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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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31/53

「学園祭開幕! 舞台の上で“選ばされる”運命と、予想外の乱入者」

学園祭当日――

王立アルクス学園は朝から異常な熱気に包まれていた。


一般来場者、冒険者、貴族、王族、果ては隣国からの観光客まで集まっている。

広場には巨大なステージ。

観客席には2000を超える人々。

そのざわめきの中心に、名前が飛び交っていた。


「今年の主役は勇者ブランデーらしい!」

「聖女ローゼリアと氷の姫アルティナの三角関係!」

「告白シーンが本番で“本気”になるって噂!!」

「最後のカップル喫茶での指輪イベントがあるらしいぞ!」


いやそんなイベント知らんぞ!!!

だれだデマ流したの!??


ゼロの冷静分析が飛んでくる。


(マスター、観客の期待は“劇中で誰を選ぶのか”です)

(選ばない前提で演技できないのか?)

(観客の99%が「選択シーン」があると確信しています)

(存在しないシーンを期待されてるの!?)


地獄スタートである。



舞台裏。

本番開始10分前。


衣装に着替えた俺は、勇者の鎧と剣を携えた姿になっていた。

ローゼリアは純白の聖女ドレス。

アルティナは蒼の魔装ドレス。

どちらも息を呑むほど美しい。


しかし空気は張り詰めている。


アルティナは腕を組み、ローゼリアを一瞥。


「戦う気で来たのかしら?“演技”の話よ」


ローゼリアは一歩も引かず微笑む。


「演技も、気持ちも、全部ぜんぶ本気です。

 本気じゃない人に、ブランデー様の隣は似合いませんから」


火花。

空気が焦げるほどの緊張。


俺は慌てて制止に入ろうとするが――

そこでレイラ副団長が静かに言った。


「大丈夫。どちらも戦うのは“舞台”の上だ。

 結末がどうなっても、勝者は泣かない。

 敗者は泣いても最後まで立っている。

 それがヒロインだ」


言葉は厳しいが、信頼が含まれている。

さすが女騎士。覚悟の世界を知っている。


そしてイルミナ先生が続けた。


「ブランデー様。

 今日あなたは“選びません”。

 あなたは“嘘をつかずに最後まで演じる”だけです」


「嘘をつかずに……?」


「はい。

 “誰より大事だ”じゃなく――

 “あなたが大事だ”と言うのです。

 それが最大の誠実さです」


……正直、怖くてたまらない。

でも逃げたくない。


俺は深呼吸して剣を握る。


「よし……全力でやる」


アルティナとローゼリアも頷く。


そして――幕が上がった。



第一幕:冒険の旅

観客から歓声が上がる。


「本物の勇者だ!」

「戦闘演出すごすぎる!」


迷宮シーンの戦闘演出も完璧。

俺が本気を隠して“勇者の苦戦”を演じれば演じるほど、

ローゼリアは必死に癒やし、

アルティナは身体を張って支える。


演技なのに本気。

本気だから演技に見えない。



第二幕:崖の上の休息


アルティナが背中を預けて剣を磨きながら呟く。


「……私は弱くてもいいの?」


俺の台詞は台本どおり。


「弱くていい。強くてもいい。

 お前は――そのままでいい」


たったそれだけで、観客席は静寂に包まれた。



第三幕:聖女の祈り


ローゼリアが震える手で俺に触れる。


「あなたの未来に、私がいたら……だめですか?」


俺は台本どおり答える。


「だめじゃない。

 いてほしい。

 お前が隣にいると、俺は前に進める」


また観客席が泣き出す。


演技なのに、演技じゃない。

想いが、全部声に乗ってしまう。



そして――


クライマックス:最終告白シーン。


ステージ中央、夜の演出。

風が吹き、照明が淡く揺れる。


ローゼリアが涙の声で叫ぶ。


「私はブランデー様を愛しています!

 世界の誰よりも、未来のどんな幸せよりも――

 あなたが欲しい!」


観客席「うわぁぁぁぁ!!!!」


続けてアルティナが剣を投げ捨て、感情を爆発させる。


「私もよ!

 あなたを誰にも渡さない!

 奪われても奪い返す!

 だから――私を見て!!!」


観客席「ぎゃあああああ!!!!」


両側から手を伸ばされ、

俺は選ばされる立場になってしまう。


演出を超えて、空気が“ガチ”になった瞬間。


観客全員が固唾を飲む。


ローゼリアとアルティナの瞳は震えていた。


泣きたくなるほどの本気。


逃げない。

誰も傷つけない。

嘘をつかない。


胸から言葉が溢れた。


「俺は――一人じゃ生きられない。

 支えてくれた人、信じてくれた人――

 その全部があったから、今の俺がいる」


会場が静まる。


「誰か一人を選ぶなんて、できない。

 俺の強さは、誰かに愛されることで生まれたものじゃない。

 “俺が愛したい人たちがいることで生まれたものなんだ”」


観客の涙腺決壊。


「俺は、俺の隣にいてくれる人を――全部守る。

 どんな未来でも、二度と誰も失わない。

 それが俺の選んだ道だ!」


ローゼリアも、アルティナも、泣きながら笑った。


「っ……ずるい……」

「うん……ずるいですよ……」


二人は俺の両手を取る。

三人で、前を向く。


舞台が光に包まれ――


――大成功。


歓声は悲鳴に変わり、

拍手は地響きとなり、

ペンライトが振られ、

花束が投げ込まれ――


劇は終わるはずだった。


だが事件はここから始まる。



閉幕の音楽が鳴り、俺たちが観客へ一礼する――その時。


会場の結界が“破れた音”が響いた。


バキンッ!!


ステージ後方に、異常な魔力が渦巻く黒い裂け目が出現。


観客が悲鳴を上げる。


「な、なんだ!?」「魔物!?」「幻術じゃない!!」


裂け目の中から――

黒い鎧の男が現れた。


顔は見えず、身体から異常な殺意。


その男はゆっくりと大剣を抜きながら、

俺を真っすぐ指さした。


『――見つけたぞ、“絶対神”』


世界が凍りついた。


ローゼリアもアルティナも愕然とした表情を浮かべる。


観客は俺の正体を知らない。

でも本能的に気づく。


――舞台じゃない。

――これは現実だ。


黒鎧の男は言う。


『ブランデー……いや、“金宮悠人”。

 討つ。

 お前こそ世界の災厄。』


アルティナが剣を拾い上げ、俺の前に立つ。


「ふざけないで。

 ここは舞台じゃない。

 お前は一人でも触れさせない!」


ローゼリアも魔力を展開しながら叫ぶ。


「ブランデー様に指一本触れさせません!!」


観客がパニック、教師陣が結界展開、

レイラ副団長が斬撃体勢、

イルミナが冷酷な目で殺意MAX――


世界が修羅の舞台に変わっていく。


俺は大剣を握る黒鎧の男と視線を合わせた。


心臓が高鳴る。


怖くない。


むしろ――怒りが湧く。


この世界で得た幸せを奪おうとする者。


この世界で俺を必要としてくれる仲間を傷つけようとする者。


この世界で、大切な想いを踏みにじろうとする者。


許せるわけがない。


俺は一歩前へ出た。


「上等だよ。

 俺の仲間に手を出すなら――

 絶対に後悔させてやる」


観客2000人が見つめる中で、

俺と黒鎧の男の殺意がぶつかり合う。


舞台は終わり。

 ここからは“本物の戦い”だ。


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