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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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43/53

「舞踏ショー決戦 ―― 戦う理由は“恋”でいい」

学園祭2日目・夕方。


いよいよリュミエラ姫の《舞踏ショー》本番が始まる。


巨大野外ステージは満席。

観客席は溢れ、遠くの屋上や渡り廊下にまで人が押し寄せていた。


今回の出し物はただのダンスではない。


“王族舞踏式プロム”

観客の中から“運命の相手”を選び、

ひと曲だけ踊りを捧げるという――恋と王族の象徴的儀式。


そしてその“運命の相手”として名指しされているのが――俺だ。



照明が落ち、静寂。


次の瞬間――

白いドレスが光に溶け、リュミエラ姫が登場した。


息を呑む観客たち。

誰も声を出せないほど美しかった。


“王女”じゃない。“戦乙女”でもない。


ただ“恋する少女”の顔だった。


演奏が始まり、姫が観客席に向かって指を伸ばす。


「ブランデー。

 どうか、わたくしと一曲、人生を踊ってください」


拒否なんてできるはずがない。


手を取り、ステージの中央へ。


音楽に合わせて踊る――

なんて優雅で現実離れした時間なのに

姫の手の震えがはっきり伝わってきた。


「怖い?」と聞いたら、


「いいえ……幸せすぎて、怖いのです」と答えた。


観客は悲鳴にも似た拍手。

憧れ、焦燥、嫉妬、歓声――

全てが混ざり、ステージは熱に包まれていく。


だが――


ゼロが警告した。


(マスター、敵本隊の魔力反応――25名!!

 襲撃は今!!)


次の瞬間――ステージの上空が裂けた。


空から影が降り注ぐ。

刃、呪詛、魔力、爆発の予兆。


「勇者の幸福の象徴を――破壊しろ!!」


ステージが狙われている。


目的はリュミエラ姫の“公開告白”の破壊。

 つまり俺の幸福そのものを叩き潰すこと。


俺が動こうとした瞬間――

姫が俺の手を強く握った。


「行かせませんわ、ブランデー。

 この曲を最後まで踊りたいのです」


「でもステージが――」


「だから守ります。

 “あなたを守るのがわたくしたち”ですわ」


視線だけで――四人と意思が繋がる。


次の瞬間。


■ローゼリアの結界が張られる


「――《境界結界・願花》!!」


ステージの上空から降りそそぐ刃も呪いも爆破も

全部、舞い散る花びらへ変わる。


観客は気づかない。

ただ花が舞って美しいとさえ思っている。


■アルティナが跳ぶ


黒剣が閃き――影の軍勢の武器を次々と叩き折る。


「ここは踊りのステージ。

 血を流す場所じゃない」


次の瞬間――


「消えろッ!!」


振り下ろした一撃が地面に走り、

影の兵を数十人まとめて吹き飛ばした。


■ルナが“暗殺計画”そのものを書き換える


「――《未来改稿フューチャーリライト》」


ルナは未来のページを破り、違う未来を上書きした。


「“ここで暗殺は失敗する未来”に変更した。

 もう勝ち確だよ」


■姫は踊りながら魔法を撃ち返す


「王族の恋は弱さではありません。

 強さですわ!!」


槍の形をした魔力が、舞踏の軌道のまま敵を撃ち抜く。


観客は音楽に夢中で

ここが戦闘の最中だとすら気づいていない。


演目と戦闘が融合している――瞳から涙が出そうになるほど美しい。



戦いながらも、演奏は止まらない。

姫は俺に視線を向けて微笑んだ。


「わたくしは――今日だけは、王女ではなく“恋する女”です」


そして俺の胸に手を当てて囁く。


「ブランデー。

 あなたの“初恋”を聞かせてください」


世界が止まった。


姫の瞳だけじゃない。


ローゼリアも、アルティナも、ルナも――

戦いの最中に聞いていた。


観客の声は届かないのに、

俺の“心”の声は四人に届く。


「初恋……?」


ずっと閉じていた記憶。

怖くて蓋をしていた記憶。


俺は、戦いの最中に――初めて口を開いた。


「昔……ずっと好きだった子がいたんだ」


姫の目が揺れる。

四人の心が震える。


「でも、俺みたいなのが好きになっちゃダメだって思ってた。

 その子は優しくて人気者で、俺なんかが好きになったら迷惑だって。

 だから“自分の気持ちを持つのが罪”だって思い込んでた」


戦闘の音は聞こえるのに、

俺達の会話だけが鮮明に響く。


「告白できなくて、何も言えなくて、

 “俺は幸せになっちゃいけない”って思いこんだまま――

 初恋を終わらせた」


震えた。


喉も痛い。胸も痛い。

だけどやっと言えた。


ローゼリアが呟く。

「だから……誰かの幸せを優先しようとしていたんですね」


アルティナが拳を握り締める。

「いつまで独りで傷ついてきたのよ……!」


ルナの瞳が濡れたまま笑う。

「初恋を失うのと同時に……“自分の幸せ”を捨てちゃったんだね」


リュミエラ姫は手を重ねて言う。


「では――“二度目の恋”は救わせてください」


姫の瞳が涙に震え、でも強く光った。


「あなたは幸せになっていい。

 恋していい。

 愛されていい。

 愛していいんです」


敵が最後の突撃を試みた。


だが姫は踊りを止めず――囁いた。


「《王命――恋の守護ガーディアン・オブ・ロマンス》」


光が爆発した。


ローゼリアの結界、

アルティナの戦闘、

ルナの未来視、

姫の王命魔法。


四つの恋が同期し――


影の暗殺者本隊は秒殺で消えた。


演奏は最後まで続き、

曲が終わった瞬間――観客席は歓声に包まれた。


誰も、戦いがあったことを知らない。


ただ――


最高の舞踏ショーが成功した。

 恋の奇跡が起きた。


そんな空気だけが残った。


姫は俺に寄り添って小さく囁いた。


「ブランデー。

 あなたの“初恋”は終わってしまった。

 なら――次は幸せにしましょう」


ローゼリア

「あなたの恋は“痛み”で終わらせない」


アルティナ

「“強さ”で奪うんじゃない。“幸せ”で奪いにいく」


ルナ

「未来は変わった。

 “ブランデーが幸せになる未来”が見える」


四人は戦いの勝利よりも、

願いの優勝よりも――

ブランデーの心が救われたことを喜んだ。


涙を流したのは――俺だった。



ゼロが静かに呟く。


(これで――条件が揃いました)


(“勇者の幸福が世界を救う”システムが発動する準備が整った)


(学園祭・最終日。

 “願いを叶える権利”を得るのは誰か)


(その時――世界の形が決まります)


気づけば、三日目になっていた。

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