「開幕・学園祭 ―― 恋と戦いと陰謀の火蓋」
学園最大イベント――《学園祭》。
校門をくぐった瞬間、
普段の学校とは別物の熱気が肌を刺す。
屋台、旗、装飾、演奏、歓声、宣伝合戦。
だが、その中心にいるのは――やはり俺だ。
「ブランデーくん!写真撮っていい!?」
「裏方手伝ってくれ!女の人呼べるだろ!」
「四人のヒロイン、誰推し?!」
やかましい。
いつもどおり平和じゃない。
だが今日は逃げられない日だ。
《優勝者の願い=ブランデーと一日デート権》
恋と努力とプライドの戦い。
ヒロイン四人の本気がぶつかる“決戦の祭典”。
ゼロは耳元(脳内)で実況を始めた。
(マスター、今日の予定管理)
・1限目:ローゼリアの《恋愛相談喫茶》視察
・2限目:アルティナの《武闘大会》観戦
・昼休み:姫の《舞踏ショー》準備へ
・午後:ルナの《未来予知カジノ》へ
(そして――敵の暗殺予兆、学園全域に散在)
忙しすぎるわ。
だがヒロイン達の努力を見届けない選択肢はない。
行くぞ。
◇
【1限目:ローゼリアの《恋愛相談喫茶》】
教室を改装した喫茶店。
淡いピンクと白を基調とした装飾、
いい香りのハーブティー、穏やかなピアノ。
そのど真ん中でローゼリアは
穏やかな微笑みを浮かべ、恋愛相談に乗っていた。
「彼に振り向いてもらうには、どうしたら……?」
「告白は恥ずかしい。嫌われたら怖い……」
生徒達が打ち明けるのは、
弱いところ、情けないところ、誰にも見せたくない心。
ローゼリアは優しく、でも綺麗事じゃなく答える。
「好きになった時点で、あなたはもう“強い”のです。
だって、傷つく覚悟をしているのだから」
泣き笑いする相談者。
温かい空気。
ローゼリアの“癒し”の力が会場全体を包んでいた。
俺は胸が熱くなる。
(誰にも必要とされなければ壊れてしまう――)
そう言っていたローゼリアが、
今は“誰かの心を支えている”。
その強さが――眩しい。
終了後、ローゼリアは俺の前に来て恥ずかしそうに微笑んだ。
「見てくれて……嬉しかったです。
わたし、あなたに“選ばれるだけの女”じゃなくて、
“自分の力で人を幸せにできる女”でいたかった」
「十分すぎるほどそうなってる。誇っていい」
ローゼリアの瞳が少し潤み――
でも泣くのをこらえて笑った。
「次も……楽しみにしてます」
去っていく背筋が、誰より美しかった。
◇
【2限目:アルティナの《武闘大会》】
体育館――いや、闘技場と呼ぶべき会場。
観客席は満員、熱気は爆発寸前。
中央のリングに、黒剣を握るアルティナが立つ。
アナウンスが響く。
《出場者数102名!誰が頂点を掴むのか!!》
だが大会はすぐ異様な方向に進んだ。
対戦カード発表時――
挑戦者全員がアルティナを指名。
司会「えっ!?全員!?理由は……?」
男「アイツ倒したらブランデーに惚れられるって噂だ!!」
観客「勝ったら告白いける!!」「異世界の女王落とす!!」
会場の熱気が“恋の暴走”に変わっていた。
アルティナは溜息をつき、剣を肩に乗せて言い放つ。
「悪いけど――ブランデーは私が守るの」
試合開始。
1戦目――瞬殺。
2戦目――瞬殺。
3戦目――言葉通りの“壁”。
そして決勝――因縁の相手が現れた。
銀髪、片目の眼帯、黒い大剣。
「久しいな、アルティナ。
“殺人兵器アルティナ”と呼ばれた頃のままか?」
会場が凍る。
アルティナの過去――コードネーム。
世間が恐れていた名前。
だがアルティナは震えない。
怒りでも罪悪感でもなく、静かな誇りだけを宿していた。
「私はもう兵器じゃない。
守りたい人がいる。
愛されたいって、本気で思えるようになった」
敵が嘲笑する。
「愛で強くなれるとでも――」
「なれるわ」
アルティナは踏み込み、黒剣を掲げる。
「《黒穿・破天星》!!!」
黒い斬光が闘技場ごと裂き、
相手は武器ごと粉砕され、崩れ落ちた。
勝利。
観客も挑戦者も、誰も逆らえない。
アルティナは俺にだけ笑みを向けた。
「見た?
