターの感情が世界現象に干渉できる度合いです)
(つまり――昨日のキスで世界が強化されました)
「ロマンチックなのか、物騒なのかどっちだよ」
(どちらもです)
うわ、真顔で返された。いやスキルか。
とりあえず着替えて学園へ向かおうとドアを開けたら――
「おはようございます、ブランデー様♡」
ローゼリアがいた。
笑顔。
けれど耳まで真っ赤。
昨日の余韻がまだ残っている。
「き、昨日は……ありがとうございました。
本当に、幸せで……」
「俺も楽しかったよ」
そう言うと、
ローゼリアは溶けるように微笑んだ。
ただ――
今日はそれだけで終わらない。
横から気配が三つ。
「おはよ、ブランデー。今日の授業一緒に行くわよ」
アルティナ。
「ブランデー様、朝の茶会をご一緒しませんこと?」
リュミエラ姫。
「……ブランデー、お昼、空いてる?
一緒に……未来、見に行こ?」
ルナ。
四方を囲まれて詰んだ。
ローゼリアは背筋を伸ばして言う。
「すみません、今日の朝は……
“昨日のデートの続き”がありますので」
「は?」
全員の空気が変わった。
特にアルティナは剣を抜きそうな勢い。
「あんたら……昨日は昨日。今日は今日でしょ?
次のデート権、私が取るから」
「ふふ、ご自分の実力を過信なさってませんこと?」
「……あとの二人は、今日の“運命が一番良い日”よ。
つまり私が勝つ」
ギラッ……と全員の目が輝く。
ローゼリアは下がらない。
「昨日ブランデー様とデートしたのは私です。
デートの“補習時間”があってもおかしくありません」
(デートに補習という概念があったんだ……)
ゼロが小声で囁く。
(マスター、気をつけてください。
現在、四人全員の“恋愛レベル”が急上昇しています)
(恋愛レベル上昇 = 魔力増幅 = 世界干渉値上昇)
(つまり――このままだと世界が物理的にヤバいです)
「恋のせいで世界が壊れるのか?」
(可能性あります)
笑えない。
◇
【登校途中】
四人が左右と後方に密着状態で並ぶ。
俺は真ん中で命の危機を感じていた。
ローゼリア
「昨日の手……覚えてます。
あの温度……今日も欲しいです……」
アルティナ
「昨日選ばれたからって調子乗んないでよ?
私は落ちてないんだから」
姫
「“初キス”なら、わたくしが次をいただきますわね♡」
ルナ
「……私は“二回目の未来”を見ちゃったの。
次のデート……私だった」
バチバチバチバチバチバチバチ!!
魔力がぶつかり合い、
登校道の草木が揺れ、
遠くにいたはずの野良モンスターが気絶して倒れる。
俺
「おい、やめろ世界が死ぬ!」
四人
「「「「負けない!!!!」」」」
ダメだこりゃ。
◇
【学園到着】
校門を入った瞬間、
生徒たちの視線が突き刺さる。
「昨日の表彰式、見た?」
「ブランデー様がローゼリアを選んだ瞬間……泣いた」
「いや私はルナ派」
「アルティナ様が吠えたの最高だった」
「姫は……なんか尊かった」
恋愛派閥ができていた。
まじか。
俺、異世界の恋愛イベントの中心にされた……?
やめてくれ、胃が死ぬ。
◇
【午前授業:地獄の隣席争奪戦】
席順が毎日“ランダムシャッフル制”のため
今日は誰が隣になるかで四人が睨み合っている。
結果――
ローゼリア「隣、失礼します♡」
アルティナ「は?なに勝ち誇った顔してんの!」
姫「嫉妬はみっともないですわよ、アルティナ」
ルナ「……ここ、ブランデーの香りが残ってる……」
アルティナ
「変態かてめぇ!!!!」
教室天井のシャンデリアが揺れるほどの魔力衝突。
先生
「授業を静かに聞けっ!!」
四人
「「「「はい♡」」」」
先生が後ずさった。
完全に教師より強い。
◇
【昼休み:告白4連発】
俺が弁当を開けると同時に四方向から声が飛ぶ。
ローゼリア
「ブランデー様。あーん……しますか?」
アルティナ
「あんた自分で食え。てかそれ肉半分よこせ」
リュミエラ
「お昼のクッキングはわたくしが担当しますわ♡
王家秘伝の“恋成功レシピ”です」
ルナ
「ブランデー、今日の昼食を選べば未来が変わるよ。
“食べた相手のデート勝率+20%”」
四人
「「「「選びなさい」」」」
いや怖い。
俺
「仲良く食べちゃダメなのか?」
四人
「「「「無理!!!!」」」」
弁当が泣いた。
◇
【放課後:デート権争奪ミッション】
突然、校内アナウンスが流れた。
《放課後に特別イベントを開催します!
