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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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42/53

「影は愛を狙う――暗殺襲来。そして初めて漏れた“勇者の弱音”」

学園祭2日目。


昨日の盛り上がりはそのままに――

出し物のクオリティも競争心も、さらに熱を帯びている。


だが今日の空気は違った。


熱、興奮、期待。

その裏に――“冷たい視線”が混ざっている。


ゼロが低い声で告げる。


(マスター、本日から本格的に“敵が学園内へ侵入”しています)


(合計8名。全員、勇者狩りと同じ“対勇者スキル保持者”)


(狙いは――あなたの命)


胸が重くなる。


そんな状況でも、学園祭の時間は動き続ける。

ヒロイン四人は“可能性”を勝ち取るために闘っている。


俺が不安そうにしたら、誰かの努力を曇らせてしまう。


戦いながら、守られながら、想われながら――

俺は進むしかない。



【午前:ローゼリアの変化】


喫茶フロアに行くと、今日のローゼリアは昨日以上の活気だった。


失恋、片想い、夫婦問題、嫉妬、依存、自己嫌悪、家庭問題――

相談内容は重いものばかり。


だがローゼリアは逃げず、否定せず、肯定だけでもなく。


優しく、残酷なくらい現実的に、

その人が前に進める“答え”を与えていた。


相談者の女の子が泣きながら言う。


「怖いの……嫌われたら、生きてる意味がなくなる……」


ローゼリアは少女の手をそっと握り、

まるで自分に言い聞かせるように微笑んだ。


「“愛されないから価値がない”なんてことはありません。

 誰かに依存しないと生きられないほど弱い自分を認めて――

 その上で、誰かを愛していいんです」


少女は泣きながら抱きついた。


ローゼリアは微笑みながら、でも目が少し震えていた。


俺を見るなり、ホッとしたように微笑む。


「ブランデー様……わたし、ちゃんと人の役に立ててますか?」


「もちろん。

 ローゼリアは本当に強くなってる」


そう言うと――

彼女は一瞬だけ、涙が出そうなほど嬉しそうな顔をした。


だがすぐ、周囲の客の方を向き、優しい受付スマイルに切り替える。


“弱音を一番言いたい相手にだけは言わない”。


ローゼリアは、そういう強さを選んだ。



【午前後半:アルティナの異変】


闘技場へ向かう途中――

観客席に座るアルティナを見つけた。


鎧を脱ぎ、剣も持たず、ただ静かに観客席の端に座っている。


「……どうしたんだ?」


アルティナは答えず、少し視線を落とす。


「昨日の勝利が……嬉しかった。

 でも同時に気づいてしまったのよ」


「気づいた?」


アルティナの瞳の奥に――不安。


「私は“勝てるから選ばれる”と思ってた。

 でもブランデーは、勝てるから好きなんじゃない。

 強いから好きなんじゃない。

 優しいから好きなんじゃない」


「……」


「じゃあ――私は何で“選ばれたい”んだろう?」


自分の中の矛盾と向き合っていた。


俺は隣に座り、言葉を絞り出す。


「アルティナが、自分で気づきたい答えなんだろう。

 俺が決めるんじゃなくて」


アルティナは――少し震えながら笑った。


「……やっぱり好きよ。

 その言い方、ずるい。

 私の心を導くのに、絶対縛り付けない」


そして立ち上がる。


「……答え、探してくる」


それは涙ではなく、決意だった。



【昼:リュミエラ姫の異変】


舞踏ショーの準備エリアへ行く。


だが今日は姫は稽古も衣装も中断していた。


王城の使者が来ている。


「“帰還命令”だと……?」


リュミエラの父――国王からの正式な召喚。


使者は冷たく告げる。


「第三王女。

 恋愛行為は国家の利益を損ないます。即刻帰還を」


姫の肩が震える。

しかし一歩も下がらず、堂々と言い放った。


「いいえ。

 わたくしは“政治の道具”として生まれましたが、

 “恋をする権利がない”とは言われていません」


使者は顔色を変え、声を荒げた。


「許されると思うな!!これは国命――!」


リュミエラは遮る。


「これは、わたくしの人生です」


静かだが、絶対に折れない声。


使者は怒りと動揺のまま退けられた。


俺が近づくと――

姫は大きく息を吐いて微笑んだ。


「……怖かったです。

 でも諦める方がもっと、怖かった」