私は愛で変われたって、証明できた」
俺は迷わず答える。
「誰より強く、誰より優しいよ」
アルティナの瞳が震えた。
だが泣かない。泣くほど弱くない。
「次に行きなさい。
でも忘れないで――
勝ちに来てるのは私」
その言葉は宣戦布告なのに、甘い。
◇
【昼:リュミエラ姫の《舞踏ショー》】
野外ステージ。
観客は圧倒的。
周囲には護衛と貴族がずらり。
音楽が鳴り――姫が登場。
完全に“王族”の華。
美しさも気品も舞も完璧。
それだけなら“王女のショー”だった。
だがここから――違う。
演目のクライマックスで姫は
観客席に立つ俺をまっすぐ指差した。
風も光も音も消えるほどの存在感で――宣言。
「ブランデー。
わたくしはあなたを愛しています」
どよめき。
叫び。
驚愕。
姫は続ける。
「王族としてではなく、
一人の女性として。
愛し、愛されたいと願っています」
その瞬間――姫は涙を流した。
悲しみではなく、
“自由を掴んだ涙”。
「あなたが誰を選んでも構いません。
でも――わたくしはあなたを選び続けます」
観客は息を飲むしかなかった。
俺は胸に手を当て、小さく深く頷いた。
「ありがとう。
その想い、俺の人生全部をかけて大事にする」
姫は世界一嬉しそうに笑った。
「では――勝ちに行きますわ」
◇
【午後:ルナの《未来予知カジノ》】
カジノ会場。
ルナはカウンターに座り、
客の未来を“1回100コイン”で予知し、賭けに利用させる。
儲かりすぎて地面が揺れている。
客「ルナ様、次のレース頼む!!」
学生「負ける未来を勝ちに変えられた!!」
教師「株価まで読めるなんて反則だろ……!」
だがルナは平然。
「未来って変えられるんだよ。
“幸せに向かって動く人”の未来はね」
そして俺を見つけて微笑んだ。
「ブランデーの未来も──変わり始めてるよ」
「どう変わる?」
ルナは指を一本立てる。
「“自分の幸せも選べるようになる未来”」
胸が軽くなるのを感じた。
ルナはカウンター越しに俺の手を取る。
「ブランデー。
戦ってるのは私達だけじゃない。
あなたも“自分の幸せ”と戦ってる」
声は強くて、でも抱きしめたくなるほど優しい。
「だから、学園祭が終わるまでに決めて。
“自分は幸せになっていい存在なのか”って」
俺はゆっくり頷いた。
「決める。逃げない」
ルナは嬉しそうに笑う。
「なら、私は――勝つ」
◇
【しかし、その裏で】
暗がり。
黒い影が校舎の屋根にまとわりつく。
『勇者を甘やかすな。
“恋の幸福”は世界崩壊だ』
『次の機会で殺す。
学園祭2日目の夜――“告白の時間”を狙う』
『勇者の命を奪い、世界を救う』
敵は確実に動いていた。
◇
そして放課後。
四人は偶然か必然か――
昨日と同じガゼボに集まった。
ローゼリア「一日目は順調ですね」
アルティナ「勝つのは私よ」
リュミエラ「負けませんわ」
ルナ「明日が本番」
四人は互いを認めつつ、尊敬しつつ、
同時に“絶対に引かない”。
俺は深呼吸して宣言する。
「明日……俺は戦う。
“自分の幸せ”から絶対に逃げない」
四人は微笑んだ。
恋の戦争は、世界の運命戦へと繋がる。
学園祭――残り2日。
恋、戦い、暗殺、運命、そして涙。
全てが交差する。




