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神々からの恩恵  作者: 暁 龍弥
また、異世界?!

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26/53

「放課後イベント開始! デート権争奪戦の行方は…?」

昼休み。

午前授業が終わった瞬間、特待生クラスの空気は“平和”から“殴り合い前提の静寂”に変わった。


教室の中心に座っている俺を囲む三方向――


右:ローゼリア(抱きつき予備軍)

左:アルティナ(氷属性の視線レーザー)

後方:他多数の女生徒(婚活戦士モード)


教師席にはイルミナ(静かに殺気を漂わせて状況監視)

入り口付近にはレイラ副団長(護衛体制+剣の柄に手)


もはや俺の周囲だけ物理結界みたいな空間になってる。


そしてチャイムが鳴る。


キーンコーンカーンコーン


先生が告げる。


「午後の授業はありません。自由時間ですが――

 “貴族区・学園区・商業区・闘技区・庭園区・食堂区”へ自由行動となります♪」


自由時間という名のデートイベント時限解放。

全員の目が変わる。

女子のみならず男子も“派閥探し”で殺気モード。


そう、言い換えるなら――


放課後レイドバトルの始まり


まず動いたのはローゼリア。


「ぶ、ブランデー様! その、よかったら一緒に学園食堂で……! 一緒にランチを……しませんかっ!」


純粋に誘うタイプ。殺意ゼロ。可愛い。


その瞬間、アルティナが机を立つ。


「ランチは後。図書館区で魔法資料の整理をする。あなたも来るのよ」


誘ってるのか命令なのか分からんが、視線が真剣。


空気がピキッと割れる。


「ぶ、ブランデー様はお昼に困ってると思いました!!」

「あなた勝手に決めつけないで」


雷が走りそうな視線の交錯。


そして――

第三の影が会話へ滑り込む。


レイラ副団長

「ふむ、学園区の鍛錬場を見学しに行くのはどうだ? 危険も少なく、安全だ」


そして最後に――


イルミナがゆっくり立ち上がった。


「放課後最初の時間は、私と職員室で過ごすのがベストですよ?

 “安全”で、誰にも邪魔されませんから……ね? 坊ちゃま?」


笑顔のまま背後で黒い翼が生えてる幻覚すら見えた。


俺は理解した。


──このまま選んだら確実に死ぬ。


(マスター、逃げる案は?)

(逃げた瞬間、一番怒らせるやつだろ)

(正解です)


(マスター、誤魔化す案は?)

(100%バレるだろ)

(正解です)


(マスター、MOST SAFE ルート:全員を満足させる)

(どうやって?!)

(“放課後はスケジュール制です”と宣言すればOK)


神AIかお前は。


俺は立ち上がり、宣言した。


「放課後は――

 時間で区切って、全員と回る!!」


一瞬、静寂。


次の一瞬。


「順番制!?」「公平!?」「公平だ!!」「それなら戦争じゃない!!」「天才か!?」「救世主か!?」「間接的ハーレム宣言!?」


クラス全員の反応が爆発した。


俺は勢いのまま続けた。


「順番は“今日指名してくれた順”で回る!

 ローゼリア → アルティナ → レイラ → ……他の子 → ……イルミナ先生(希望があれば)!」


イルミナがすっと手を挙げる。


「希望、あります♪」


笑顔が怖い!!

いやいちおう参加希望者だな!!

怖いけど!!



こうして、本日のデート(?)スケジュール決定。


【放課後イベント 〜本日の予定〜】

① ローゼリア :食堂ランチ

② アルティナ :図書館区・魔法資料

③ レイラ   :鍛錬場見学

④ 他女生徒枠 :希望者抽選

⑤ イルミナ  :職員室で“反省会(?)”


俺は冷や汗だくだが、周囲は大盛り上がり。


「公平すぎる!」「ジェントルマン!」「好感度爆上がり!」「もしかしてブランデー様って聖人?!」

……いや違う。

生き延びたいだけだ。


(マスター、恋愛フラグ管理ゲージが安定してきました)

(なんだそれ初耳だ)