姫は震える手を、俺の手の上に重ねた。


「ブランデー。

 あなたのおかげで、人生を生きてみたいと思えた。

 それだけでも――恋をした意味があります」


その瞳は泣き出しそうに潤んで、でも涙はこぼさなかった。


そして小さく囁く。


「……今日のショー、必ず見てください」


願いではなく“お願い”。


大切すぎる約束になった。



【午後:ルナの異変】


未来予知カジノは昨日以上の混雑。

しかしルナは客を相手にしながら、何度も俺の方を見ていた。


落ち着かない表情。

焦り。苛立ち。痛み。


客を丁寧に捌き終えた後、

ルナは俺の腕をつかみ、外へ連れ出した。


「……未来が変わってる」


ただ一言。


「今までずっと“ブランデーと結婚する未来”は確定してた。

 でも昨日から――“確定じゃなくなった”」


声が震える。


「負けたくない。

 でも、負ける未来が初めて見えた」


嫉妬でも絶望でもなく――恐怖。


「未来視ってね、すごく残酷なんだよ?

 幸せな未来が見えなくなるたびに、心が壊れそうになる」


俺はルナの手を握る。


「未来が変わるのは、今が本気だからだ」


ルナは涙をこらえた声で笑う。


「ねぇブランデー。

 私も“幸せになっていい”?」


その問いは、胸を刺した。


俺と同じ疑問を――ルナも抱えていた。


“誰かを傷つけるくらいなら幸せになっちゃいけない”


そんな呪いに縛られていた。


俺は答えた。


「幸せになれ。

 誰が何と言おうと、俺がそう望む」


ルナは一瞬で涙がこぼれそうになり、慌てて顔をそらした。


「……ずるいよ。

 そんな言い方、泣くに決まってるじゃん……」



【しかしその直後】


ゼロが警告を叫ぶ。


(敵襲――!!)


校庭上空。

黒い霧の塊が形を取り――


“影の暗殺者”が無詠唱で襲撃。


四人のヒロインが瞬時に動く――はずだった。


しかし暗殺者の狙いは違った。


四人じゃない。

 ――俺でもない。


暗殺者は観客席の無関係な生徒へ向けて呪いを投げた。


『勇者の幸せを壊す最速手段――

 “周囲の大切な人間を殺す”!!!』


最も卑怯で、最も戦略的。


俺は一瞬の迷いもなく叫んだ。


「――ゼロ!!」


(了解)


身体が光に包まれ、意識が爆発した。


恋心共鳴エンゲージ・シンク

四人の感情が力として注がれる。


視界が白く輝いた――

そして俺は呪いすら超えた速度で観客席に飛び込む。


触れた瞬間――呪いは無効化される。


その反動で膝が崩れた。


ゼロが焦る。


(マスター!?補助魔力が追いつきません!!)


視界が揺れる。

胸が締め付けられる。

呼吸が苦しい。


そんな俺を見て――


ローゼリアが叫ぶ。

「守ってばかりじゃダメです!!」


アルティナが怒鳴る。

「自分を犠牲にして幸せを守ろうとするな!!」


姫が泣きそうな声で叫ぶ。

「あなたを失うくらいなら恋などいりませんわ!!」


ルナが震えながら叫ぶ。

「お願いだから!!“自分も幸せになっていい”って言って!!!」


四人の声が胸に突き刺さる。


――そして。


俺は、生まれて初めて“弱音”が漏れた。


「怖いんだよ……!」


全員が静まる。


俺は拳を握りしめ、歯を食いしばりながら告白した。


「誰かを守れなくなるのが怖い。

 誰かを悲しませるのが怖い。

 選んだら誰かを傷つけるのが怖い。

 俺が幸せになったら、誰かが泣くんじゃないかって――

 ずっと怖かった!!」


胸が焼けるほど苦しい。


「だから、自分の幸せを願っちゃいけないって……

 勝手に思ってたんだ……!」


四人は――泣きながら笑った。


ローゼリア

「それでいいんです。弱くていいんです」


アルティナ

「やっと言ったじゃない……!」


リュミエラ

「弱さを見せられる相手に出会えたなら、それは運命ですわ」


ルナ

「もう一度言って。

 “俺も幸せになっていい”って」


俺は震えながら言った。


「――俺も幸せになりたい」


四人は同時に抱き締めた。


「じゃあ幸せにするわ」

「一生守るわ」

「愛してみせますわ」

「勝ち取ってみせるよ」


涙、笑顔、震えた声。

それでも全員、強かった。


そして同時に宣言する。


「ブランデー。

 ――“初デート権”は必ず勝ち取る」


愛は、涙では終わらない。


愛し合うために戦う。

 幸せになるために戦う。

 そして――命を守るために戦う。



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