「コスチューム採寸イベント!? 俺の理性ゲージ残量ゼロです」
学園祭まであと3日。
特待生クラスにて準備会議が行われていた。
出し物は――
英雄劇 × カップル喫茶ハイブリッドステージ
勇者役:俺
ヒロイン役:アルティナ&ローゼリア
最終シーンはカップル喫茶で観客と交流
とんでもない構成なのに、なぜか教師陣も満場一致でOKしたらしい。
もはや学園全体が視聴者の空気。
制作会議は順調だったが、重大な工程が残っていた。
イルミナ先生が黒板に書き出す。
《本日:衣装のサイズ採寸》
教室が揺れるほどのざわめき。
「やったぁぁぁ!!」
「コスチューム採寸とか絶対イベント発生するやつ!!」
「男子も女子も殺意と嫉妬で死ぬやつ!!」
なぜ分かって叫ぶのか。
ここの生徒は全員メタ視点があるのか。
イルミナが説明していく。
「衣装担当は服飾学科の生徒たちですが、
特待生クラスの採寸は“クラス内で行う”ことになりました♪」
“クラス内で”ってつまり――
見られる、争う、事故る、修羅場る
未来しか見えない。
そして最も重要な案内。
「採寸はペアを組む相手が行います」
クラス中が爆発した。
「ヒロインが勇者のサイズ測るじゃん!!!」
「物理的接触イベント!!!」
「リアル距離ゼロじゃん!!!!!」
「観戦禁止とか地獄じゃねぇか!!」
男子も女子も半狂乱。
(マスター、生存率0.02%です)
(その数値やめろ)
◇
採寸会場――体育館の一角。
壁際には仕切りカーテン。
メジャー、型紙、布、生地、針道具セット。
採寸台の中央に俺。
両側にヒロイン二人。
右:ローゼリア(明らかに緊張MAX)
左:アルティナ(無表情だが耳が赤い)
周囲には見守るクラスメイト達(魔力で防音&防暴走の結界準備中)。
レイラ副団長は剣に手を添えて「暴走があった場合は制圧」の構え。
イルミナ先生は笑顔で「何かあれば即座に止めます」の目。
俺、処刑されるのかな。
◇
「では……採寸、始めます」
ローゼリアが胸に手を当て、緊張で震えながら近づく。
「ご、ごめんなさい……失礼します……!」
そっと肩にメモリを当てながら、指が微かに触れてくる。
柔らかい。
体温が伝わる。
ローゼリアは顔真っ赤で、息が浅く、
触れるたびびくっと震えて、ひたすら全力で慎重。
「ブランデー様……本当に、立派に……なられて……」
言ってる本人が爆発寸前。
次にアルティナが胸囲を測る。
無表情のまま、落ち着いた声。
「……呼吸を楽にして」
距離が近い。
腕が回されて、抱きしめられてる形。
ローゼリアがひゃっと声を上げる横で、
アルティナは静かに測りながら耳まで赤い。
「……この距離、嫌じゃない?」
「い、いや嫌じゃないけど……」
「ならいい」
短い言葉なのに破壊力すごい。
次はウエスト。
腰にメジャー。
二人が左右から同時に手を添えてくる。
ローゼリアの指先は震えてて、
アルティナの手はしっかりしてて冷たい。
違う性質なのに両方魅力的。
そして次――脚の採寸。
俺は理解した。
ここが限界ライン。
ローゼリアが恐る恐るしゃがみ込み、
太ももあたりに触れた瞬間。
「ごめんなさいっ!!!わ、私もう心臓がっ、破裂しそうでっ……!」
涙目で本気で震えだした。
純情すぎて逆に心臓に悪い。
次にアルティナが静かに膝をついて測る。
「逃げるな。ちゃんと立ってて」
と低く言ったけど、
手が震えてる。
無表情でも限界なのが丸わかり。
「……アンタがこんなふうに動揺させるなんて……ずるい……」
かすれた声で言うのやめてくれ、刺さる。
そして最後――肩幅と仕上げの採寸。
二人が左右から身体を寄せ、
肩にくっつく形になった。
息がかかる距離。
心臓の鼓動が伝わる距離。
空気が完全に止まる。
◇
その瞬間――体育館の壁が振動するほどの轟音。
「うおおおおおぉぉぉ!!!!」
「もう見てらんねぇぇぇ!!!」
「世界滅ぶってこれ!!!」
「尊すぎてしんどい!!!!」
外野の歓声と悲鳴が爆発し、
レイラ副団長は制圧モードに入り、
イルミナは優雅なため息で結界維持。
まるで戦争の現場。
採寸終盤、アルティナは小さく囁いた。
「……ねえ。次の迷宮試験も絶対私と組むのよ」
ローゼリアも息を吸い――
「わ、私だってっ……次は譲りませんから……!!」
二人の視線が交錯し、火花が散る。
俺は震える声で言う。
「と、とりあえず衣装完成させよう……!?」
「もちろんです」
「当然です」
二人の声がぴったり重なる。
完全にバチバチのままだけど
“共通の目標だけは一致” しているのが怖い。
◇
採寸後。
衣装担当メモに“ふたりの字で”俺の寸法が記録されていた。
字が違うのに、並ぶと不思議と調和してる。
喧嘩しているのに息は合っている。
なんか――すごく良いチームだ。
(マスター、恋愛フラグの進展:本日+8本増加)
(死ぬだろそれ)
◇
その日の夜。
男子寮の窓の外――
女子と男子、そして保護者&教師すら学園祭の完成予想を賭けて騒いでいる。
「勇者 × 聖女 × 氷姫の三角劇ヤバいらしいぞ!」
「劇のクライマックスでカップル喫茶になるとか反則!」
「スケジュール整理係の教師に人気投票依頼殺到らしいぞ!」
なんか学園祭が戦争イベントになっている。
ゼロが呆れ声で言ってくる。
(マスター、丸裸の採寸イベントをフラグ無しで終えたのは奇跡です)
(普通はどんな展開になってたんだよ)
(衣装担当が暴走事件 → ヒロイン救援フラグ → 告白ルート → サブヒロイン乱入ルート → 総戦争 → 寮が燃える)
(寮燃えるの!?)
この学園マジで殺意レベルの恋愛校。
俺は枕に顔を埋めて叫ぶ。
「平和に学園祭やりたいだけなんだあああぁぁ!!!」
しかし返ってくるのはゼロの冷酷な分析。
(平和という願いそのものが最大のフラグです)
もう泣きたい。
それでも――
衣装採寸中の“ふたりの表情”を思い出すと胸が熱くなった。
恋が怖いけど、嬉しくて、温かくて、なんか心が満たされていく。
異世界生活って……むずいけど、悪くない。
いや、最高だ。