そして、放課後イベント①スタート。


***《食堂区》***


食堂は広すぎてテーマパーク。

席数は数百。

料理は全部美味しそう。

魔法でできた自動システムがサラダ飛ばしてくる。


ローゼリアは緊張で硬直しながらトレーを運んでいる。


「こ、こんな大人数がいる場所でブランデー様とランチなんて……夢みたいですっ……!」


顔が真っ赤。

だが、ものすごく嬉しそう。


席につくと、ローゼリアは勇気を振り絞るように話した。


「その、私……もっとお話ししたいです。

 戦いだけじゃなくて、学園生活のこととか……」


「ああ、もちろん。俺も話したいよ」


ローゼリアの表情がふわっと明るくなる。


「じゃあ、あの……一番好きな色、教えてくださいっ!」


可愛い質問だな。


「青かな。空とか海とか好きだし」


するとローゼリアは、ぱっと胸元のロザリオを握った。


「わ、私の魔力色も“青”なんです! 同じ色……嬉しいですっ!」


偶然だけど嬉しいらしい。

こういうのに弱いのはわかる。


その瞬間――周囲の女子達が騒ぎそうになるのを、イルミナが外から射殺す視線で黙らせてくれてるのが見えた。


怖いけど助けられてるのが複雑。


食事もスムーズに進み、最後の一口。


ローゼリアは、そっと言った。


「ブランデー様……楽しかったです。

 また……食事、してくれますか?」


「もちろん。いつでも誘ってくれ」


ローゼリアの瞳がうるうると輝いた。


「うん……ありがとう……!」


胸が温かくなるくらい幸せそうな笑顔だった。



放課後イベント②


***《図書館区》***


静かな書庫、膨大な魔法書、ラミネートされた禁書。

本好きには天国……だが俺は読めない呪文多すぎ。


アルティナは棚から厚い魔導書を10冊ほど宙に浮かせて持ってくる。


「はい、これ。私のおすすめ」


「これ全部読むの?」


「全部“私が読ませたい本”よ」


照れてるの?

眼鏡外した司書プレイしてるの?


ふと、アルティナが俺の手をそっと掴む。


「……ここは音を立てたら退場処分。だから距離を近くして話すしかないの」


いやそんなルール初耳だけど?

距離近いのは嬉しいけど誤魔化してない?


「昨日の迷宮の続き。

 あなたの“当然だろ”って言葉……もう一度聞かせて」


「アルティナが隣にいるのは当然だろ」


言った瞬間、アルティナの手が震えた。


「……“隣”は……初めて……」


言葉の意味が分かって、胸がどきっとする。


そのまま黙って横に座ってくるアルティナ。


照れて言葉が出ないくせに

手だけは離してくれない。


図書館の静寂の中、

二人だけの距離が近いまま時間が過ぎていく。



放課後イベント③


***《鍛錬場》***


レイラ副団長は淡々としていた。


「護衛対象として冷静に見ていたが――君はやはり異常だ。

 腕前は天才の領域ではなく、神域だ。だが――」


レイラは木剣を構える。


「“隠す技量”を鍛えるべきだ」


強さを隠す訓練。

確かに一番必要かもしれない。


「俺に教えてくれるのか?」


「当然だ。あなたに死なれたら困る」


言葉は冷静で誠実。

だがどこか“執着”がある。


レイラは指先で俺の手を包み込み、木剣を握らせる。


「手加減の感覚、身体に覚えさせる。

 そっと、しかし確実に。

 力は守るために使うものだ」


レイラの手は暖かく、頼もしくて――

妙に安心する。


彼女の言うことには逆らう気が起きない。

言葉より行動で守るタイプの人だ。



放課後イベント④


希望者抽選枠。


女子たちが視線を送り、男子たちは距離を取る。

結果、見た目はクラス参観の暴動。


抽選で当たったのは、控えめそうな子。


「え、えっと……あ、あの……ただ、一緒に学園庭園を歩きたくて……」


攻撃性ゼロ。

ただ純粋に一緒に歩きたいだけの子。


庭園を歩きながら、

「すごく綺麗ですね……」「花が好きなんです……」

など可愛い会話だけで終わった。


最後、三つ編みの子は照れながら言った。


「その……今日の思い出、私は一生忘れません」


その瞬間、観客席(教室窓)から視線の嵐が飛んできた。

が、今日の俺は死ななかった。



そして最後――⑤


***《職員室》 イルミナの番 ***


職員室に入ると、イルミナがティーセットを用意していた。


笑顔は優しいのに瞳は獣。


「坊ちゃま、今日は“全部”無事でしたね。

 えらかったですよ」


褒められたのに身体が固まる。

何か怖い。


イルミナは紅茶を注ぎながら言った。


「坊ちゃまが誰を選んでもいいんです。

 でも――“泣かせないように”だけはしてください」


その声には怒りも独占欲もなく……

ただ本気の優しさだけがあった。


「坊ちゃまが幸せなら、私は嬉しいんです」


その言葉に俺はやっと息ができた気がした。


イルミナは表情を崩し、いつもの微笑みに戻る。


「さあ坊ちゃま、明日も大変です。

 本気で幸せになれるように、全力でサポートします♪」


うん、やっぱり怖いけど、味方だ。



屋敷へ帰る馬車の中。


今日の出来事を振り返り――

頭が痛いのに胸が温かい。

俺は小さく呟いた。


「……異世界生活って、忙しいな」


(マスター、“楽しい”って言いたかったんですね)

(うるさい黙れ)


視界の外でイルミナが静かに笑っていた。


修羅場も恋愛も成長も全部混ざった一日。

だけど俺は生き残った。


そして――

明日、また新しいイベントが待っている。


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