“ブランデーと次のデート権争奪・女神の試練”》
俺
「なんで俺が景品扱いなんだよ!!」
ゼロ
(恋愛イベント発動中です)
四人は目を輝かせる。
ローゼリア
「……次も、わたしが……」
アルティナ
「勝つのは私よ」
姫
「まあ皆さん、負けても泣かないでくださいませ♡」
ルナ
「未来……もう変えてあるから」
いやお前ら仲良くしろとは言わんが、
せめて世界に負荷を与えるな。
ゼロ
(マスター、気をつけてください。
この四人の“恋の魔力”……)
(レベル上昇により
世界的災害クラスの威力になっています)
俺
「恋ってそんな規模の現象だっけ?」
(マスターのせいです)
俺のせいかよ。
◇
【特別イベント会場】
女神像の前に集まった四人。
司会(教頭)
「ではこれから!!
《次のデート権争奪・恋姫試練大会》を始めます!」
生徒たち
「「「うおおおおお!!!」」」
なんで盛り上がってんだよ。
試練内容は以下。
1.ブランデーに最もときめきを与えた者にポイント
2.ブランデーの“心拍変動”を女神像が計測
3.一番ポイントを稼いだ者がデート権獲得
いやこれもう公開処刑じゃん。
ゼロ
(マスター、諦めてください)
◇
【試練1:ドキドキ告白】
ローゼリア
「……昨日の続き、したいです」
心拍↑ 24%
アルティナ
「ブランデー。次は絶対私の番だから」
心拍↑ 31%
姫
「初夜はどんな飾りがお好きです?
わたくしは白がお似合いだと思います♡」
心拍↑ 55%
(おい待て俺)
ルナ
「ねぇ……次のキスの未来、見たい……?」
心拍↑ 60%
俺
「やばいからやめろ!!心臓止まる!!」
四人
「「「「まだまだこれからよ♡」」」」
◇
【試練2:手を繋ぐ選手権】
順番に俺と両手を繋ぎ、女神像が反応を測る。
ローゼリア
“ぎゅ……♡”
心拍↑
アルティナ
“……っ”
心拍↑↑
姫
“手の甲にキス”
心拍↑↑↑
ルナ
“組指で密着”
心拍↑↑↑↑
女神像
《心拍数限界まで上昇しています。死の危険があります》
俺
「死ぬんかい!!」
四人
「「「「ごめん♡」」」」
いや謝り方かわいいけど怖い。
◇
【試練3:甘い言葉ささやき】
観客「うおおおお!!」
教頭「学園の名誉のために全力を出せ!!」
俺「やめろお前らぁあ!!」
ローゼリア
「……二人きりの夜、また……寄り添ってほしいです」
心拍↑
アルティナ
「いつか“恋人”って呼ばせなさいよ」
心拍↑↑
姫
「では次は……唇以外の場所にも……♡」
心拍↑↑↑
ルナ
「……ねぇ、未来で言ってたよ。“好き”って」
心拍↑↑↑↑↑
女神像
《限界突破。世界の恋愛魔力が上昇し始めました》
ゼロ
(マスター、キスより危険です)
俺
「なんでキスより危ないんだよ!!!」
◇
【結果発表】
教頭
「デート権は――」
会場が静まり返る。
教頭
「本日最もブランデー様をときめかせた……
《ルナ》さんです!!!」
歓声。
ルナは小さく笑って言う。
「……やっぱり未来は変わらないね」
ローゼリアは悔しそうに胸に手を当てたが、笑った。
「おめでとうございます……次は負けません」
アルティナは拳を握る。
「よし、ルナ。次は絶対ぶっ倒す」
姫は優雅に拍手した。
「次はわたくしが勝ちますわ」
ルナは俺を見上げて言った。
「……じゃあブランデー。
“二人きりの未来”を見に行こうか」
俺
(心臓もつかな)
ゼロ
(持ちません)
おい。
◇
【ラスト】
四人の恋は、加速を始めた。
世界の恋魔力も同時に上昇し続けている。
ゼロ
(マスター。
このままいけば“世界の形”が変わります)
(恋のエネルギーで――世界の構造そのものが進化します)
世界の進化。
恋の進化。
そして俺の心の進化。




